普天間基地周りのPFOS/PFOA汚染 : 宜野湾市の当事者性を問う

インフォームド・パブリック・プロジェクト(The Informed-Public Project, IPP)は、これまで米軍基地由来と考えられる有機フッ素化合物のPFOS/PFOA汚染の問題に取り組んできました。

普天間基地周辺から高濃度のPFOS/PFOA汚染が検出されています。普天間基地を抱える宜野湾市はこの問題の当事者ですが、調査主体でもなく、米軍との交渉主体でもないため、当事者意識を持ってこの問題に取り組んでいるとはいえない状態です。
そのため、元宜野湾市議会議員我如古盛英氏、元宜野湾市議会議員知念吉男氏から市議任期中に同問題の整理と調査を依頼され、IPPで意見書を作成しました。

意見書では、以下の点で宜野湾市は当事者であることを指摘しました。

1)宜野湾市の飲料水は水源が汚染されている北谷浄水場から供給されていること
2)生活・生産圏に普天間基地由来のPFOS/PFOA汚染が滲出していること
3) PFOS/PFOA問題は返還跡地の汚染問題であること

IPPからも10月21日づけで宜野湾市長にこの意見書を送付しました。

宜野湾市役所内の関係部署、および関係機関、市民等と情報共有し、宜野湾市としてこの問題にどう取り組むのか、オープンな議論を開始することを求めます。
以下、意見書です。

 



有機フッ素化合物汚染に関する問題の宜野湾市への意見書(暫定版)
– 当事者としての3つの問題 –

2018年9月26日
The Informed-Public Project 代表 河村雅美

※ この意見書は宜野湾市議会議員我如古盛英氏、宜野湾市議会議員知念吉男氏に依頼され作成した。

1. はじめに

沖縄県では嘉手納基地、普天間基地が汚染源と考えられる有機フッ素化合物(PFAS)の中のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(パーフルオロオクタン酸)の深刻な汚染が近年、確認されている。米軍の使用する泡消火剤が原因と考えられる汚染である。

嘉手納基地が汚染源と推測されるPFOS/PFOA汚染は、北谷浄水場の水源であるため、沖縄県企業局が対処している。2013年から、水源の河川等のPFOS/PFOAを定期的に計測し、安全な水を供給するために粒状活性炭フィルターを設置するなどの対応をしてきた[1]

上記の状況を受け、沖縄県環境部は2016年度から全県的な調査を実施し、高濃度のPFOS/PFOAが検出された普天間基地周辺の調査を年に2度実施するようになった。その調査において、普天間基地周囲の特定の湧水、地下水から高濃度のPFOS/PFOAが検出されていることが確認されている[2]

PFOS/PFOAが含まれている泡消火剤は使用が中止されているため、調査結果からは、両基地内での土壌汚染、地下水汚染の発生が推測される。そのため、具体的な汚染源の特定や、抜本的な汚染除去が必要であるが、本格的な立ち入り調査は、日米地位協定による米軍の裁量による許可が必要なため、沖縄防衛局も沖縄県も許可されていない。

他にも、沖縄県環境衛生研究所では、沖縄本島全域の河川と3海域で有機フッ素化合物18物質の調査を2014年に実施しており、PFOS、PFOA以外の有機フッ素化合物の汚染 も確認されている[3]

汚染問題の問題解決の目標は、汚染原因を特定して除去・浄化を行い、長期的な監視体制を整え、安全で安心な環境を取り戻していくことである。その道筋を切り開くためには、現状の正確な把握と、問題解決のための枠組みづくりが重要な作業となる。

今回の意見書では、まず宜野湾市を中心としたPFAS汚染の現状把握を試みた。
宜野湾市が、上記の基地を由来とするPFOS/PFOA汚染の3点で当事者であるといえる。

