北部訓練場返還跡地の「支障除去」成功アピール映像:情報開示請求で入手

The Informed-Public Project(IPP)は、米軍基地の返還跡地の問題も調査しています。

2016年12月に「過半」の4010haが返還された北部訓練場の返還跡地の問題も、限定的な「支障除去」の調査案の文書を入手し、杜撰で短い調査計画の問題を早くから指摘してきました。
また、北部訓練場と隣接する地域での世界自然遺産登録の問題についても、米軍基地ゆえの情報の不透明性や、環境省等が北部訓練場の問題に触れずに登録手続きを進めていこうとする欺瞞についても問題化してきました。

北部訓練場の返還跡地の支障除去は、その後、実質8ヶ月で実施され、そのまま2017年12月に跡地は引き渡されました。
しかし、支障除去の問題は、宮城秋乃さんが現地で調査をし、杜撰な状態を明らかにしていきます。
現在も多くの不発弾、空砲等が続けて発見されています。

また、土壌汚染についても名桜大学の田代豊教授が宮城さんの発見した廃棄物の土壌を分析し、DDTPCBなどの汚染の存在を指摘しています。行政ではなく市民や専門家が事実を明らかにしています。
一方、やんばるを含む世界自然遺産の推薦も、2018年5月にユネスコから登録延期の勧告を受け登録はなりませんでした。
現在、再挑戦をしていますが、上述の支障除去問題はまだ解決されていません。

IPPは、沖縄防衛局への開示請求文書でこの問題を追及していたところ、廃棄物調査の実施計画書で不思議な記述を見つけました。
調査の実施計画書ーつまりまだ調査がされていない段階ーの中に「引き渡し式典」の映像制作が実施される作業の中に入っていたのです。

そもそも調査自体にこのような作業が入りこんでいることも問題であるし、調査もしていないのに問題ない前提で映像制作が予定されているのもおかしな話です。
理由を沖縄防衛局に問い合わせると「仕上げの作業」という説明にもならない説明で答えていました。

ではどんな映像なのかと、映像の開示請求をかけてみました。
下に貼り付けてあるyoutube映像が入手した映像です。
この映像は北部訓練場の引き渡し式典で上映された映像で、「支障除去」がいかにうまくいったかをアピールする内容になっています。映像の中では沖縄防衛局の支障除去調査を監修した東京農工大学大学院細見正明教授が、防衛局に依頼されて専門家としてコメントし、支障除去措置についてのお墨付きを与えています。

映像が示した未来の森と、宮城さんや田代先生が示してきた現実は違いすぎます。

支障除去措置をとった防衛省、その問題には触れないようにしている環境省、そして日本政府が依拠してきた専門家の責任は、どう問われるのでしょうか。 

なお、この動画が情報開示請求の対象であることは、沖縄防衛局から細見教授に文書で伝えてあることも入手文書で確認しています。

沖縄本島中部の有機フッ素化合物(PFAS)汚染:米軍基地と「ごみ山」

沖縄本島中部のPFAS汚染:基地と「ごみ山」
基地以外のPFAS汚染源:「ごみ山」と呼ばれる産業廃棄物処分場

IPPの沖縄県への情報開示請求により、沖縄市池原の通称「ごみ山」と呼ばれる元倉敷環境の産業廃棄物処分場からと考えられるPFAS汚染(PFOA)が明らかになりました。
産業廃棄物処分場もPFASの汚染源の1つです。琉球新報沖縄タイムスで報道されました。

「ごみ山」とは何か。
産業廃棄物処理業・倉敷環境(現・倉敷)が、廃棄物処分場施設内で違法に高く廃棄物を積み上げていたため、その様相から「ごみ山」と呼ばれています。

歴史的経緯、汚染原因についてはまた別に記事を出したいと思います。
この処分場は米軍のごみも引き受けており、業者が不法投棄で営業許可を取り消された2017年には嘉手納基地内でごみが処理できなくなる事態にもなっていました。

