寄稿 今日のダイオキシン問題:沖縄の枯れ葉剤・サッカー場問題から

寄稿紹介

 川尻 要氏 (埼玉県立がんセンター・臨床腫瘍研究所・客員研究員) の寄稿レポート「今日のダイオキシン問題:沖縄の枯れ葉剤・サッカー場問題から」を掲載する。

 川尻氏は、筆者が共同代表を務めていた沖縄・生物多様性市民ネットワークのノレッジカフェ 「沖縄市サッカー場から考える:未来世代への責任を果たすために」(2015年11月7日)の講師として来沖した際、高濃度のダイオキシンが検出されたサッカー場を見学し、その空間を「青空の下の異常さ」と驚きをもって描写した(下記に貼り付けた沖縄タイムスの論壇参照)。私たちは、その風景に半ば慣れきっていたことを、ダイオキシンを扱う科学者から知ったのであった。 

 このレポートは、ダイオキシンの基礎研究から見出された新しい知見が提示されている。その知見は、私たちが持つ、これまでのダイオキシンによる疾患の限られたイメージ(がん、先天性障害)を覆すものである。これは、ダイオキシンの問題は研究の世界でも、終わったものではないということを意味しているだけではなく、新しい知見が、私たちの社会的行動の方向性を変えていくものであることを示している。それは、「影響は少ない」という常套句で問題を矮小化する行政へ、いかなる反論ができうるかという可能性を示すものとなるはずである。専門用語が並ぶ部分は、難しく感じるかもしれないが、科学的知見を持つ専門家と、それを活かす市民の関係を考える上でも示唆となるものであるので、ぜひ読み進めていただきたい。

 稿の最後では、化学物質の影響に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソンの時代からたどり、私たちが今、どのような世界を生きているかを自覚させられる。そして、社会が創り出す「社会的病気」をとりのぞく必要が語られている。その歴史から私たちが何を学びとれるか、その責任が問われているといえる。

 また、最後の章では、沖縄市が、複雑な議論を避け決定過程を説明することなく、サッカー場に戻さずに駐車場と決定した結末についても、批判的な論考が述べられている(下記の記事参照)。 

 行政はサッカー場を駐車場に利用変更をしたことで、厄介な空間に物理的にフタをして終わりとできたと考えているかもしれない。しかし、私たちがこのように考察を重ね、それを声としていくことが、フタを閉じさせないことを意味する。その可能性も示してもらった寄稿であると思う。

2015年11月7日沖縄市サッカー場にて(川尻氏と河村) 私たちに力となる知を共有していただいた川尻氏に、深く感謝したい。

The Informed-Public Project 代表  河村 雅美

 

The Informed-Public Project 寄稿 レポート2017年7月7日

『今日のダイオキシン問題:沖縄の枯れ葉剤・サッカー場問題から』

川尻 要(埼玉県立がんセンター・臨床腫瘍研究所・客員研究員)

はじめに
1. ダイオキシン類と疾患
     1)  ダイオキシン類の被曝の歴史
     2)  ダイオキシン類は代謝されず体内に蓄積する
2. 今日のダイオキシン研究:最強毒物TCDDとAhR
     1)  TCDDに結合する受容体 (AhR) が存在する
     2)  TCDDの毒性はAhRに依存する
     3)  AhR遺伝子は動物進化の初期から保存されている
     4)  AhRは生存に必要な生物機能を持っている
     5)  TCDDによる新たな疾患が明らかになりつつある
     6)  発生初期のTCDD被爆はその後の成長に影響する
     7)  AhRは免疫にも働いている
     8)  環境中の異物は免疫疫能に影響を与える
     9)  AhRと腸管での免疫機能
     10) 腸内細菌・AhR活性化物質・免疫細胞の関係
3. 現在生きる世界とは
     1) 『沈黙の春』と「抗生物質の冬」の同時進行
     2) 「社会的病気」の原因はできる限り取り除くことが必要である
     3) 「沖縄市サッカー場の駐車場活用」をどう考えるか?
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References(参考文献)

はじめに

 二年前の冬に私はJ・ミッチェルの著書『追跡・沖縄の枯れ葉剤』1)ジョン・ミッチェル(著)、阿部小涼(訳):『追跡・沖縄の枯れ葉剤-埋もれた戦争犯罪を掘り起こす-』、高文研 (2014)を読みました。それまで「本土」ではあまり報道されていないこともあって、私は「沖縄の枯葉剤問題」について認識していませんでした。それを機会に沖縄・生物多様性市民ネットワークの活動2)河村雅美:「米軍の負の遺産の歴史を紡ぐ-「沖縄の枯葉剤」問題から」、『歴史地理教育』、No.847, p58-75, 2016年3月増刊号を知り、ノッレジカフェでの講演や沖縄タイムスの『論壇』を通して研究者の立場からダイオキシン汚染についての見解を述べさせていただきました。

「沖縄」はベトナム戦争時において米軍の最前線基地としての役割を強いられていましたが3)石川文洋:『フォト・ストーリー 沖縄の70年』、岩波新書 1543、岩波書店 (2015)、「沖縄には枯葉剤を持ち込んだ事実はない」とする日米政府によって「枯葉作戦」への関与は否定されたままでした。J. ミッチェルと生物多様性市民ネットワークの活動によって、枯葉剤成分と人類が合成した最強の毒物として知られている2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-パラ-ダイオキシン (以下TCDDと略す) を高濃度に含む腐食したドラム缶が「嘉手納基地」返還跡地である「沖縄市サッカー場」の地中から掘り起こされたことから、日米政府によって「隠蔽されていた事実」が白日の下に晒されることになりました。

「沖縄市サッカー場」からドラム缶が発掘されるほぼ2年前(2011年3月)、巨大地震とそれに伴う大津波により東日本大震災が引き起こされましたが、私たちはその後に発生した福島第1原子力発電所の「メルトダウン」に至る大事故に直面することにもなりました。そこで目撃されたことは「政府・東京電力・科学界・マスメディア」が一体となった意図的な情報隠しと、「国策」としてなされてきた「原発」政策の無責任さでした。私たちは「日米地位協定」と「国策」の下においては、不都合な事実は「権力的に隠蔽される」ことを記憶しておかねばなりません。「表現の自由」に関する国連報告者も「報道の自由度(世界72位)と国民の知る権利促進のための対策が必要」と政府に強く求めています。

 私は「原発」事故以降の「この国」では市民の生命や健康の価値がひどく軽んじられるようになった、と感じています。放射性物質とTCDDは性質の全く異なる危険物質ですが、ヒトを含めた生物への影響は非常に類似していることが以前の被曝事故の検証から指摘されています。「原発」事故による低線量放射線や低濃度ダイオキシン類に長期的に被曝することによって生じる毒性の影響は、胎児や小児、および未来世代に現れることが最も懸念されることです4)綿貫礼子(編)、吉田由布子、二神淑子、リュドミラ・サアキャン:『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの-「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』、新評論 (2012)。成人への「便宜的」な「急性」症状への許容被曝レベルを設定し、「この程度の汚染レベルでは当面の生命・健康に悪影響を与えない」と繰りかえすことによって、本来的には環境中に存在してはいけない危険物の存在を社会に許容させ、未来世代や「慢性」疾患への争点化を意図的に封じ込める国・行政の姿勢は批判せざるを得ません。

 最近の生物学・基礎医学の研究から見出された新たな知見からは、これまでの典型的なダイオキシン類の毒性のほかに、以前では個人的な体質と考えられていた症状や生まれつきの障害、原因不明とされるある種の疾患が「ダイオキシン類によって影響される」ことを示唆する結果が報告されています。行政側が発する「悪影響を与えない」という科学的根拠は示されず、将来的に発症するかもしれない可能性を頭ごなしに否定することに大きな疑問を感じています。特に、ヒトを含めた動物の発生の初期にダイオキシン類に被曝することは生命・健康に取り返しのつかない状況を招きかねないことを認識する必要があり、市民はもとより、政治・行政に携わる人々やその家族、さらにはアメリカ軍人にも総じて降りかかることです。

私は、『今日のダイオキシン問題』5)川尻 要:『ダイオキシンと「内・外」環境-その被曝史と科学史-』、九州大学出版会 (2015)において毒性に関する歴史と最近の科学的情報を提供し、沖縄の皆さんがダイオキシン汚染問題を考えるための一助にしていただければ幸いと思います。また、稿の終わりに「沖縄市サッカー場が駐車場として再活用される」ことについての私の見解を論じました。

 1. ダイオキシン類と疾患

1)  ダイオキシン類の被曝の歴史

 TCDDの毒性がはじめて報告されたのは今から60年前のことですが、世界の人々に毒性の示す強烈なインパクトを与えたのはベトナム戦争時の枯葉作戦 (1962-1971) で健康被害が明らかにされてからです。枯葉剤としては第二次世界大戦時に対植物兵器として開発された農薬2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)や2,4,5-T(2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸)が主に使用され、オレンジ剤はそれらが等量の割合で混ぜられたものでした。TCDDは特に2,4,5-Tの製造過程で生じる不純物であり、その毒性として発がん促進、催奇形性、生殖異常などが当初から指摘されていました6)綿貫礼子、吉田由布子:『未来世代への「戦争」が始まっている-ミナマタ・ベトナム・チェルノブイリ-』、岩波書店(2005)