1) 宜野湾市の水道水が北谷浄水場から供給されているものであること。
2) 普天間基地が汚染源と推測される汚染が生活・生産圏で検出されていること。
3) 返還合意がされている普天間基地の返還跡地汚染の問題となること。


しかし、調査を実施している行政が、両事例とも沖縄県であること、沖縄防衛局が沖縄県と米軍との「調整」をしていることから、宜野湾市はこの問題についての当事者としての認識が薄く、受動的な姿勢が見受けられる。

当事者としての認識を行政として深め、この問題に主体的に宜野湾市が取り組むことが必要であると考える。

以下、現在入手できている情報から、事実関係を整理し、上記3点を軸とした宜野湾市へのPFOS/PFOA問題に関する提言を示す。


2. 有機フッ素化合物(PFAS)の状況:米国を中心として

1)  概論 ~「永遠に残る化学物質」(Forever Chemical) としての有機フッ素化合物

現在、沖縄で問題になっているPFOSとPFOAは炭素を中心につながった鎖のような物質にフッ素が結合した化学物質である有機フッ素化合物(PFAS)と総称される中の2種である。3500から5000種類のPFASが産業界で流通しており、現在も製品、環境中に新たなPFASが発見されていることが報告されている。

有機フッ素化合物は、安定な構造を持ち、環境中で分解されにくく、高い蓄積性を有する。そのため、「永遠に残る化学物質」(Forever Chemical)」と呼ばれており、除去、浄化等の対応が困難な物質である。

PFOS/PFOAは、撥水性、撥油性が高く、様々な用途で用いられている。家庭内では台所用品(テフロン製の鍋)、ピザの箱やファストフードの包装紙、ポップコーンの袋、防水処理のされた絨毯、衣類、家具などがある。また、産業界でもクロムメッキのための防塵、電子産業、採取率増加のために石油、石炭業界で使用されたり、油圧作動剤や燃料添加剤のような機能化学品としても用いられている。現在沖縄で問題になっているのは、米軍基地の泡消火剤である。

汚染源としては、米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency, 以下 EPA)の資料では、以下が挙げられている[4]

  • PFASあるいはPFAS製品の直接の放出
    • 訓練や緊急対応における泡消火剤の使用
    • 工場からの放出
  • クロムめっきやエッチング施設からの放出
  • 消費者およびPFASを含む工業製品からの廃棄物の埋め立てゴミや浸出
  • 下水施設の廃水、バイオ固形物(バイオソリッド、下水汚泥)の土壌施用

人の曝露経路としては、PFASで汚染されている公共飲料水や私有井戸の水の飲用、汚染された水から釣った魚の摂取、汚染された土や粉塵の偶発的吸引、PFASを含む材質で包装されえた食べ物の摂取、テフロン加工などにより付着しにくい台所用品や汚れにくい絨毯、防水性衣料の使用などが挙げられている。

PFOS/PFOAの汚染や健康被害については1970年代から認識され、報告されてきた[5]。産業界との癒着などから、その被害が長期間隠蔽されてきた事実については調査報道などで次々と暴かれている[6]。決して新しく認識されはじめた有害物質ではないことは多くの専門家、政策提言者から語られていることは、健康被害の面からも留意すべきことである。

PFOS/PFOAによる健康被害としては、妊娠期の胎児、あるいは乳児への影響(低体重、思春期早発、骨格変異)、がん(精巣、腎臓)、肝臓への影響(組織損傷)、免疫への影響、コレステロール増加などの影響が研究によって示されている。実際に米国では健康被害が報告され、健康調査も実施されている[7]