この記事で伝えたいことは、嘉手納基地が由来とされるPFAS汚染(PFOSが主)と、産業廃棄処分場由来とされるPFAS汚染(PFOAが主)の場所が非常に近く、中部のこの地域に汚染が集中しているということです。 
また、米軍基地も嘉手納基地のみでなく、嘉手納弾薬庫、トリイ通信施設、キャンプ・シールズ、キャンプ・マクトリアスなど基地も密集していることもわかります。
この地域のPFAS汚染状況を、沖縄県の調査結果を重ねあわせ下記のマップにしました。

その後、沖縄タイムスのジョン・ミッチェルさんの調査報道により、元倉敷環境では、普天間基地の泡消火剤が搬入されていたことが明らかになっています。 

ただし、この図を見ると、比謝川(嘉手納基地由来と推測、PFOS>PFOA)と天願川(産業廃棄物処分場由来と推測、PFOA>PFOS)のPFAS汚染が異なっていることがわかります。必ずしも米軍基地の廃棄物のみが汚染源ではないと考えられます。
PFAS汚染のみでなく、ダイオキシン等も高濃度で検出されているので、包括的な調査、分析、対処が必要でしょう。

廃棄物問題について、業者、沖縄県、ひいては私たち県民がごみの問題を深刻に考えてこなかったかを考えさせる事態です。汚染を軍事基地由来と考えたい力学が働きがちであることについても、一度考えるべきであると思います。

しかし、この小さな脆弱な島で、米軍基地を抱え、そのごみも引き受け、水の安全が脅かされていることは事実です。
中部のこの地域が”Forever Chemical”と呼ばれる浄化の難しい有害物質で汚染され、これだけの負担がかかっていること、島が耐えうる負担を超えているという事実を、このマップで共有できればと思います。

琉球朝日放送(QAB)のニュースでも、この件についてインタビューを受けていますのでぜひご覧ください。

QAB 「米軍から消火剤142トン PFOS・PFOAの汚染」 (2019.7.12)

このPFAS汚染視覚化事業は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストのスポット助成事業により実施しています。

普天間基地周辺のPFAS汚染状況マップ更新

普天間基地周辺のPFAS汚染状況マップを更新しました

IPPは、汚染状況把握・理解のためのビジュアルエイドとして普天間基地周辺のPFAS汚染状況のマップを作成・更新してきました。県の調査が2019年4月に発表されており、遅くなりましたが、IPPのマップを更新しました。

普天間基地由来とされるPFAS(PFOS、PFOAの汚染)問題のこれまでの経緯については以下の記事を参考にしてください。
「普天間基地周りのPFOS/PFOA汚染 : 宜野湾市の当事者性を問う」(2018年10月22日)
「沖縄県による普天間基地周辺のPFAS(有機フッ素化合物)汚染調査に関する意見書」(2019年4月19日)

今回、マップで更新した情報は以下の2点です。

1)沖縄県2018年度冬季調査データ
2019年4月23日、沖縄県環境保全課は「平成30年度(2018年度)有機フッ素化合物環境中実態調査の冬季結果報告について」を発表しました。
今回の調査では、普天間基地周辺以外の新たに比謝川周辺、天願川でも調査を実施していますが、比謝川、天願川についてはまた別記事で触れます。
この結果を受け、データを更新しています。

2)西普天間返還跡地との関係を情報として追加
また、西普天間の返還跡地との関係をマップに情報として重ねました。
普天間基地周囲では最高濃度のPFAS検出がされているチュンナガーは、西普天間の跡地区域に位置しています。また、その付近は跡地計画の中で都市公園の区域にはいっています。これは西普天間返還跡地の水の汚染問題です。
昨年から既に宜野湾市議会でも玉城健一郎議員が質問していますが(2018年6月定例会)市の答弁は「西普天間住宅地区では、都市公園の整備計画において、国指定文化財のチュンナーガーを初めとして複数の湧水群を利用して園路整備等を検討している段階でございますが、これら湧水群からのPFOS、PFOAについての検出については、考慮しながら関係部署と調整をしてまいりたいと考えております。」というものでした。何を「考慮」して、どの部署となんの「調整」を何の目的でするのでしょうか。 
跡地利用特措法にはPFOS、PFOAはもちろん調査項目に入っていません。

以下、マップです。今回は、地下水の流水方向を地図にいれています。

このPFAS汚染視覚化事業は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストのスポット助成事業により実施しています。