 また、1968年には西日本一帯、特に北九州地方で当時のカネミ倉庫が製造・販売した食用油を摂取した1万人を超える人々が、皮膚疾患や「病気のデパート」とも呼ばれたようなさまざまな健康被害を訴えた「カネミ油症」食品公害事件が発生しました。その被害者からは「黒い赤ちゃん」が生まれ、次世代にも健康被害が生じたことから、社会に強い衝撃を与えました。原因として食用油の脱臭のために熱媒体として使用されたPCB(ポリ塩化ビフェニール)から加熱によってダイオキシン類のPCDF (ポリ塩化ジベンゾフラン) が生じ、これらが破損した伝熱管の穴から食用油に混入したことが後に明らかにされました7)川名英之:『検証・カネミ油症事件』、緑風出版(2005)

 1976年にはイタリア ミラノ近郊の農薬工場が爆発し、セベソ地区を中心とした地域に数十キログラムともいわれるTCDDとその類似物質が空中に飛散し、住民と環境を汚染しました。汚染のひどい地域の土壌は表面を削り取られて撤去され、新しい土壌に置き換えられました。すでに事故から40年以上が経過していますが、従来から観察された疾患のほかにTCDDの長期的暴露による生殖異常、発達障害、およびさまざまな慢性疾患への影響が指摘されています8)綿貫礼子、吉田由布子:『未来世代への「戦争」が始まっている-ミナマタ・ベトナム・チェルノブイリ-』、岩波書店(2005)

 2004年には当時のウクライナ大統領であったV. ユフチェンコがTCDDを投与され、その顕著な皮膚疾患 (クロルアクネ) の様相が報道されて世界に驚きをもたらしました。

 さらに、我が国ではダイオキシン類の総排出量がゴミ焼却規制の遅れにより’90年代の後半に急増しましたが、その対策法の施行により改善されていることが報告されています。同時に、母乳中のダイオキシン類などの濃度も減少していることから、「ダイオキシン問題は終焉した」というような風潮が見受けられますが、「カネミ油症」食品公害事件は未解決のままです9)川名英之:『検証・カネミ油症事件』、緑風出版(2005)

2) ダイオキシン類は代謝されず体内に蓄積する

 私たちは環境からさまざまな異物の侵入に曝されていますが、生体防御機構という生命を維持するためになくてはならないシステムによって守られています。その一つとして、自然界に存在しない人工産物である低分子化合物からの毒性に対しては、おもに肝臓に存在しているP450と呼ばれるタンパク質を中心とする薬物(異物)代謝酵素系で解毒され、無害化されて体外に排泄されてその毒性から防御されています。

 しかしながら、日常生活で一般的に発がん物質と呼ばれるものは代謝されて発がん性を示すように変化し、その不安定な代謝産物ががんに関連する遺伝子群に結合してDNAに変異を生じさせ、それらが蓄積して数十年後にがんとして発症するわけです。他方、TCDDなどのダイオキシン類は非常に安定な化学物質でほとんど代謝を受けず、そのままの状態で体内に蓄積されます。また、ダイオキシン類はそれ単独ではDNAに結合できないことから、発がん物質とは異なったメカニズムで疾患が発症することになります。

2.  今日のダイオキシン研究:最強毒物TCDDAhR

1) TCDDに結合する受容体 (AhR) が存在する

 すでに’70年代中ごろの生化学的研究により、TCDDと非常に強く結合するタンパク質が動物細胞内に微量に存在することが明らかにされています。このタンパク質はタバコ煙中に含まれている発がん物質であるベンゾピレン(多環芳香族炭化水素類の一種)なども結合することから、芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon Receptor : 以下AhRと略す)と呼ばれることになりました。

 細胞質に取り込まれたTCDDはAhRと強く結合し、核内に移動してAhRと一緒に働くパートナー (ARNTと呼ばれるタンパク質) と共に特有な遺伝子DNA配列(異物応答配列)の領域に結合します。この周辺にはさまざまな因子が集合して複合体を形成し、相互に協力しながら遺伝子の転写を促進してmRNAが誘導され、mRNAは細胞質に移動して特有の機能を示すタンパク質に翻訳されることになります(図1)。

 したがって、TCDDに被曝することは「AhRに働き始めろ」とスイッチを強制的に入れる(核内移行の促進)ことになり、このことはAhRの活性化と呼ばれています。尚、AhRの活性化は平時においても「食物、細胞、腸内微生物などに由来する化合物」などによって生じており、生命の維持に重要な遺伝子発現を調節しています。

2) TCDDの毒性はAhRに依存する

 分子生物学的な手法によってAhR遺伝子を働かないようにした遺伝子欠損マウスが作製されています。二本の染色体上の片方のAhR遺伝子のみを欠損している(ヘテロ)雌雄マウスを交配させ、妊娠後の固有な時期にTCDDを投与して生まれてくる胎仔へのTCDDの影響が調べられました。その結果、同腹のマウス胎仔のうちで野生型の遺伝子型を二本持つ(ホモ)胎仔はほぼ確実に口蓋裂や水腎症を発症しますが、遺伝子欠損の遺伝子型をホモに持つマウス胎仔では奇形がみられません。

 また、ベンゾピレンをマウスの皮膚に塗ると、野生型マウスでは90%以上で皮膚がんを発症しますが、AhR遺伝子欠損マウスでは全く発がんしないことが観察されています。これらの結果から、AhRが細胞内に存在しないとダイオキシンの催奇形性やベンゾピレンでの皮膚がんは発症せず、AhRが毒性発現に直接的に関与していることが明らかにされています。

3) AhR遺伝子は動物進化の初期から保存されている

 一方、さまざまな動物での研究から動物の進化とAhR遺伝子との関係が明らかになってきました。AhR遺伝子はショウジョウバエや線虫などはもちろん、イソギンチャク、二枚貝、ウニなどの下等動物のゲノム中にも存在していることが見出されました。これらのことから、AhR遺伝子は6億年以上も昔の、動物が進化した非常に早い初期の時点から存在していたことが強く示唆されています。しかしながら、AhRがTCDDを結合する能力を示すのは魚類の先祖と考えられるヤツメウナギからで、それ以前の動物では結合能が見られません。恐らく、自然界に存在した海産塩化化合物の出現によって、先祖型魚類が進化した時代に(~4.5億年前)これらの化学物質と結合できる性質がAhR遺伝子に獲得されたものと考えられます。

 なお、TCDDとベンゾピレンはAhRに結合して共通した薬物代謝能を示すP450分子種を誘導することが知られていますが、このタイプのP450遺伝子(P450遺伝子数はヒトでは57種類)は単一の先祖型P450遺伝子からデボン紀(~4億年前)に分岐したと見られており、その時にはすでにAhRのTCDD結合能が獲得されていたと思われます。

4) AhRは生存に必要な生物機能を持っている

 ショウジョウバエなどの無脊椎動物のAhRはTCDDの結合能はありませんが、その発生・形態形成などの重要な働きを持つことが明らかになったことから、ヒトを含めた高等動物のAhRが持っている生物機能についての研究が急速に進展しました。AhR遺伝子が何億年もかけてTCDDの毒性を発現するためにヒトにまで保存されてきたとは考えられないからです。現在までに明らかにされている生物機能として免疫・発生・生殖・細胞の運動などがあり、生存にとり本質的な働きでもあります。この多彩な機能を裏付ける基盤として、AhRとそのパートナーのARNTが結合する異物応答配列はゲノム上に広範に存在しており、それを認識して多くの遺伝子の転写に関与しているからです。

 尚、正常な環境下では、AhRの活性化は動物の生命活動に由来するある種の化合物(緑黄色野菜成分やアミノ酸の1種であるトリプトファンの代謝産物、乳酸菌などの腸内細菌が産生する化合物など)と比較的弱く結合してプログラムされた特定の時期に、適切な量の標的とする遺伝子の転写反応を進めていることが考えられます。これに対して、TCDDなどのダイオキシン類はAhRと強く結合して予定外で強力な遺伝子発現を長期的に引き起こし、正常な生命活動の情報ネットワークに干渉・攪乱して異常なシグナルがもたらされ、多くの疾患を引き起こすことが考えられます。まさに「光」と「影」の関係です (図2)。

5) TCDDによる新たな疾患が明らかになりつつある

 以前から大気汚染と慢性疾患であるアトピー性皮膚炎との関連性が指摘されていましたが、科学的な根拠は乏しいものでした。しかしながら、大気汚染物質中に含まれるAhR活性化物質によってAhRが活性化され、アトピー性皮膚炎の痒みなどの諸症状が引き起こされる分子メカニズムが最近の研究から明らかにされました。