このような有害性が示されている一方、有機フッ素化合物の規制が厳しくないことが、世界的な課題となっている。PFOSは、国際条約である「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPS条約)」において、2009年5月の附属書B(製造、使用、輸出入を制限すべき物質)として掲載が決定された。日本国内ではその履行のために同年、「化学物質審査規制法(化審法)」が改正され、PFOSは第一種特定化学物質(原則として製造・輸入が禁止)に指定された。しかし代替が困難であるとの理由での例外的使用が認められているものがあり、日本の規制の抜け穴については、国外からの批判の声も聞こえている。PFOAは現在、条約にも掲載されておらず、化審法にも掲載されていないが、2018年9月イタリアのローマで開催されたストックホルム条約「残留性有機汚染物質検討委員会」の第14回会合(POPRC-14)で、条約上の廃絶対象物質(附属書A)への追加を締約国会議に勧告することが決定された[8]

現在、沖縄で問題になっている水道水質基準については、2009年に水道水に係る要検討項目が従来の40項目に加え、PFOS、PFOAを含む4項目が指定され、2010年の水質基準逐次改正検討会において検討が加えられたが、指針値の設定には至っていない。

2) 米国の状況~米国環境保護庁の生涯勧告値70ng/Lは危うい

上記のような国内の規制値がない状態で、沖縄におけるPFOS/PFOA汚染の対処において、沖縄県企業局、環境部では、EPAが2016年に設定したPFOSとPFOAの合計値70ng/Lという生涯勧告値(Drinking Water Health Advisories, HA)を目安として用いている[9]

しかし、米国では、EPAの生涯勧告値に法的強制力がないこと、EPAの70ng/Lという値の安全性について問われるようになったことから、実際にPFOS/PFOAの汚染の問題を抱える地域では、州で独自にEPAより厳しい値を設定する動きがある[10]

全米的な飲料水汚染の実態が把握され[11]、米軍基地による汚染問題としても問題化されるなど[12]、環境汚染、健康被害の深刻な問題として認識されるようになっていることがその背景にある[13]。また、PFOS/PFOAの代替物で使用されている有機フッ素化合物の危険性も射程に置く必要があることが警告されている。

そのような状況の中、米国の毒性物質・疾病登録庁(Agency for Toxic Substances and Disease Registry, 米国保健福祉省の一部局、以下ATSDR) は「パーフルオロアルキル基の毒性プロファイル:パブリック・コメントのための草案 (Toxicological Profile for Perfluoroalkyls: Draft for Public Comment)」(以下、ATSDRレポート)を2018年6月20日に発表した[14]

ATSDRレポートは、14種類のパーフルオロアルキル基と健康への影響についてのこれまでの研究を検証した852ページのレポートで、専門家によりまとめられ、同領域の専門家の検証(peer review)を経て公表されたものである。パブリック・コメントを経て、重大な変更が必要な場合は再度の専門家の検証を経て、最終版がリリースされる予定である[15]

同レポートは、これまで安全であると考えられていた値より、大幅に低い値が示されていることから、環境政策を後退させているトランプ政権下のホワイトハウス、EPA、国防総省が社会的反響を恐れ、公開を拒んでいた問題のレポートである[16]。有機フッ素化合物の汚染に取り組んできた団体、議員、メディアから早期の公開が強く求められ、公開に至った。

ATSDRレポートの中では、4種類の有機フッ素化合物の最小リスクレベル(Minimal Risk Levels, 以下、MRLs)が算出されており[17]、PFOS/PFOAのEPAの生涯勧告値の7-10倍以上低い数字が算出されていると報道されている[18]。それは、免疫への影響を考慮にいれたことによるものであることがATSDRのリリース資料でも述べられている。そのリリースでは、ATSDRのMRLsとEPAの生涯勧告値は目的や用いる状況が異なること、MRLsが規制値を規定するもではないことも述べられている[19]。しかし、専門家がATSDRのレポートの数値を、EPAの生涯勧告値飲料水のレベルに換算するとPFOAは11ppt, PFOSは7pptという数値が算出されており、これまでのEPAの生涯勧告値を用い続けることに専門家から警鐘が鳴らされている[20]

