Report 006 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

防衛省提出資料 北部訓練場返還実施計画案(2016年10月18日)について
Report No.6 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

The Informed-Public Project 代表 河村雅美 

 The Informed-Public Projectは、北部訓練場過半の返還の実施計画案についての調査を聞き取りと文書で行った。

 調査により、返還予定地の所有の8割が林野庁であること、実施計画案は沖縄防衛局が沖縄県、東村、国頭村に送付したもの以外の文書が存在していることが明らかになり、重要な事実があるためにリリースした。

 このリリースは、発表後、以下の記事になった

 沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310

 沖縄タイムス「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482
  

 以下、リリース時のIPP見解である(2016年 11月14日 )。 

1.  地権者が林野庁であることによる懸念

 北部訓練場過半の返還は跡地利用特措法を根拠法として実施され、「返還実施計画」の手続きが同法の8条に基いて行われる。

 実施計画案に県知事は1ヶ月後、東村長、国頭村長は、2ヶ月後に意見を提出する。 県知事意見は、沖縄県の庁内で関係部署からの意見を集約して提出することになっているとのことであった(2016.10 沖縄県企画調整課)

 市町村は返還予定地の地権者からの意見を集約し、提出する。東村の地権者は林野庁、国頭村の地権者は50人程度であるとのことであった(2016.11.2 東村、国頭村)。国頭村は聞き取りの時点では地権者の意見を聞く方法も模索中であり、意見の決定過程も町議決定となるか、上意決済になるかも未定ということであった。

 農林水産省林野庁への聞き取りによると、東村、国頭村の返還予定地の大半の国有林の所有者は林野庁であるとのことであった(2016.11.10林野庁業務課藤平)。所有者の林野庁と沖縄防衛局の関係については、林野庁は「国」の方に属するため、意見書を東村に出すことはないとの見解を示した。

 また、返還後の利用計画は返還後の議論であるとしながらも、林業地として使うよりは、貴重な自然としての森林として利用することを考えているとのことであった。報道によれば東村と国頭村が部分返還の対象地をやんばる国立公園に早期に編入することを求めているということである(琉球新報、2016年10月18日)。

 ここで懸念されることは、米軍基地跡地を自然保護区にして汚染調査がおざなりになることである。以下の理由による。
 (1)国から国の返還であること
 (2)他国で相似の事例があり、問題として指摘されていること。

 例えばプエルト・リコのビエケスの海軍の演習場が18000エーカーの大半が内務省(the U.S. Department Interior)に移管され、野生生物保護区に指定された例がある。年間180日以上実弾訓練を実施していた地域であるにも関わらず、保護区として利用することにより、浄化の要件が表層的なものとなる、政治的な跡地利用の例である(追記:この件は別途問題化する)。

 おざなりになることで、安全・安心の確保ができないことは言うまでもない。米軍の北部訓練場の運用による汚染や環境破壊は当然予測されることである。米軍の責任を今後問う事例としても詳細なデータは必要である。それを把握することは、日米地位協定で免除されている米軍の「原状回復」の義務を今後果たさせる道筋をつけるためにも重要である。

2. 「支障除去措置」の問題

 メディアには公表していない沖縄防衛局の関係自治体への説明文書「北部訓練場の過半の返還について」を国会議員赤嶺政賢事務所から入手した。

 実施計画案にはない情報が入っており、以下のような計画が明らかになっている。

沖縄防衛局説明文書「北部訓練場の過半の返還について」

支障除去措置の進め方
 北部訓練場の返還予定地は「やんばる国立公園(仮称)」に隣接し、貴重な動植物及び天然記念物などが生息 しているため、環境に十分配慮した上で支障除去措置を実施する必要があることから、土壌汚染調査等を実施する際は、関係機関等と相談しながら進める必要がある。

支障除去措置の主な範囲

 支障除去措置の内容については、資料等調査及び概況調査の結果により決定するものであるが、現時点にお いて、支障除去措置を実施する必要があると考える主な範囲は以下のとおり。
①米軍車両の通行があった道路
②既存のヘリパッド及びその周辺
③土壌汚染等の蓋然性が高いと考えられる過去にヘリが墜落した場所