 従って、AhRの環境化学物質センサーとしての性質とその多様な生物機能への働きを考えると、「これまで明らかにされているTCDDの毒性はそのほんの一部にすぎないのではないか?」という素朴な疑問が生じます。実際、AhRの幹細胞制御と免疫への役割が注目されており、それにTCDDが干渉して疾患が起こる可能性が指摘されています。

6) 発生初期のTCDD被曝はその後の成長に影響する

 胚性幹細胞 (ES細胞) はすべての組織に分化する多能性と高い増殖能という性質を併せ持つ細胞です。たとえば、心臓を構成する心筋細胞への分化は多くの増殖因子や形態の形成に関与するタンパク質などが特定の時期に働いて正常な心筋細胞(分化7日以降に心筋収縮を示す)になります。しかしながら、マウスES細胞が心筋細胞へ分化する際にTCDDが存在すると、遺伝子発現が乱されて心筋の収縮が阻害されることが示されています。TCDDの影響を分化の各段階で調べたところ、ES細胞の分化開始後0~3日の間に暴露されたときにのみ心筋収縮の阻害が観察されています。その理由として、AhRによる時期特異的な増殖因子の発現誘導がTCDDの存在により抑制されることに起因しており、TCDDと同時に不足した増殖因子を添加することによって心筋収縮の阻害から回復することが示されています。また、発生初期におけるTCDDの暴露によって、マウスの成長後の心機能も影響を受けることが確認されています。

 さらに、AhRは心臓の形成に重要な働きをするタンパク質の発現も誘導しており、TCDD暴露でその発現が抑制されて先天性心疾患を示すマウスを誘発するとの報告もされています。セベソの農薬工場爆発事故においても生まれつき心臓に疾患を持つ子供が急増したことが報告されていました。

7) AhRは免疫にも働いている

 動物は病原菌やウィルスなどに由来する高分子化合物の毒素に対しては免疫の働きによって防御されています。従来、低分子化合物に対する薬物(異物)の代謝と免疫はそれぞれに働く役者(タンパク質)が異なっていたことから全く別なものと考えられてきました。しかしながら、免疫にもAhRが関与することが示され、AhRは生体防御機構の全般に渡って重要な役割を担う存在であることが明らかになってきました。

 免疫は、造血幹細胞からさまざまな種類の白血球に分化した免疫細胞によって営まれます。免疫には生まれつき体に備わった「自然免疫」10)審良静男、黒崎智博:『新しい免疫入門-自然免疫から自然炎症まで-』、ブルーバックス B-1896、講談社(2014)と、生まれた後に病原体との戦いを通して身に着く「獲得免疫」11)岸本忠三、中嶋 彰:『現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病』、ブルーバックス B-1955、講談社 (2016) があります。「自然免疫」では病原菌などがマクロファージや好中球と呼ばれる食細胞によって捕食されて生体は防御され、「獲得免疫」は病原体を個別にピンポイントで強力にたたく働きを示し、この両者のシステムは「樹状細胞」と呼ばれる細胞で機能的に繋がれています。すなわち、病原体を食べて活性化した樹状細胞は「未熟」なT細胞(ナイーブT細胞と呼ばれる)に病原体の情報を伝えて(抗原提示)、数種類の働き方の異なる成熟した働きを持つヘルパーT細胞へと分化を促進します。 

 ヘルパーT細胞は総じて免疫を促進する作用を示しますが、その中でも活性化17型ヘルパーT細胞 (Th17細胞) は感染免疫(細胞外細菌やカビの排除)や炎症反応に働きます。ウィルスや寄生虫などには別のタイプのヘルパーT細胞が働きます。同時に、ナイーブT細胞からは制御性T細胞 (Tレグ細胞) と呼ばれる細胞も分化しますが、この細胞は免疫・炎症作用に抑制的に働きます。

 全体として免疫機能のバランスによって恒常性は保たれていますが、免疫が過剰になるとアレルギー、炎症性疾患、自己免疫疾患になり、逆の場合には免疫不全や発がんしやすくなります。尚、固有なヘルパーT細胞やTレグ細胞への分化は、それぞれ異なった性質をもつサイトカインと呼ばれる細胞間で情報を伝え合う物質が存在する環境下で進行します。

8) 環境中の異物は免疫疫能に影響を与える

 AhRは「獲得免疫」で重要なナイーブT 細胞の分化に中心的な役割を演じています。特に免疫促進のTh17細胞と、免疫抑制のTレグ細胞への分化はAhRの存在が必要であり、その方向性はさまざまなAhR活性化物質で大きく影響を受けます。TCDDは強力な免疫抑制作用を持つことが知られていますが、それは一連の反応で進行します。TCDDは樹状細胞のAhRと結合して免疫抑制酵素を誘導し、この酵素の働きによってアミノ酸の1種のトリプトファンから生じた産物(キヌレニン)がナイーブT 細胞のAhRと結合してTレグ細胞の分化に重要なマーカーであるタンパク質を誘導するからです。その結果、胸腺縮退などの免疫毒性や、リンパ・血液系のがんが誘発されやすくなることが報告されています。

 また、自己免疫疾患の多くは発症機序がよくわかっていないのですが、関節リウマチはTh17細胞の炎症亢進と考えられ、T細胞でのみAhR遺伝子を欠損させたマウスではリウマチが抑制されることが報告されています。さらに多発性硬化症のモデルマウスでは投与したAhR活性化物質の種類により症状が変化し、免疫抑制のTレグ細胞を誘導する化合物では改善、免疫促進のTh17細胞を誘導する物質では悪化することが報告されています。

 上の例でも示したように、これまで私たちの体質とも思われていた免疫能も、環境中の異物 (TCDDなど) がAhRに作用して影響を受ける可能性があることは極めて重要なことです。また、これらの免疫応答に働くタンパク質をコードしている遺伝子の多くにAhRが結合する異物応答配列が見られ、Th17細胞では炎症性の、Tレグ細胞では抗炎症性のサイトカインが産生されます。

9) AhRと腸管での免疫機能

 腸管は食物を消化・吸収するという働きがあり、食物に紛れ込んだ細菌やウィルスの体内侵入を阻止しなければなりませんし、無害な異物・常在菌に対しては必要以上に反応しないことも重要です。腸管には免疫細胞の50%以上が存在しているといわれており、免疫機能が最も盛んな器官の一つです。これまでに述べてきた免疫細胞のほかにも自然免疫リンパ球様細胞 (ILC3) や上皮内リンパ球細胞 (IEL) が存在し、AhRはリンパ濾胞などの二次リンパ組織の構築や病原菌防御などに働いています。この際、AhRは食餌成分や乳酸菌の産生物を活性化物質として利用し、炎症性サイトカインを産生して病原菌防御の働きを促進しています。AhR遺伝子が欠損したマウスではマウス腸病原菌に対する感受性が著しく高まります。

10) 腸内細菌・AhR活性化物質・免疫細胞の関係

 腸内細菌はその多くが嫌気性であり、培養法を含めて研究には多くの困難がありました。近年のDNA塩基配列技術の向上により、直接的な分離と培養をしなくても体にいる微生物種をDNA配列から特定可能になり、「無菌マウス」の体内に単一、または複数種の細菌を群生させて、それぞれの微生物がマウスにどのような影響を与えるかについての知見が得られるようになりました。このような「ノトバイオート・マウス」研究を基礎に、微生物がヒトでいかに働いているかを類推することが可能な時代になってきたわけです。

 また、マウスでは特定の腸内細菌が腸の固有な領域に生存し、免疫機能に影響を与えていることが明らかになってきました。たとえばある種の常在菌は小腸に好んで生育し、その産生物が樹状細胞に認識されてTh17細胞への分化を促進し、他方、別な菌は結腸側に生存して免疫抑制作用を示すTレグ細胞への分化を促進していることが報告されています。免疫細胞の分化においてはAhRも誘導され、食物中のトリプトファンや緑黄色野菜成分、微生物などに由来する代謝産物がAhR活性化物質として機能し、免疫細胞の分化、病原菌感染防御などのさまざまな働きを支えるサイトカインを産生してそれぞれ免疫促進や抑制に働きます。腸内細菌とAhR活性化物質、および主な免疫細胞との相互関係を図3として示しました。マウスではAhRが宿主・腸内細菌の恒常性維持に中心的な役割を演じていることが示唆されています。

3. 現在生きる世界とは

1)『沈黙の春』と「抗生物質の冬」の同時進行

 カーソンが『沈黙の春』12)Carson R. “Silent Spring”, Houghton Mifflin, USA (1962) レイチェル・カーソン (著)、青樹簗一 (訳):『沈黙の春』、新潮社(1974)を著わし、「第二次世界大戦後のDDTなどの農薬類を中心とした人工化学物質の大量拡散は生態系の破壊と最終的にはヒトへの影響をもたらす」と世界に問題提起を発してからすでに50年以上が経過しています。その警告が現実化した最悪なものとして「枯葉作戦」があり、TCDDの毒性がクローズアップされることにもなりました。また、第二次世界大戦の勃発とともに殺菌効果を有する薬剤の開発は兵士を救うための喫緊の課題となり、ペニシリン産生カビ大量培養法の開発につながりました。これを契機としてさまざまな抗生物質の開発が進められ、今日までの現代医療の大きな進歩の基盤ともなりました。しかしながら、米国国立衛生研究所を中心とした2008年から8年間に及んだヒトマイクロバイオーム・プロジェクトの研究成果から、抗生物質が多くの医療現場で「念のため」と予防的に過剰使用されてきたことによる深刻な副作用が指摘されることになりました13)The Human Microbiome Project Consortium. Structure, function and diversity of the healthy human microbiome. Nature, 486, 207-214 (2012)