 

PFOS/PFOAだけでないPFAS汚染1)中部河川の汚染データから

「嘉手納基地内および周囲のPFAS(有機フッ素化合物)汚染状況マップ」記事に続き、私たちの住む地域のPFAS汚染を把握するために、ビジュアルエイドを用いながら状況やデータを整理していきます。その中でPFASそのものの理解にもつなげていこうと思います。

これまでの沖縄県内のPFAS(有機フッ素化合物)汚染の把握状況:
 –嘉手納基地・普天間基地・廃棄物処理場周囲–

これまで報道されている沖縄県内のPFAS汚染を整理してみましょう。
現在知られている沖縄県内のPFAS汚染は以下の3例です。
1)嘉手納基地由来と考えられる汚染
沖縄県のPFAS(有機フッ素化合物)汚染問題は、2016年の沖縄県企業局の発表から
嘉手納基地の泡消火剤由来と推測される水源地への汚染から、県民に周知されることとなりました(IPP作成汚染マップ記事参照)。
2)普天間基地由来と考えられる汚染
上記の嘉手納基地由来の汚染の対応を受け、限定的ですが、環境部環境保全課が同年冬期から全県的な調査を実施し、普天間基地周囲のPFAS汚染が明らかになりました。
普天間基地の泡消火剤が原因と考えられています(こちらのIPP記事参照)
3)産業廃棄物処理場(沖縄市池原)由来と考えられる汚染
IPPの環境部環境整備課への情報開示請求等により、沖縄市池原の廃棄物処理場(旧倉敷環境)が原因と考えられる地下水等のPFOS、PFOA汚染が明らかになっています(この汚染については次の記事で紹介します)。

基地汚染だけでないPFAS汚染:県衛生研による全県的な河川調査からみる

では沖縄県内のPFAS汚染はその上記の地域のみなのでしょうか。実は、2017年に発表・公開されている沖縄県衛生環境研究所(以下、県衛生研)の沖縄県本島河川の有機フッ素化合物の調査結果が、そうではないことを示しています。
 調査報告はこちら:塩川敦司・玉城不二美「沖縄島の河川及び海域における有機フッ素化合物の環境汚染調査」『沖縄県衛生環境研究所所報』第51号(2017)  

この調査は2014年に実施され、河川と海域における1回のみの採水の限定的な調査ですが、沖縄河川における、ある程度の汚染実態が把握できたと著者は述べています。
県衛生研の地図とデータを状況がわかるようにIPPで以下のとおりまとめてみました。

これをみると、現在沖縄県が調査している上記3地域だけではない、また、米軍基地汚染だけではないPFAS汚染が発生しているということがわかります。
(各地点については県衛生研の調査報告書を参照してください)

© The Informed-Public Project & Naofumi Nakato

PFOS、PFOAだけでないPFAS汚染

また、この調査では、PFOS、PFOAも含めた10種類のPFAS(PFBA, PFPeA, PFHxA, PFHpA, PFOA, PFNA, PFBS, PFHxS, PFHpS, PFOS)を調査しています。
PFASはPFOS、PFOAだけではありません。PFASは5000以上の種類が存在するといわれています。PFOS、PFOAの危険性が指摘され、規制されるようになってから、その代替物も含めた多くの種類のPFASが市場に流通しています。

 以下の図でもわかるように、私たちが認識し、対処が始まっている有機フッ素化合物はごくわずかなのです。

県内に発生しているのがPFOS、PFOA汚染だけではないこともこのデータからわかります。

 IPPの意見書等にはPFASの種類や性質についての説明を何度か書いていますが、PFASは、Forever Chemical (永遠に残る化学物質)と呼ばれるほど、残留性の高い、浄化処理の難しい化学物質です。しかし、PFOS、PFOAというやっと認識されるようになってきた物質でさえも、米国でも日本でも水道水の規制項目でないために、対処が後手になって混乱を招いているのは皆さんもご存知のとおりです。