IPPが入手した 北部訓練場の過半の返還についてH28・10月 沖縄防衛局

 

 まず範囲が非常に限定的に考えられている、使用していた道路、ヘリパッドと事故の墜落場所ではこれまでの例からみても、十分ではない。資料等調査や概況調査の実施前に上記のような範囲を必要範囲とする根拠も不明である。

 沖縄防衛局の資料等調査も精度に疑念がある。西普天間の返還跡地でも資料等調査での予測が外れ、ドラム缶や鉛が検出された地域が「土壌汚染が少ないと認められる土地」から「土壌汚染のおそれが比較的多い区画」に変更された前例もある(「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)西普天間住宅地区内報告書2014年12月、沖縄防衛局)。

 米軍から提供される資料が不十分であるに加え、返還される土地は米軍の投棄物が発見される例が沖縄の返還跡地の特徴であるため、汚染の事前の性格づけも困難な状態である。

 範囲を限定した調査をすることは問題であるし、それゆえに40,100,000平方メートルの調査を含む支障除去を1-1年6ヶ月で実施するのは現実的でない。後ろを決めて短期間で調査や除去を実施することは、安全・安心の面で不安が持たれるものである。

 西普天間の51haの2-3年間という予定される支障除去期間よりも短く、貴重な自然環境の残る広大な訓練場の調査の知見や経験がこれまでないにも関わらず、このような短期間で終わらせることがなぜできるのか、説明がないのも併せて問題である。

 世界自然遺産にするための国立公園化ということを考えると、杜撰な調査処理では、国際基準のハードルを越えられないことになることも2村は考える必要がある。

以上。 IPPが入手した 北部訓練場返還実施計画素案(2016年10月18日)PDFデータ20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案01

20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案0220161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案03

 

※このレポートは、発表後、以下の記事になった
 
沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310
 
「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17)  http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482

 

Report 005 琉球・奄美の世界自然遺産に関する情報開示請求について

IPP Report No5 琉球・奄美の世界自然遺産に関する環境省への情報開示請求について

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年11月2日

 The Informed-Public Project は、琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する情報、特に隣接する米軍北部訓練場の問題などがどのように米国側に、および登録に関する国際機関に伝えられているか、情報開示請求制度を使って調査した。

 背景

 2016年9月15日に沖縄本島北部の国頭、東、大宜味3村にまたがる陸域と海域約1万6300ヘクタールが「やんばる国立公園」に指定された。これは世界自然遺産登録の条件である、「法的措置により、価値の保護・保全が十分担保されていること(完全性)」を満たすための日本政府の措置の一つである。

 しかし、世界自然遺産登録の過程におけるハードルはこれでクリアしたわけではない。登録への道筋の中で県民の懸念事項として挙げられている問題の一つは、国立公園に隣接している米軍北部訓練場の問題で生じる環境保全の問題という政治的な問題である。

 日本政府が米軍基地問題という政治的な問題を避けているのではないかという疑念は、市民団体から幾度か指摘されてきた。
 非公式な形では、2012年11月4日に行われた「世界自然遺産シンポジウムin那覇」でのシンポ後におけるIUCN(国際自然保護連合)レスリー・モロイ氏と市民とのやりとりがある。モロイ氏は高江のヘリパッド建設のことは承知していたが、沖縄に存在する米軍基地の全容も北部訓練場の位置や大きさも、その時点まで情報提供されていなかったことを筆者はその場で確認している。
http://okinawabd.ti-da.net/e4154949.html

 また、沖縄・生物多様性市民ネットワーク元共同代表吉川秀樹のやんばるの国立公園計画についての環境省へのパブリック・コメント(2016.3.27)では、同計画で「基本方針において『北部訓練場の問題をどうするのか』(訓練場内の自然環境のデータはどうなっているのか、訓練からの人々の生活環境への影響はどうなっているのか、国立公園設定に向けて米軍との調整はどうなっているのかなど)を明確に示す」ことを提案している[1]。吉川氏によると、具体的には、日本環境管理基準(JEGS)の運用について、バッファーゾーンの設定を想定しているとのことであった。