 微生物学者であるM. ブレイザーは「過剰な抗生物質の使用で耐性菌の出現・拡散と共に、私たちと共生してきた体内微生物の多様性が喪失して私たち自身の代謝や免疫、認識に影響を与え、同時に微生物叢自体の発達に影響を与える」と指摘し、そのような状況を「抗生物質の冬」と呼んでいます14)マーティン・J・ブレイザー (著)、山本太郎 (訳):『失われてゆく、我々の内なる細菌』、みすず書房 (2015)。また、科学ジャーナリストのA. コリンも「20世紀後半から先進国で急増している肥満、過敏性腸症候群、糖尿病、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症などの病気はヒト体内に存在している微生物の生態系の様相が以前とは変わってしまったことに起因し、おもに免疫系の過剰反応と腸疾患としてあらわれている」と警告しています15)アランナ・コリン (著)、矢野真千子 (訳):『あなたの体は9割が細菌-微生物の生態系がくずれはじめた-』、河出書房新社 (2016)

 農産物の生産性向上や感染症防御のために開発された農薬や抗生物質の過剰使用によって、ヒトを取り巻く生態系と内なる生態系(体内微生物)の多様性が同時進行的に破壊されつつあるという危機に対し、私たちは社会的・個人的に適切な対応を具体化することが求められています。抗生物質の重要性は現代医療の中核的な位置を占めており、その厳密な使用による削減と家畜への成長促進目的での使用禁止が求められ、これらはスウェーデンや欧州連合ではすでに実現していることです。

2)「社会的病気」の原因はできる限り取り除くことが必要である

 私たちの社会では半世紀前に比べて科学・技術が発展し、医療水準も向上して昔では確実に死に直面するような疾患からも命が救われるようになりました。しかしながら他方では、以前では見られなかった新たな「社会的病気」を作り出してきたことも事実です。たとえば、IT社会の過剰なストレスによるうつ病などの精神的「病」、化学物質による過敏症などです。これらは極めて個人的疾患として扱われる傾向があり、時として無視されがちです。また、「国・産業界・科学界」が一体化して「国策」として実行された政策から誘導された「社会的病気」もあります。その代表例として「原発」事故による放射能被曝があります。「福島」原発事故において最も優先的になされるべきことは被害者救済ですが、事故の原因を究明し、その責任を明確化し、「国策」を変更させることが重要であることは言うまでもありません。「この国」が壊滅する恐れさえあった「人災」を引き起こしたにも関わらず「国策」を推し進めた加害者の誰ひとりとして責任を追及されないのは「国家犯罪」とも云え、世論に反してひたすら再稼働に邁進する「政府・行政・電力会社・科学界」は「社会正義欠損症」という「社会的病気」が重症化しているのではないでしょうか。これ以上の「核のゴミ」を増やし続けることは絶対に避けねばなりませんし、「未来世代に負の遺産を押し付けるのか」という問いを発し続けることが大切です。

 また、「沖縄」の「枯葉剤問題」は、日米安保体制のもとでの「情報の隠蔽」が解決の大きな障害となっています。「枯葉剤」の貯蔵・使用・廃棄された場所は「沖縄市サッカー場」のほかにも確認、指摘されており16)河村雅美:Report 002「“複合投棄”という跡地の現実:沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地」、http://ipp.okinawa/、さらなる「情報公開」を闘いとることが期待され、同時に、ダイオキシンの毒性についての知識も広く共有されることが重要です。

3)「沖縄市サッカー場の駐車場活用」をどう考えるか?

「市は沖縄防衛局がドラム缶などを県外に搬出したことや、土壌・地下水の汚染レベルも環境基準値の範囲内だったことから、汚染物質は除去されたと判断した。今後、サッカー場は駐車場として活用される」という沖縄市の新聞発表を目にしたとき17)『琉球新報』2017年5月24日付;『沖縄タイムス』2017年5月26日付、私は「日本の公害」の原点と称される足尾銅山鉱毒事件を思い出しました。栃木県・群馬県境を流れる渡良瀬川上流にあった足尾銅山では、明治時代中期ごろから古河市兵衛 [現:古河機械金属(株)] の経営のもとで生産第一主義を掲げて開発を最優先させた結果、銅精錬による亜硫酸ガスの発生と伐採のために銅山周辺の山林を荒廃させて渡良瀬川の洪水を多発させました。併せて、鉱毒を含む廃棄物を同河川に大量に投棄したことから、川魚の大量死や下流域での農作物の甚大なる被害をもたらして農民の生活を困窮させ、健康被害も顕在化するに及んで多くの農民を鉱毒反対運動に立ち上がらせることになりました。この運動は地元の衆議院議員田中正造が中心となり、議会活動や明治天皇直訴などによって鉱毒反対・操業停止を世論に訴え続け、明治時代では最大ともいえる社会問題となりました。しかしながら、当時の明治政府はあらゆる局面で日露戦争に向けて国民的な動員をはかっていた時期でもあり、鉱毒反対運動の弾圧と洪水対策という一石二鳥の効果を狙って土地収用法を適用し、栃木県と謀って最も激甚な鉱毒と洪水被害に晒されていた谷中村を強制破壊・遊水池化して農民もろとも圧殺しました 18)荒畑寒村:『谷中村滅亡史』、岩波文庫(1999)。旧谷中村は、明治政府の「失政の遺跡」ともいうべき鉱毒沈澱池として現在にいたっています。

 また、大洪水と鉱毒被害はその後も繰り返されており19)東海林吉郎・菅井益郎:『新版 通史・足尾鉱毒事件1877~1984』、世織書房(2014)、記憶に新しい3.11の大地震でも「鉱毒を含む鉱滓や廃石が源五郎堆積場から崩壊して渡良瀬川に流出し、川水からは環境基準値の約2倍の鉛が検出されて地域住民の生活を脅かした」との報道がなされています20)『朝日新聞』2011年3月13日付(栃木版)。これらの事実を踏まえて、「足尾の鉱毒被害は現在に至っても実質的には何一つとして解決を見ていない。それはあたかも終わったかのように見なされているだけであり、忘れたころに繰り返される」と佐藤・田口は論じています21)佐藤嘉幸・田口卓臣:『脱原発の哲学』、人文書院 p263-313, (2016)

 私は「沖縄市サッカー場」がどのようなプロセスで急遽、駐車場に用途変更になったかを知るすべがありませんが、記事を読む限り地元の市民にもその真相は説明されていないようです。なぜ、汚染物質が安全と見なされている「環境基準値内」に除去されたにも関わらず、サッカー場を一方的に駐車場に変更するのでしょうか?本当は、使用できないほど危険性があるということでしょうか?あるいは、日米政府にとり存在しないはずの「負の遺産」が埋まっていた「沖縄市サッカー場」を「市民の記憶から抹殺」したかったのでしょうか?「面倒な事案であるから一応の調査・処理をしてアスファルトで固めて終りにしよう」という沖縄防衛局と沖縄市との裏相談を想定することはできますが、行政側にはこのような結論に至った事実経過を市民・関係者に説明する責任が求められます。

 私は今回の処置はその本質において、たとえ規模や被害の実態などにおいての大きな違いはあるにしても、明治政府が谷中村を強制的に廃村・遊水池化したことに匹敵する行為であると考えざるを得ません。「大日本帝国憲法」のもとで「富国強兵」・「殖産興業」政策を進め、国家・行政・古河資本が一体化した足尾銅山による鉱毒事件・洪水被害では多くの農民の生活を困窮させて健康被害をもたらしたにも拘らず弾圧で答えた明治政府と、東アジアの安全保障問題では異常なほど危機感をあおりながら「憲法改正」を主張し、辺野古や高江では市民の弾圧下で米軍基地の再編強化に突き進み、日米地位協定のもとで米軍基地跡の「負の遺産」を隠蔽し続け、露見するや現場をアスファルトで埋めつくして「何もなかった」ことを演出する安倍政権の姿勢は同類にも映り、「戦後民主主義」を感じさせる匂いもしないと思うのは決して私だけではないでしょう。

2015年7月10日 沖縄市サッカー場から沖縄南インター方向を撮影

2015年11月7日 沖縄市サッカー場から沖縄南インター方向を川尻氏と共に視察

2017年7月8日 沖縄市サッカー場から沖縄南インター方向を撮影

References   [ + ]