この状況を受けて、The Informed-Public Project(インフォームド・パブリック・プロジェクト、IPP)は、「有機フッ素化合物の米国毒物・疾病登録局(ATSDR)のレポートに関する要請・提言」を2018年7月8日に沖縄県に提出し、関係諸機関にも写しを送付した[21]。上記のような米国の状況を鑑みると、沖縄県は、現在のEPAの生涯勧告値の値に依拠し続けることを検討するべき時機にあると考えたからである。同提言書では、沖縄県は、連邦レベルや日本政府の対応を待つよりも、米国で実際に汚染問題が発生している自治体が採用する、現実的な政策や、各コミュニティの活動や政策提言[22]を参照として対策をたてていくことが妥当であり、最新の研究結果を採用していくことが必要であることを提言している。

その後、連邦議会では米国下院エネルギーおよび商業対策委員会(U.S.House of Representatives Committee on Energy and Commerce)の環境小委員会で2018年9月6日「環境中の有機フッ素化合物:現在生じている汚染と課題への対応のアップデート(”Perfluorinated Chemicals in the Environment: An Update on the Response to Contamination and Challenges Presented”)」のヒアリングが実施されるなど、連邦レベルの本格的な対応を求める動きがみられる[23]。汚染の影響があった州の独自の動きも注目されるところである一方、州レベルで科学者、特に毒物学者(Toxicologist)が不足していることから規制の動きが進まない問題も指摘されている[24]

3)基地汚染問題としてのPFOS/PFOA問題

米軍の有機フッ素化合物の問題に関しての対応について、ここでは簡単に述べておく。

米軍においては、海軍が1960年代後半からPFOS/PFOAを含む泡消火剤を開発し、1970年代初めから使用してきた。早くから環境に関しての懸念は示されていたが、産業界との癒着から使用が継続され、安全な製品への代替に至らない時期が長く続いた。安全性の懸念が浮上してきたのは1996年であったが、国防総省がPFOS/PFOAを新たな汚染物質(Emerging Contaminants)と指定し対応する指示書(Instruction)を出したのは、2009年になってからのことである[25]。その後の軍の対応については稿を新たに整理するが、2016年のEPAの生涯勧告値の改正(70ng/L)に伴い、国防総省は軍提供の飲料水調査を実施している。浄化、除去については「包括的環境対処補償責任法」(Comprehensive Environmental Response, Compensation and Liability Act、以下 CERCLA)に依拠し、PFOS/PFOAの流出がある可能性のある場所の予備的調査と場所の特定調査を実施している。2017年7月には、米国議会が、国防長官にPFOS/PFOAに関する軍事委員会へのブリーフィングを2017年9月30日までに行うよう指示し、2018年3月にその結果が公表されている[26]

また、上述の2018年9月の下院エネルギーおよび商業対策委員会のヒアリングでも国防総省は証言者としてこれまでの対応を述べている[27]

 


3. 宜野湾市の当事者としての3つの問題

ここからは、宜野湾市が沖縄のPFAS汚染の当事者として考えるべき問題を整理し、述べる。

現在、把握されているPFAS問題は、嘉手納基地が汚染源と考えられるものと、普天間基地が汚染源と考えられるものの2つがある。宜野湾市はどちらのケースからも影響を受けている自治体である。

1) 宜野湾市の飲料水は水源が汚染されている北谷浄水場から100%供給

嘉手納基地が汚染源と考えられるPFOS・PFOA汚染は県民の飲料水に影響を及ぼしている。北谷浄水場は北谷町、沖縄市、北中城村、中城村、宜野湾市、浦添市、那覇市に給水しているが、この北谷浄水場の水は、嘉手納基地が汚染源と考えられているPFOS/PFOAが検出される河川等を水源としており、前述のとおり現在、沖縄県企業局が対応している。宜野湾市の水道水は100%、北谷浄水場から給水されている[28]

【図1】

【図1】-宜野湾市の水はどこから-(宜野湾市水道局ホームページ)