 一方、この問題は問題提起がされながらも、具体的に日本政府がどのように対応しているかを公けに追及することは、市民からもメディアからもされてこなかった。

 情報公開請求

 この件について、日本政府が現時点でどのように対応しているかについて調査が必要であると考え、3機関に対して、以下の情報開示請求を行った(2015年8月10日付)。いずれも2013年1月1日からの文書を請求した。

1.  環境省

  1. 国際自然保護連合(IUCN)とユネスコと環境省間の文書のやりとり
  2. 琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する会議の文書
  3. 環境省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

2. 防衛省

  1. 防衛省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

3. 沖縄防衛局

  1. 沖縄防衛局と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て
  2. (上記の追加として)沖縄防衛局と環境省那覇自然環境事務所間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て(2016年8月31日付)

開示結果

 結果の概要は以下のとおりであった。

1.  環境省

  i. 文書 2016年9月9日付
 開示された文書
(ア)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)
(イ)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)
 上記以外の環境省と国際自然保護連合及びユネスコ間で交わした文書については、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は交渉上不利益を被るおそれがあり、法第5条第3号に該当するため、不開示。

 ii. 文書1(2))2016年9月9日付
 開示(1)世界遺産条約関係省庁連絡会議(平成25年1月) 

iii. 文書1(3))2016年9月9日付
 文書不開示
 理由:開示請求のあった行政文書に該当する資料は、非公開を前提とし、作成されたものであること。
 従って、法律第5条第3号に掲げる不開示情報(公にすることにより、他国等との信頼関係が損なわれるおそれがある情報)に該当し、不開示とする。

 担当部署:環境省水・大気環境局総務課

2. 防衛省

  i. 文書 2016年9月15日
  文書不存在 

3. 沖縄防衛局

  i. 文書 2016年9月8日
  文書不存在
 ii. 文書 2016年9月30日
  文書不存在 

 防衛省と地方協力局である沖縄防衛局は文書不存在であった。吉川秀樹氏によると、ジュゴン保護キャンペーンセンターの要請で「米軍とのやりとりはしている」という発言が防衛省、沖縄防衛局のいずれかであったということであるが(日時などは未確認)、その発言と矛盾している。

 一方、環境省は文書の存在は認めているが、暫定一覧表以外は不開示、つまり米軍、IUCN,ユネスコとのやりとりは開示しない、という結果であった。加えて、非開示文書のリストも公開しないため、文書の存在を裏付けるものは何も提示されていないこととなる。2013年からの3年間、日本政府が何をしてきたかの確認も推測もできない開示結果であった。ちなみに、筆者の実施している開示請求では、外務省では、非開示でも開示請求対象行政文書一覧として開示・非開示の文書名は挙げ(例「第1018会日米合同委員会議事録」)、非開示の決定理由をそれぞれ明記している。 

 結果の意味すること

  • 市民への情報公開という意味で問題
     環境省が自然遺産のことで、米軍や国際機関とどのようなやりとりをしているのかについては県民の関心も高く、それについての情報へのアクセスを閉ざすことは問題である。存在する文書のリストも提示しないということは、情報公開の観点からも問題といえる。
  • ステークホルダーを無視した世界自然遺産登録
     世界自然遺産登録は地元との協議が重要であるが、米軍基地との関係を懸念するステークホルダーを、環境省は軽視、もしくは無視していることを意味する。このような情報開示の現状では説明責任を果たすことはできない。
  • 環境省の姿勢
     このように環境省が情報を出さない、ということは、これからも出さない、ということを意味する。
  • 地元融和策の現れ
     
    環境省のこのような消極的な姿勢は、世界自然登録遺産とやんばるの国立公園化は高江ヘリパッド建設を条件とした北部訓練場の過半の返還の政策推進のための地元融和策にすぎないことの現れではないかと考えざるを得ない。

 今後に向けて

  • IPPは環境省に行政不服審査法に基づき、環境大臣に対して審査請求を行った。 
  • 日米間の文書のやりとりが開示できないと主張するのであれば、その開示以外の方法で情報開示を求めていく必要が関係自治体(沖縄県、国頭村、東村)や市民の側も必要である。   
  • いずれ米軍に当事者として説明責任を果たさせる必要がある。 