1. ジョン・ミッチェル(著)、阿部小涼(訳):『追跡・沖縄の枯れ葉剤-埋もれた戦争犯罪を掘り起こす-』、高文研 (2014)
2. 河村雅美:「米軍の負の遺産の歴史を紡ぐ-「沖縄の枯葉剤」問題から」、『歴史地理教育』、No.847, p58-75, 2016年3月増刊号
3. 石川文洋:『フォト・ストーリー 沖縄の70年』、岩波新書 1543、岩波書店 (2015)
4. 綿貫礼子(編)、吉田由布子、二神淑子、リュドミラ・サアキャン:『放射能汚染が未来世代に及ぼすもの-「科学」を問い、脱原発の思想を紡ぐ』、新評論 (2012)
5. 川尻 要:『ダイオキシンと「内・外」環境-その被曝史と科学史-』、九州大学出版会 (2015)
6, 8. 綿貫礼子、吉田由布子:『未来世代への「戦争」が始まっている-ミナマタ・ベトナム・チェルノブイリ-』、岩波書店(2005)
7, 9. 川名英之:『検証・カネミ油症事件』、緑風出版(2005)
10. 審良静男、黒崎智博:『新しい免疫入門-自然免疫から自然炎症まで-』、ブルーバックス B-1896、講談社(2014)
11. 岸本忠三、中嶋 彰:『現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病』、ブルーバックス B-1955、講談社 (2016)
12. Carson R. “Silent Spring”, Houghton Mifflin, USA (1962) レイチェル・カーソン (著)、青樹簗一 (訳):『沈黙の春』、新潮社(1974)
13. The Human Microbiome Project Consortium. Structure, function and diversity of the healthy human microbiome. Nature, 486, 207-214 (2012)
14. マーティン・J・ブレイザー (著)、山本太郎 (訳):『失われてゆく、我々の内なる細菌』、みすず書房 (2015)
15. アランナ・コリン (著)、矢野真千子 (訳):『あなたの体は9割が細菌-微生物の生態系がくずれはじめた-』、河出書房新社 (2016)
16. 河村雅美:Report 002「“複合投棄”という跡地の現実:沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地」、http://ipp.okinawa/
17. 『琉球新報』2017年5月24日付;『沖縄タイムス』2017年5月26日付
18. 荒畑寒村:『谷中村滅亡史』、岩波文庫(1999)
19. 東海林吉郎・菅井益郎:『新版 通史・足尾鉱毒事件1877~1984』、世織書房(2014)
20. 『朝日新聞』2011年3月13日付(栃木版)
21. 佐藤嘉幸・田口卓臣:『脱原発の哲学』、人文書院 p263-313, (2016)

Report 006 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

防衛省提出資料 北部訓練場返還実施計画案(2016年10月18日)について
Report No.6 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

The Informed-Public Project 代表 河村雅美 

 The Informed-Public Projectは、北部訓練場過半の返還の実施計画案についての調査を聞き取りと文書で行った。

 調査により、返還予定地の所有の8割が林野庁であること、実施計画案は沖縄防衛局が沖縄県、東村、国頭村に送付したもの以外の文書が存在していることが明らかになり、重要な事実があるためにリリースした。

 このリリースは、発表後、以下の記事になった

 沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310

 沖縄タイムス「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482
  

 以下、リリース時のIPP見解である(2016年 11月14日 )。 

1.  地権者が林野庁であることによる懸念

 北部訓練場過半の返還は跡地利用特措法を根拠法として実施され、「返還実施計画」の手続きが同法の8条に基いて行われる。

 実施計画案に県知事は1ヶ月後、東村長、国頭村長は、2ヶ月後に意見を提出する。 県知事意見は、沖縄県の庁内で関係部署からの意見を集約して提出することになっているとのことであった(2016.10 沖縄県企画調整課)

 市町村は返還予定地の地権者からの意見を集約し、提出する。東村の地権者は林野庁、国頭村の地権者は50人程度であるとのことであった(2016.11.2 東村、国頭村)。国頭村は聞き取りの時点では地権者の意見を聞く方法も模索中であり、意見の決定過程も町議決定となるか、上意決済になるかも未定ということであった。

 農林水産省林野庁への聞き取りによると、東村、国頭村の返還予定地の大半の国有林の所有者は林野庁であるとのことであった(2016.11.10林野庁業務課藤平)。所有者の林野庁と沖縄防衛局の関係については、林野庁は「国」の方に属するため、意見書を東村に出すことはないとの見解を示した。

 また、返還後の利用計画は返還後の議論であるとしながらも、林業地として使うよりは、貴重な自然としての森林として利用することを考えているとのことであった。報道によれば東村と国頭村が部分返還の対象地をやんばる国立公園に早期に編入することを求めているということである(琉球新報、2016年10月18日)。

 ここで懸念されることは、米軍基地跡地を自然保護区にして汚染調査がおざなりになることである。以下の理由による。
 (1)国から国の返還であること
 (2)他国で相似の事例があり、問題として指摘されていること。

 例えばプエルト・リコのビエケスの海軍の演習場が18000エーカーの大半が内務省(the U.S. Department Interior)に移管され、野生生物保護区に指定された例がある。年間180日以上実弾訓練を実施していた地域であるにも関わらず、保護区として利用することにより、浄化の要件が表層的なものとなる、政治的な跡地利用の例である(追記:この件は別途問題化する)。

 おざなりになることで、安全・安心の確保ができないことは言うまでもない。米軍の北部訓練場の運用による汚染や環境破壊は当然予測されることである。米軍の責任を今後問う事例としても詳細なデータは必要である。それを把握することは、日米地位協定で免除されている米軍の「原状回復」の義務を今後果たさせる道筋をつけるためにも重要である。

2. 「支障除去措置」の問題

 メディアには公表していない沖縄防衛局の関係自治体への説明文書「北部訓練場の過半の返還について」を国会議員赤嶺政賢事務所から入手した。

 実施計画案にはない情報が入っており、以下のような計画が明らかになっている。

沖縄防衛局説明文書「北部訓練場の過半の返還について」

支障除去措置の進め方
 北部訓練場の返還予定地は「やんばる国立公園(仮称)」に隣接し、貴重な動植物及び天然記念物などが生息 しているため、環境に十分配慮した上で支障除去措置を実施する必要があることから、土壌汚染調査等を実施する際は、関係機関等と相談しながら進める必要がある。

支障除去措置の主な範囲

 支障除去措置の内容については、資料等調査及び概況調査の結果により決定するものであるが、現時点にお いて、支障除去措置を実施する必要があると考える主な範囲は以下のとおり。
①米軍車両の通行があった道路
②既存のヘリパッド及びその周辺
③土壌汚染等の蓋然性が高いと考えられる過去にヘリが墜落した場所

IPPが入手した 北部訓練場の過半の返還についてH28・10月 沖縄防衛局

 

 まず範囲が非常に限定的に考えられている、使用していた道路、ヘリパッドと事故の墜落場所ではこれまでの例からみても、十分ではない。資料等調査や概況調査の実施前に上記のような範囲を必要範囲とする根拠も不明である。

 沖縄防衛局の資料等調査も精度に疑念がある。西普天間の返還跡地でも資料等調査での予測が外れ、ドラム缶や鉛が検出された地域が「土壌汚染が少ないと認められる土地」から「土壌汚染のおそれが比較的多い区画」に変更された前例もある(「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)西普天間住宅地区内報告書2014年12月、沖縄防衛局)。

 米軍から提供される資料が不十分であるに加え、返還される土地は米軍の投棄物が発見される例が沖縄の返還跡地の特徴であるため、汚染の事前の性格づけも困難な状態である。

 範囲を限定した調査をすることは問題であるし、それゆえに40,100,000平方メートルの調査を含む支障除去を1-1年6ヶ月で実施するのは現実的でない。後ろを決めて短期間で調査や除去を実施することは、安全・安心の面で不安が持たれるものである。

 西普天間の51haの2-3年間という予定される支障除去期間よりも短く、貴重な自然環境の残る広大な訓練場の調査の知見や経験がこれまでないにも関わらず、このような短期間で終わらせることがなぜできるのか、説明がないのも併せて問題である。

 世界自然遺産にするための国立公園化ということを考えると、杜撰な調査処理では、国際基準のハードルを越えられないことになることも2村は考える必要がある。

以上。 IPPが入手した 北部訓練場返還実施計画素案(2016年10月18日)PDFデータ20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案01

20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案0220161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案03

 

※このレポートは、発表後、以下の記事になった
 
沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310
 
「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17)  http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482

 

Report 005 琉球・奄美の世界自然遺産に関する情報開示請求について

IPP Report No5 琉球・奄美の世界自然遺産に関する環境省への情報開示請求について

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年11月2日

 The Informed-Public Project は、琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する情報、特に隣接する米軍北部訓練場の問題などがどのように米国側に、および登録に関する国際機関に伝えられているか、情報開示請求制度を使って調査した。