そしてPFOS、PFOAの代替物であるPFASの安全性についても保証されていません。むしろPFOSやPFOAとの類似性や、PFOSやPFOAの代替物であるPFHxS、PFBS、PFHxAの危険性が指摘されています。ちなみに代替物の1つであるPFHxS はストックホルム条約会議の下部会議で、管理に関する評価を検討する段階に進めることを決定されています。また、IPPが紹介した米国毒物・疾病登録局(ATSDR)の2018年レポートでは、最小リスクレベル(Minimal Risk Levels, MRLs)が算出された4種類のPFASの1つです。
このようにPFOS、PFOAという2種類の汚染だけでなく、その代替物としても用いられている他のPFASの毒性を踏まえ、PFASを同性質の部類(class)としてとらえることの必要性がPFAS汚染問題に取り組む専門家、NGO等から呼びかけられています。(この件に関してはまた別に書きたいと思います。とりあえずはIPP記事「沖縄県による普天間基地周辺のPFAS(有機フッ素化合物)汚染調査に関する意見書」中の”3. 沖縄県の調査報告の問題”を参照)

水源を含む中部河川のPFAS汚染:PFOS、PFOAだけでない

この観点から、中部河川のPFAS汚染を見てみます。衛生研のデータで中部河川の部分を抜き出したものが以下の図です。

© The Informed-Public Project & Naofumi Nakato

上記データからみると、中部河川のPFASの汚染状況が県内で際立っていることがわかります。また、水源を含む比謝川で、10種類全てのPFASが検出されていることもわかります

比謝川の地点2は、比謝川取水ポンプ場で北谷浄水場の水源です。高濃度のPFAS検出値を示している地点162は大工廻川下流の米軍基地の排水の地点です。明らかにこれらの河川は米軍基地の影響を受けている地点です。
泡消火剤に使用されていたPFOS、そしてその代替物であるPFAS類の検出からも、米軍基地の影響であることが推測されます。

現在、企業局はPFOS、PFOAに加え、昨年度からPFOSの代替物質である、上述したPFHxSの3種類のPFASのモニタリングをしています。PFOS、PFOAに関しては活性炭フィルターを用いた除去対処をしていますが、他のPFASについてはまだ対処は考えられていません(企業局はPFHxS にも活性炭フィルターが有効と主張)。

私達の水源はこのように非常に危うい状態にあるということがわかります。嘉手納基地の影響を受ける場所を水源として用い続けることに対して、市民団体や市民から疑問の声があがっています。行政はその声をきちんと緊急に受け止める必要があります。

PFAS汚染は化学企業や軍が、有害性を知りながら、長期間、その事実を隠蔽し、汚染を拡大、蓄積させてきました。北谷浄水場のこの水源はPFOS、PFOA以外の有機フッ素化合物のみでなく、どんな基地汚染がこの河川に滲出してきたのか、しているのか、将来にもその可能性があるのか、沖縄側はそれに対処しきれるのかわからない水源であることは、私たちは共通の認識として持つ必要があると思います。
水の安全を沖縄側でコントロールできない水源であり、規制物質となるまでは相当なタイムラグがあることもあわせて考える必要もあります。

実際に、PFASが沖縄の住民の血液から検出されたことが、NHKクローズアップ現代+「化学物質“水汚染” リスクとどう向き合うか」(2019年5月15日(水)放送)で報道されました。北谷浄水場から給水されている水道水を飲料に用いる宜野湾市の市民の血中から、PFOS、PFOA、PFHxS が検出され、汚染が水をとおして私たちの身体に残留することが証明され、環境汚染と健康の関係が明らかになっています(この調査に関しては評価をまた別に書く予定です)。

河川に思いをはせて

これまで地点とPFASの検出値という無機的なデータ、そして水源に焦点を絞って書いてきました。しかし、河川は生きているもの。比謝川は、人々の水源であり、魚が住み、水辺には鳥が休み、マングローブが繁る河川です。沖縄の人々はこの川と長く歴史をともにしてきました。この川に元々は自然界にない、人間活動によって排出され、蓄積される化学物質があるという事実を、比謝川の風景をみながらともに最後に考えてみたいと思い、今泉慎也さんの河口のヒルギ林の写真を置いてこの記事のむすびにします。

河口のヒルギ林にて 写真:今泉慎也

写真提供:
今泉真也 Instagram 

このPFAS汚染視覚化事業は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストのスポット助成事業により実施しています。