[1]沖縄・生物多様性市民ネットワークブログ
http://okinawabd.ti-da.net/c200363.html(2016.3.29)

以下は開示された文書の一部。

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書130212TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2013/02/12 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2014/01/06  TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書 2014/01/06 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

The Informed-Public Project 代表 河村 雅美 
2016年9月16日

日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が2016年版に更新されている。

2016-jegs

【案内経緯】

2016年4月21日に日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が更新され、在日米軍のHPで発表されていた。
http://www.usfj.mil/Portals/80/Documents/Other/2016%20JEGS.pdf

 日本では、環境省のHPで在日米軍のHPのリンクをつけていたが、2016年版が出されていたことのアナウンス(報道発表)は特にされていなかった。
http://www.env.go.jp/air/info/usfj/index.html

防衛省による和訳は9月17日にHP上で発表された。
http://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/2016_jegs/index.html

【経緯の問題点】

  • 在日米軍から発表されていたのにも関わらず、日本政府が積極的にアナウンスをしていないのは問題である。日本語の仮訳がでなくてもアナウンスは必要である。
  • 漏出事故などでの在日米軍の判断の依拠はJEGSであり、現在どの基準が適用されているかは、私たちは知る必要がある。特に沖縄県民にとっては重要な情報である。それを放置していたのは問題であると考える。
  • このアナウンス方法については、環境省ではルール化はされていないとのことであった(環境省聞き取り 2016.9.16、以下同様)。

【2012年から2014年の変更点】

1.環境省 水・大気環境局総務課によると主な変更点は以下の4点であった。

(1)有害物質・有害廃棄物、化学物質36種を追加した。

英文 Appendix 1 付属資料 p216. Table AP1. T
化審法で反映されていないものが追加された。
*PFOS 追加 p.240 Table AP1.T4.
基準値が書かれていないのは、両国とも規制基準がないため。

2016-jegs-p230

(2)排水基準

これまでは水質汚濁防止法で規制されているものが反映されていたが、自治体の上乗せ部分が反映された。東京都の上乗せ部分が反映された。
英文 p68-70. Table C4.T7-13

(3)アスベスト取扱

詳細な規定を設定した
英文、p.187- Chapter 15 3.6.1~

(4)絶滅危惧種などの追加

英文 Chapter 13 Natural Resources and Endangered Species P168-
絶滅危惧種 29種 (p.168 Table C13.T.1)
特定外来種4種(p.175 Table C13.T3) 

2.変更点については、環境省としては文書の公開等については考えていないということであった。JEGSは米軍のものであるので日本政府として、新旧対照表などのようなものをつくる立場ではないとの見解であった。

3.JEGSは要旨部分(Executive Summary)も更新した部分がわかるような書き方をされていない。今回、環境省は「追加」部分を変更点としてあげているが、過去には騒音項目が削除されたこともあり、さらなる検証の必要がある。

Report 003 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか:沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

 

沖縄市サッカー場を沖縄県道23号沖縄北谷線(通称国体道路)側から望む、高架は沖縄自動車道、奥は嘉手納基地と基地内の小中学校。

 

IPP Report No.3 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか
沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年7月12日

IPPレポNo-3PDF版

報告の目的

 本報告は、2013年6月にドラム缶が発見され、汚染が発覚した旧嘉手納基地跡地、沖縄市サッカー場の汚染調査や浄化処理関係のこれまでの経費について報告し、その結果から、今後の行政への監視や政策検証に必要な事項について議論する材料を提供することが目的である。

 ドラム缶発見後、サッカー場の汚染は米軍基地由来のものと考えられ、沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県による調査が進められた。調査は、サッカー場全域、隣接した駐車場の調査に発展し、現在も進行中である。これまでに108本のドラム缶が発見され、複合汚染の実態が明らかになっている。

 The Informed-Public Project(IPP)では、国会議員、県議会議員、沖縄市議会議員の協力を得て、各機関の経費のデータを入手し、とりまとめた。調査や浄化作業はいまだ継続中であり、より詳細な調査が必要であるため、本レポートは暫定的な中間報告である。