 背景

 2016年9月15日に沖縄本島北部の国頭、東、大宜味3村にまたがる陸域と海域約1万6300ヘクタールが「やんばる国立公園」に指定された。これは世界自然遺産登録の条件である、「法的措置により、価値の保護・保全が十分担保されていること(完全性)」を満たすための日本政府の措置の一つである。

 しかし、世界自然遺産登録の過程におけるハードルはこれでクリアしたわけではない。登録への道筋の中で県民の懸念事項として挙げられている問題の一つは、国立公園に隣接している米軍北部訓練場の問題で生じる環境保全の問題という政治的な問題である。

 日本政府が米軍基地問題という政治的な問題を避けているのではないかという疑念は、市民団体から幾度か指摘されてきた。
 非公式な形では、2012年11月4日に行われた「世界自然遺産シンポジウムin那覇」でのシンポ後におけるIUCN(国際自然保護連合)レスリー・モロイ氏と市民とのやりとりがある。モロイ氏は高江のヘリパッド建設のことは承知していたが、沖縄に存在する米軍基地の全容も北部訓練場の位置や大きさも、その時点まで情報提供されていなかったことを筆者はその場で確認している。
http://okinawabd.ti-da.net/e4154949.html

 また、沖縄・生物多様性市民ネットワーク元共同代表吉川秀樹のやんばるの国立公園計画についての環境省へのパブリック・コメント(2016.3.27)では、同計画で「基本方針において『北部訓練場の問題をどうするのか』(訓練場内の自然環境のデータはどうなっているのか、訓練からの人々の生活環境への影響はどうなっているのか、国立公園設定に向けて米軍との調整はどうなっているのかなど)を明確に示す」ことを提案している[1]。吉川氏によると、具体的には、日本環境管理基準(JEGS)の運用について、バッファーゾーンの設定を想定しているとのことであった。

 一方、この問題は問題提起がされながらも、具体的に日本政府がどのように対応しているかを公けに追及することは、市民からもメディアからもされてこなかった。

 情報公開請求

 この件について、日本政府が現時点でどのように対応しているかについて調査が必要であると考え、3機関に対して、以下の情報開示請求を行った(2015年8月10日付)。いずれも2013年1月1日からの文書を請求した。

1.  環境省

  1. 国際自然保護連合(IUCN)とユネスコと環境省間の文書のやりとり
  2. 琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する会議の文書
  3. 環境省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

2. 防衛省

  1. 防衛省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

3. 沖縄防衛局

  1. 沖縄防衛局と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て
  2. (上記の追加として)沖縄防衛局と環境省那覇自然環境事務所間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て(2016年8月31日付)

開示結果

 結果の概要は以下のとおりであった。

1.  環境省

  i. 文書 2016年9月9日付
 開示された文書
(ア)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)
(イ)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)
 上記以外の環境省と国際自然保護連合及びユネスコ間で交わした文書については、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は交渉上不利益を被るおそれがあり、法第5条第3号に該当するため、不開示。

 ii. 文書1(2))2016年9月9日付
 開示(1)世界遺産条約関係省庁連絡会議(平成25年1月) 

iii. 文書1(3))2016年9月9日付
 文書不開示
 理由:開示請求のあった行政文書に該当する資料は、非公開を前提とし、作成されたものであること。
 従って、法律第5条第3号に掲げる不開示情報(公にすることにより、他国等との信頼関係が損なわれるおそれがある情報)に該当し、不開示とする。

 担当部署:環境省水・大気環境局総務課

2. 防衛省

  i. 文書 2016年9月15日
  文書不存在 

3. 沖縄防衛局

  i. 文書 2016年9月8日
  文書不存在
 ii. 文書 2016年9月30日
  文書不存在 

 防衛省と地方協力局である沖縄防衛局は文書不存在であった。吉川秀樹氏によると、ジュゴン保護キャンペーンセンターの要請で「米軍とのやりとりはしている」という発言が防衛省、沖縄防衛局のいずれかであったということであるが(日時などは未確認)、その発言と矛盾している。

 一方、環境省は文書の存在は認めているが、暫定一覧表以外は不開示、つまり米軍、IUCN,ユネスコとのやりとりは開示しない、という結果であった。加えて、非開示文書のリストも公開しないため、文書の存在を裏付けるものは何も提示されていないこととなる。2013年からの3年間、日本政府が何をしてきたかの確認も推測もできない開示結果であった。ちなみに、筆者の実施している開示請求では、外務省では、非開示でも開示請求対象行政文書一覧として開示・非開示の文書名は挙げ(例「第1018会日米合同委員会議事録」)、非開示の決定理由をそれぞれ明記している。 

 結果の意味すること

  • 市民への情報公開という意味で問題
     環境省が自然遺産のことで、米軍や国際機関とどのようなやりとりをしているのかについては県民の関心も高く、それについての情報へのアクセスを閉ざすことは問題である。存在する文書のリストも提示しないということは、情報公開の観点からも問題といえる。
  • ステークホルダーを無視した世界自然遺産登録
     世界自然遺産登録は地元との協議が重要であるが、米軍基地との関係を懸念するステークホルダーを、環境省は軽視、もしくは無視していることを意味する。このような情報開示の現状では説明責任を果たすことはできない。
  • 環境省の姿勢
     このように環境省が情報を出さない、ということは、これからも出さない、ということを意味する。
  • 地元融和策の現れ
     
    環境省のこのような消極的な姿勢は、世界自然登録遺産とやんばるの国立公園化は高江ヘリパッド建設を条件とした北部訓練場の過半の返還の政策推進のための地元融和策にすぎないことの現れではないかと考えざるを得ない。

 今後に向けて

  • IPPは環境省に行政不服審査法に基づき、環境大臣に対して審査請求を行った。 
  • 日米間の文書のやりとりが開示できないと主張するのであれば、その開示以外の方法で情報開示を求めていく必要が関係自治体(沖縄県、国頭村、東村)や市民の側も必要である。   
  • いずれ米軍に当事者として説明責任を果たさせる必要がある。 

[1]沖縄・生物多様性市民ネットワークブログ
http://okinawabd.ti-da.net/c200363.html(2016.3.29)

以下は開示された文書の一部。

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書130212TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2013/02/12 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2014/01/06  TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書 2014/01/06 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」

第3分科会(第33回日本環境会議沖縄大会

「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」
Don’t let the fences stop you 

2016年10月23日(日)09:00-12:00
沖縄国際大学  3号館 303教室

報告1「基地汚染問題の新たなアプローチを探る」13346936_1241243575915817_1850526046387151590_n-1

河村雅美:調査団体 The Informed-Public Project 代表

博士(社会学)。元沖縄・生物多様性市民ネットワーク代表。The Informed-Public Projectの活動は http://ipp.okinawa/を参照。

報告2「基地内の微量有害物質汚染に対する調査研究の試み」img_1053-1

田代豊:名桜大学国際学群教授

三重大学大学院生物資源学研究科修了(博士(学術)) 環境計量士(濃度関係) ’12年より現職。

報告3「沖縄の米軍基地をめぐる音環境」img_1079

渡嘉敷健:琉球大学准教授

1960年沖縄県出身。専門は環境工学、環境騒音、音響工学。沖縄県公害審査会委員、沖縄県建築士審査会会長。辺野古埋め立て承認取り消しを巡る代執行訴訟の証人陳述書提出

 

コメンテーター:國吉信義さん 元米国カリフォルニア州マーチ空軍基地環境保全官) については、旧沖縄BDブログ記事 2015年04月17日2015年05月09日を参照下さい。


分科会3のねらい

沖縄の米軍基地被害の問題に関しては、日米地位協定による壁が大きくたちはだかり、日米関係の政治的状況に左右される部分が大きい。基地関係の事故・汚染発覚時でも、現場や情報へのアクセスが制限される状況が続いている。

この分科会では、その限界の中で、フェンスの外で/から得た情報、科学的データを用いて、どのような問題解決が可能であるか、沖縄での最新の事例をもとに議論する。

沖縄で専門家として継続的に調査・測定を行っている研究者からは、データを用いての辺野古、高江、普天間基地の騒音・低周波の問題、牧港のキャンプ・キンザー等の汚染問題からのアプローチを報告する。調査団体からは、嘉手納基地をめぐる、行政による調査の監視・分析からのアプローチを報告する。

報告者には、市民側に立った調査を誰が担い、いかに継続して実施できるか、および、得たデータをいかに効果的に用いるかという共通の課題がある。それらを実現するシステムやリソースについての問題提起・提言を行い、全体として議論する。

各報告をふまえて、元米国空軍マーチ基地環境保全官で基地汚染問題に従事し、嘉手納基地でも勤務経験のある國吉信義氏が、日米政府を動かすために何をすべきか、コメントする。

当日は、2013年に深刻なダイオキシン汚染が発覚した嘉手納基地跡地沖縄市サッカー場の様子を動画で紹介する。また、音環境の発表ではCH46とMV-22オスプレイの低周波音を体感する時間を設ける。

司会:吉川秀樹
コーディネーター:河村雅美

 
 
※ 本分科会におけるIPPの報告は、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの2016年度助成を受けています。