この報告の意義については以下の3点がある。

1. 経費の全体像把握

 沖縄市サッカー場の汚染調査内容や汚染土壌などの処理については沖縄防衛局の発表時に報道がされてきたが、その経費に関しては、複数の行政機関が(沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県)対応していることもあり、まとまったデータが出されていなかった。本中間報告では、調査及び処理に関わる業務が継続中ではあるが、これまでの経費の全体像を明らかにすることができた。

2. 汚染発覚からの過程検証

 これまでも返還跡地における土壌汚染や汚染除去費用については国会の場や研究で、一部明らかにされてきたが[1]、調査や浄化作業の各過程でどの程度の費用がかかるか、どのような業者がどのような発注形態で業務を受注し、どこまでの業務を行うのか、といった詳細は明らかにされていなかった。本中間報告により、経費の面から汚染発覚後の過程を把握、検証することができる。そこから、行政は具体的にどのような説明責任が伴うかも明らかになった。

3. 各行政機関の政策評価

 沖縄市サッカー場の汚染発覚後、これまでの跡地調査にはない行政の動きがあった。例えば、沖縄市が調査の透明性を確保するために、国に対抗的調査をした調査体制をとったこと、また、サッカー場汚染発覚の翌年に沖縄県が国の一括交付金の3年事業で、環境政策課に基地環境特別対策室を設置したことなどである。本報告ではこの動きについても検証した。これは、今後、汚染発覚後の各行政機関の政策を検証、評価するための材料の提示となる。
 税金の用いられ方を監視する納税者としての立場から、日米地位協定のあり方を改めて検討する一つの材料として用いられることも、本報告の最終的な目的の一つであることを強調しておきたい。

 構成

報告の目的
ポイント
背景
Ⅰ 沖縄市サッカー場調査等経費について
  1.2015年3月までの支出・経費と2016年度日本政府計上予算
  2. 内訳
    ①沖縄防衛局
    ②沖縄市
    ③沖縄県
Ⅱ 沖縄県環境政策課基地特別対策室について:新規の米軍基地跡地政策として
Ⅲ 考察・提言
Ⅳ むすびに
【参考資料】

ポイント

  • 日米地位協定で米国側の原状回復の義務が問われていないために日本が負担する経費はわずか約1万4000㎡の土地で9億円以上に上る。

  • 沖縄市が実施した沖縄防衛局の対抗調査経費(クロスチェック代)は7100万円以上に上り市の財政負担となっている。あるべき調査体制の姿を示した沖縄市には、国や沖縄県の適切な支援措置が必要である。

  • 日本政府、沖縄県、沖縄市は多額の費用を伴う汚染調査や浄化に関する説明責任を認識し、意思決定過程の透明化に努め、同過程の検証が可能な体制を構築することが急務である。また、費用対効果分析についても第三者的立場から実施する必要がある。

  • 議会、市民の積極的な監視、関与が必要である。

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Report 002 “複合投棄”という跡地の現実:沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

yomitan_genbaIPPレポート No.2 【速報版】 “複合投棄”という跡地の現実
沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

河村 雅美(The Informed-Public Project 代表)
Dr. Masami Kawamura
2016年5月8日

IPPレポNo-2PDF版

2016年4月25日の琉球新報が報じたとおり[1]、読谷村補助飛行場跡地で土壌汚染が発覚し、2年間放置されたまま農地整備が進められていたことが筆者の沖縄県への情報公開請求で明らかになった。

沖縄県事業「平成20年県営畑地帯整備事業(読谷補助飛行場跡地)」で、2013年の不発弾調査中に廃棄物が発見され、沖縄県が土壌を調査した結果、調査地点から基準値を越えたダイオキシンと鉛が検出されていた。

今回、問題になったのはこの土壌汚染に対処する責任がどの機関にあるかが明確でないために、「たらい回し」となり対策が遅れ、結果的に2年間汚染土壌が放置されたことである。土地の所有者である読谷村が処理の責任があるとされ、的確な汚染範囲の確定がされずに、農地整備の事業が進められている。

読谷村は「所有者、米軍への提供者であった国の責任で原状回復してほしい」と、管理責任を問う形で防衛省や沖縄防衛局に、対応を求めている。一方、防衛省や沖縄防衛局は「米軍の行為に起因するものでない」と処理を拒否している。報道によれば、沖縄防衛局は「地元業者が廃材や車両置き場として使用し、焼却していた。土壌汚染除去などを防衛省が実施することは困難だ」と主張しているとのことである[2]。聞き取りによると、読谷村も、地元民がゴミを捨てていることは認めている[3]。当時、調査をした沖縄県も、汚染の状況を知りながら土地の所有者が廃棄物処理の責任者であると、読谷村に対処を預けたままである。

なぜこのような問題となるのか。

まず、これまでに返還された土地の汚染調査が不十分であったことがあげられる。2012年に成立した「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」(以下「跡地利用特措法」)以前は、跡地の全面調査は義務化されていない。

また、このような事態に対応する法や制度が不在であることもある。跡地利用特措法は、2012年以前に返還された土地には適用されない。この問題が解決されていないため、2013年の沖縄市サッカー場ドラム缶問題、2015年に公表された北谷町上勢頭第2区の宅地の土壌汚染問題も依拠法はなく、跡地利用特措法に準じる形で沖縄防衛局が対応している。

さらに米軍に起因する汚染であるかどうかで国の責任で処理するかどうかが判断されていることも問題である。沖縄市サッカー場、北谷町上勢頭第2地区は、汚染は米軍に起因するものとして判断され、沖縄防衛局が対応している。読谷村は米軍に起因するものではないと処理を拒否している。

本レポートではこの3つ目の問題に焦点をあてる。米軍基地跡地の汚染の問題は、読谷村のケースで防衛省が主張しているように、米軍起因であるかの「認定」問題として処理することができるのかといえば、そうではなく、より複雑な様相を呈している。

ここでは、沖縄の米軍基地跡地の特徴とは何なのか、関係機関はこれまで、どのように判断し、対処してきたかを示す。これをもとに、沖縄で行われるべく現実的な対応策について考察し、法整備の問題の解決を提言したい。


要約

  • 県内の基地跡地の汚染は米軍や民間(沖縄側)の投棄が混在しているという現実がある。
  • 返還されて時間が経過している土地で発覚した汚染に関する法整備が跡地利用特措法ではされていない。
  • 明らかになってきた沖縄の基地跡地の現実をふまえ、読谷村の問題を「米軍ゴミ認定問題」として扱うことは妥当でない。国はその理由で対応を拒否すべきでない。

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Report 001 日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか

 13838597_1288061401234034_1255818670_o IPPレポート No.1【速報版】日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか
:PFOS汚染を事例にした沖縄県、沖縄防衛局、米軍間コミュニケーションの検証

2016年3月25日
河村 雅美(Dr. Masami Kawamura  The Informed-Public Project 代表)

IPPレポNo-1PDF版

ポイント

  • 沖縄防衛局は県企業局の要請を稚拙な英訳で米軍に送付している。稚拙な英文書簡は沖縄県が作成した書簡であると米軍に認識されている可能性もある。
  • 沖縄防衛局は沖縄県企業局の意思を正確に反映する文書を米軍に送っていない。沖縄防衛局の米軍への要請内容は、沖縄県企業局の米軍への要請よりも弱い要請になっていた。
  • 沖縄の自治体の意思を米軍に届ける日本政府の文書の位置づけが不明
  • 沖縄防衛局はこのような事態の経緯を説明すべきである。
  • 沖縄側から米軍への要請や抗議の方法は検討を要する。

 

本稿の目的

  本レポートでは、米軍基地被害に関する自治体、日本政府、米国間の文書がどのように交換されているかについて、2016年に県民に報告された嘉手納基地周辺の水源の有機フッ素化合物(PFOS)汚染の事例を用いて検証する。基地被害の問題において、このような文書の交換やコミュニケーションへの検証はこれまでほとんどなく、それゆえいわゆる「基地問題」において見落とされてきた部分の認識や、より具体的な対応策につながるものと考える。 続きを読む