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琉球新報 沖縄から問う〈環境・平和・自治・人権〉-中-
『フェンスの外から挑む』- 調査・監視の手法共有を –

河村 雅美

”Don’t let the fences stop you(フェンスがあるからといって、立ちどまってはだめ)”

 これは10月21日から沖縄で開催される第33回日本環境会議沖縄大会の第3分科会「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」の英語タイトルであり、この分科会のねらいを適確に表しているといえる。以下、この分科会の報告者兼コーディネーターとしての立場から分科会を紹介してみたい。

 沖縄の環境問題には、米軍基地という、フェンスに囲まれて容易にアクセスできない場所に由来する大きな問題がある。この問題は日米地位協定という制度の壁、そして米国に追従する日本政府、日本政府を媒介として米軍に向き合う沖縄県や自治体のポリティクス=「政治」に左右されるところが大きい。

 それでは、私たちは術なく、フェンスの前にたたずみ「地位協定改定を」とくり返すしかないのだろうか。

汚染、騒音を検証

 この第3分科会は、そこで立ちどまらず、フェンスの外から何ができるかを探るために経験を共有し、議論する場とすることを目的としている。沖縄での騒音・汚染の事例をもとに、制度的に制限された状況でありながら、フェンス外で地元の研究者が継続的に調査すること、市民が行政の調査を監視していくことなどによるフェンスで立ちどまらないアプローチの可能性を語り合う場としたいと考えている。

 筆者は調査団体The Informed-Public Project 代表として、深刻なダイオキシン汚染が発覚した嘉手納基地跡地沖縄市サッカー場の事例や、嘉手納基地が汚染源と考えられるPFOS汚染など、行政調査の監視・分析からのアプローチを報告する。また、日英文書を読み、書く実務者として、言語という大きな壁が立ちはだかる日米沖のコミュニケーションの現実的な困難の面にも触れていく。

 また地元で継続的な調査をする2名の研究者から報告がある。田代豊氏(名桜大学国際学群教授)からは、基地内から外へ移動する媒体を用いて、基地内の汚染の状況を推定する手法を用いた普天間基地、キャンプ・キンザーの調査結果が報告される。浦添市とも協働し、返還が決定されているキャンプ・キンザーの汚染を、水質、底質、マングース等の野生生物から推定した成果は返還跡地問題にも大きな示唆を与えるものである。

 騒音被害の面からは渡嘉敷健氏が(琉球大学工学部准教授)沖縄の米軍基地をめぐる音環境について報告する。辺野古アセス、普天間基地の問題で、騒音調査を実施してきた氏からは、オスプレイの低周波による住民の健康被害、心理的側面まで含んだ住民への影響の実態を、正確に把握し示すことのできる調査の実施や、県条例制定の必要性が、説得力をもって提言される。img_1084-2「場」を作り出す

 これらの報告からわかるように、フェンス外で私たちが得たデータ、情報は基地内では得られないものである。基地が汚染源であることを基地内コミュニティに、米軍機が飛ぶことでどんな影響が住民にあるのかを米軍に、というように、むしろ私たちが基地内に伝えなければならないものではないか。このような情報の非対称性を使って、日米政府がこの問題に取り組む状況や「場」を、フェンスの外から、沖縄側が自ら創りだす可能性がある萌芽がある。この「場」を作り出すことの必要性を共有しなければならないのではないか。

 そのような動きは、日米政府、沖縄県の対応に緊張感を持たせることになる。それを積み重ねることは、沖縄の市民からの一つの意思表示となるだろう。公害問題に取り組んできた宇井純氏の言葉を借りれば、私たちの日米政府への「表現努力」を増やしていくということである。

持続的システムを

 しかし、そのフェンス外からの意思表示のためには、市民側に立った調査を誰が担い、いかに継続して実施できるか、行政への監視活動をどう継続していくかという課題がある。現在は特定の研究者たちの努力に依拠している状況であるが、20161004-p23-%e6%b2%96%e7%b8%84%e3%81%8b%e3%82%89%e5%95%8f%e3%81%86-%e7%92%b0%e5%a2%83-%e5%b9%b3%e5%92%8c-%e8%87%aa%e6%b2%bb-%e4%ba%ba%e6%a8%a9-%e4%b8%ad-%e3%83%95%e3%82%a7%e3%83%b3%e3%82%b9持続的なシステムやリソースの問題についてもともに考えたい。

 各報告をふまえて、元米国空軍マーチ基地環境保全官として基地汚染問題に従事してきた國吉信義氏がコメントする。フェンスの中と外を経験する国吉氏の見解が注目される。

 また沖縄市サッカー場のある場面を切り取った「政治」を感じる短い動画上映、CH46とMV-22オスプレイの低周波音の体感の時間も設けている。

 フェンス際ぎりぎりまで私たちがこれからどう動くのか、会議の参加者とともにオープンに話し合う場としたい。

(2016年10月23日日本環境会議 午前9時~正午 The Informed-Public Project代表 第3分科会報告者)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

The Informed-Public Project 代表 河村 雅美 
2016年9月16日

日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が2016年版に更新されている。

2016-jegs

【案内経緯】

2016年4月21日に日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が更新され、在日米軍のHPで発表されていた。
http://www.usfj.mil/Portals/80/Documents/Other/2016%20JEGS.pdf

 日本では、環境省のHPで在日米軍のHPのリンクをつけていたが、2016年版が出されていたことのアナウンス(報道発表)は特にされていなかった。
http://www.env.go.jp/air/info/usfj/index.html

防衛省による和訳は9月17日にHP上で発表された。
http://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/2016_jegs/index.html

【経緯の問題点】

  • 在日米軍から発表されていたのにも関わらず、日本政府が積極的にアナウンスをしていないのは問題である。日本語の仮訳がでなくてもアナウンスは必要である。
  • 漏出事故などでの在日米軍の判断の依拠はJEGSであり、現在どの基準が適用されているかは、私たちは知る必要がある。特に沖縄県民にとっては重要な情報である。それを放置していたのは問題であると考える。
  • このアナウンス方法については、環境省ではルール化はされていないとのことであった(環境省聞き取り 2016.9.16、以下同様)。

【2012年から2014年の変更点】

1.環境省 水・大気環境局総務課によると主な変更点は以下の4点であった。

(1)有害物質・有害廃棄物、化学物質36種を追加した。

英文 Appendix 1 付属資料 p216. Table AP1. T
化審法で反映されていないものが追加された。
*PFOS 追加 p.240 Table AP1.T4.
基準値が書かれていないのは、両国とも規制基準がないため。

2016-jegs-p230

(2)排水基準

これまでは水質汚濁防止法で規制されているものが反映されていたが、自治体の上乗せ部分が反映された。東京都の上乗せ部分が反映された。
英文 p68-70. Table C4.T7-13

(3)アスベスト取扱

詳細な規定を設定した
英文、p.187- Chapter 15 3.6.1~

(4)絶滅危惧種などの追加

英文 Chapter 13 Natural Resources and Endangered Species P168-
絶滅危惧種 29種 (p.168 Table C13.T.1)
特定外来種4種(p.175 Table C13.T3) 

2.変更点については、環境省としては文書の公開等については考えていないということであった。JEGSは米軍のものであるので日本政府として、新旧対照表などのようなものをつくる立場ではないとの見解であった。

3.JEGSは要旨部分(Executive Summary)も更新した部分がわかるような書き方をされていない。今回、環境省は「追加」部分を変更点としてあげているが、過去には騒音項目が削除されたこともあり、さらなる検証の必要がある。

Report 003 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか:沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

 

沖縄市サッカー場を沖縄県道23号沖縄北谷線(通称国体道路)側から望む、高架は沖縄自動車道、奥は嘉手納基地と基地内の小中学校。

 

IPP Report No.3 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか
沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年7月12日

IPPレポNo-3PDF版

報告の目的

 本報告は、2013年6月にドラム缶が発見され、汚染が発覚した旧嘉手納基地跡地、沖縄市サッカー場の汚染調査や浄化処理関係のこれまでの経費について報告し、その結果から、今後の行政への監視や政策検証に必要な事項について議論する材料を提供することが目的である。

 ドラム缶発見後、サッカー場の汚染は米軍基地由来のものと考えられ、沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県による調査が進められた。調査は、サッカー場全域、隣接した駐車場の調査に発展し、現在も進行中である。これまでに108本のドラム缶が発見され、複合汚染の実態が明らかになっている。

 The Informed-Public Project(IPP)では、国会議員、県議会議員、沖縄市議会議員の協力を得て、各機関の経費のデータを入手し、とりまとめた。調査や浄化作業はいまだ継続中であり、より詳細な調査が必要であるため、本レポートは暫定的な中間報告である。

この報告の意義については以下の3点がある。

1. 経費の全体像把握

 沖縄市サッカー場の汚染調査内容や汚染土壌などの処理については沖縄防衛局の発表時に報道がされてきたが、その経費に関しては、複数の行政機関が(沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県)対応していることもあり、まとまったデータが出されていなかった。本中間報告では、調査及び処理に関わる業務が継続中ではあるが、これまでの経費の全体像を明らかにすることができた。

2. 汚染発覚からの過程検証

 これまでも返還跡地における土壌汚染や汚染除去費用については国会の場や研究で、一部明らかにされてきたが[1]、調査や浄化作業の各過程でどの程度の費用がかかるか、どのような業者がどのような発注形態で業務を受注し、どこまでの業務を行うのか、といった詳細は明らかにされていなかった。本中間報告により、経費の面から汚染発覚後の過程を把握、検証することができる。そこから、行政は具体的にどのような説明責任が伴うかも明らかになった。

3. 各行政機関の政策評価

 沖縄市サッカー場の汚染発覚後、これまでの跡地調査にはない行政の動きがあった。例えば、沖縄市が調査の透明性を確保するために、国に対抗的調査をした調査体制をとったこと、また、サッカー場汚染発覚の翌年に沖縄県が国の一括交付金の3年事業で、環境政策課に基地環境特別対策室を設置したことなどである。本報告ではこの動きについても検証した。これは、今後、汚染発覚後の各行政機関の政策を検証、評価するための材料の提示となる。
 税金の用いられ方を監視する納税者としての立場から、日米地位協定のあり方を改めて検討する一つの材料として用いられることも、本報告の最終的な目的の一つであることを強調しておきたい。

 構成

報告の目的
ポイント
背景
Ⅰ 沖縄市サッカー場調査等経費について
  1.2015年3月までの支出・経費と2016年度日本政府計上予算
  2. 内訳
    ①沖縄防衛局
    ②沖縄市
    ③沖縄県
Ⅱ 沖縄県環境政策課基地特別対策室について:新規の米軍基地跡地政策として
Ⅲ 考察・提言
Ⅳ むすびに
【参考資料】

ポイント

  • 日米地位協定で米国側の原状回復の義務が問われていないために日本が負担する経費はわずか約1万4000㎡の土地で9億円以上に上る。

  • 沖縄市が実施した沖縄防衛局の対抗調査経費(クロスチェック代)は7100万円以上に上り市の財政負担となっている。あるべき調査体制の姿を示した沖縄市には、国や沖縄県の適切な支援措置が必要である。

  • 日本政府、沖縄県、沖縄市は多額の費用を伴う汚染調査や浄化に関する説明責任を認識し、意思決定過程の透明化に努め、同過程の検証が可能な体制を構築することが急務である。また、費用対効果分析についても第三者的立場から実施する必要がある。

  • 議会、市民の積極的な監視、関与が必要である。

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Report 002 “複合投棄”という跡地の現実:沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

yomitan_genbaIPPレポート No.2 【速報版】 “複合投棄”という跡地の現実
沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

河村 雅美(The Informed-Public Project 代表)
Dr. Masami Kawamura
2016年5月8日

IPPレポNo-2PDF版

2016年4月25日の琉球新報が報じたとおり[1]、読谷村補助飛行場跡地で土壌汚染が発覚し、2年間放置されたまま農地整備が進められていたことが筆者の沖縄県への情報公開請求で明らかになった。

沖縄県事業「平成20年県営畑地帯整備事業(読谷補助飛行場跡地)」で、2013年の不発弾調査中に廃棄物が発見され、沖縄県が土壌を調査した結果、調査地点から基準値を越えたダイオキシンと鉛が検出されていた。

今回、問題になったのはこの土壌汚染に対処する責任がどの機関にあるかが明確でないために、「たらい回し」となり対策が遅れ、結果的に2年間汚染土壌が放置されたことである。土地の所有者である読谷村が処理の責任があるとされ、的確な汚染範囲の確定がされずに、農地整備の事業が進められている。

読谷村は「所有者、米軍への提供者であった国の責任で原状回復してほしい」と、管理責任を問う形で防衛省や沖縄防衛局に、対応を求めている。一方、防衛省や沖縄防衛局は「米軍の行為に起因するものでない」と処理を拒否している。報道によれば、沖縄防衛局は「地元業者が廃材や車両置き場として使用し、焼却していた。土壌汚染除去などを防衛省が実施することは困難だ」と主張しているとのことである[2]。聞き取りによると、読谷村も、地元民がゴミを捨てていることは認めている[3]。当時、調査をした沖縄県も、汚染の状況を知りながら土地の所有者が廃棄物処理の責任者であると、読谷村に対処を預けたままである。

なぜこのような問題となるのか。

まず、これまでに返還された土地の汚染調査が不十分であったことがあげられる。2012年に成立した「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」(以下「跡地利用特措法」)以前は、跡地の全面調査は義務化されていない。

また、このような事態に対応する法や制度が不在であることもある。跡地利用特措法は、2012年以前に返還された土地には適用されない。この問題が解決されていないため、2013年の沖縄市サッカー場ドラム缶問題、2015年に公表された北谷町上勢頭第2区の宅地の土壌汚染問題も依拠法はなく、跡地利用特措法に準じる形で沖縄防衛局が対応している。

さらに米軍に起因する汚染であるかどうかで国の責任で処理するかどうかが判断されていることも問題である。沖縄市サッカー場、北谷町上勢頭第2地区は、汚染は米軍に起因するものとして判断され、沖縄防衛局が対応している。読谷村は米軍に起因するものではないと処理を拒否している。

本レポートではこの3つ目の問題に焦点をあてる。米軍基地跡地の汚染の問題は、読谷村のケースで防衛省が主張しているように、米軍起因であるかの「認定」問題として処理することができるのかといえば、そうではなく、より複雑な様相を呈している。

ここでは、沖縄の米軍基地跡地の特徴とは何なのか、関係機関はこれまで、どのように判断し、対処してきたかを示す。これをもとに、沖縄で行われるべく現実的な対応策について考察し、法整備の問題の解決を提言したい。


要約

  • 県内の基地跡地の汚染は米軍や民間(沖縄側)の投棄が混在しているという現実がある。
  • 返還されて時間が経過している土地で発覚した汚染に関する法整備が跡地利用特措法ではされていない。
  • 明らかになってきた沖縄の基地跡地の現実をふまえ、読谷村の問題を「米軍ゴミ認定問題」として扱うことは妥当でない。国はその理由で対応を拒否すべきでない。

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足下に迫る危険ー米軍による土壌汚染を考える

CkPQolaVEAEJRmL.jpg-large沖縄市サッカー場でドラム缶が発見されて今月13日で3年になります。汚染された土地とその住民に対する日米政府の対応、沖縄県・地元市町村の対応…そして市民はどう闘うのか?を多面的な視点から検証・検討します。

第1部 午後6時~
QABドキュメンタリー扉2016
 「枯葉剤を浴びた島2」
  – ドラム缶が語る終わらない戦争 – 上映

第2部 午後7時~
 緊急報告 河村雅美氏
 ジョン・ミッチェル氏

日 程 6月8日(水)午後6時~
会 場 キリスト教学院大学シャローム会館
資料代 500円(学生は無料)

【シンポジウム】 ビエケス島の米海軍基地閉鎖から学ぶ~基地返還と汚染除去~

uid000002_201605231205440f31f4e6日時:2016年6月3日金曜日午後6時半〜9時
場所:てんぶすホール(那覇市牧志3-2-10)
講演:Marie Cruzさん(ニューヨーク大学准教授)
報告:河村雅美さん(The Informed-Public Project)
パネルディスカッション:Marie Cruzさん、河村雅美さん、金高望弁護士
主催:沖縄弁護士会

Report 001 日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか

 13838597_1288061401234034_1255818670_o IPPレポート No.1【速報版】日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか
:PFOS汚染を事例にした沖縄県、沖縄防衛局、米軍間コミュニケーションの検証

2016年3月25日
河村 雅美(Dr. Masami Kawamura  The Informed-Public Project 代表)

IPPレポNo-1PDF版

ポイント

  • 沖縄防衛局は県企業局の要請を稚拙な英訳で米軍に送付している。稚拙な英文書簡は沖縄県が作成した書簡であると米軍に認識されている可能性もある。
  • 沖縄防衛局は沖縄県企業局の意思を正確に反映する文書を米軍に送っていない。沖縄防衛局の米軍への要請内容は、沖縄県企業局の米軍への要請よりも弱い要請になっていた。
  • 沖縄の自治体の意思を米軍に届ける日本政府の文書の位置づけが不明
  • 沖縄防衛局はこのような事態の経緯を説明すべきである。
  • 沖縄側から米軍への要請や抗議の方法は検討を要する。

 

本稿の目的

  本レポートでは、米軍基地被害に関する自治体、日本政府、米国間の文書がどのように交換されているかについて、2016年に県民に報告された嘉手納基地周辺の水源の有機フッ素化合物(PFOS)汚染の事例を用いて検証する。基地被害の問題において、このような文書の交換やコミュニケーションへの検証はこれまでほとんどなく、それゆえいわゆる「基地問題」において見落とされてきた部分の認識や、より具体的な対応策につながるものと考える。 続きを読む