沖縄県企業局は、2013年から、北谷浄水場の水源の河川等のPFOS/PFOAを計測し、安全な水を供給するために粒状活性炭フィルターを設置するなどの措置をとってきた。

しかし、2015年には北谷浄水場の浄水でEPAの現在の生涯勧告値を超える82ppt, 120pptを計測したこともある。宜野湾市は市民の安全な水の供給のために、米国の研究状況も踏まえ、沖縄県と連携し、安全基準値についての議論を始めることが必要であると考える。

嘉手納基地由来のPFAS汚染の詳細については稿を別にし、経緯なども整理したものを後日提示する。

2) 生活・生産圏に滲み出る普天間基地由来のPFOS/PFOA汚染

企業局の水源の調査状況と汚染実態の報告を受け、沖縄県環境部環境保全課は2016年度に県企業局による調査が実施されていない河川や空港・飛行場を中心に調査を実施した[29]。2016年12月での中間報告では、普天間基地周囲の湧水3箇所で高濃度のPFOS・PFASの検出(チュンナガー:1300ng/L、ヒヤカーガー:210ng/L、メンダカリヒージャーガー:710ng/L)が確認された。

その後実施した2016年冬季調査で、普天間飛行場周辺の6箇所を追加したところ、そのうち3箇所(青小堀川(畑内の配管より採水):570ng/L、伊佐ウフガー:190ng/L、フルチンガー(青小堀川上流):110ng/L)で高濃度のPFOS/PFOAが検出された。

  2017年度からは普天間飛行場周辺のみに特化した調査の実施となっている【表1】。

 

【表1】 沖縄県環境部有機フッ素化合物環境中実態調査の推移

【表1】 沖縄県環境部有機フッ素化合物環境中実態調査の推移

【表2】

【表2】

【図2】

【図2】

IPPが普天間飛行場との位置を示した地図に県のデータを落とし込むと以下のような図となる。

【図3】

【図3】普天間基地周辺のPFOS/PFOA汚染状況(湧き水・地下水)

1300pptのPFOS/PFOAが検出されたこともあるチュンナガーの湧水は、ポンプアップし、喜友名区において150世帯が簡易水道として家庭菜園等に使用している[31]。また、湧水は大山の農業(田芋栽培)に使用されており、生活圏、生産圏にPFAS汚染が発生しているという現実がデータから見いだせる。

3) 返還跡地汚染対策としてのPFOS/PFOA問題

普天間基地は、既に返還合意がされている基地であり、現在基地内で生じている汚染については、沖縄県も宜野湾市も、返還跡地の問題としても認識するべきである。

米国内でも、軍事基地汚染としてPFOS/PFOAは問題視されており、返還跡地汚染としても問題となっている。米国政府監査院(Government Accountability Office)の報告書でも、浄化にかかる時間とコストの問題、特に飛行場跡地の返還地について問題が指摘されている[32]

それをふまえ、沖縄防衛局は普天間飛行場の汚染の状態を認識しているのか、米国内で問題になっている状態を認識しているかについて、筆者は「駐留軍用地使用採決申請等事件(普天間飛行場)」の公開審理で求釈明をしてきた。2018年3月15日の求釈明では、返還合意がなされている普天間飛行場の汚染をどうするのか、放置するのか、という求釈明に対して、沖縄防衛局は、「“跡地利用特措法に基づき、関連法令に定める方法により、適切に実施」を繰り返すばかりであった。公開審理の場で「PFOSは跡地利用特措法で調査対象項目になっているか」を沖縄防衛局に聞くとその場で回答できず、後日、調査対象項目になっていないことを文書で回答してくるという状態であった。

これは、このままであれば防衛局は基地内で発生しているPFOS/PFOA汚染を放置し、返還されても対処しないことになる、という事実が明らかになったことを意味する。

これまで宜野湾市は、普天間飛行場のPFOS/PFOA汚染問題には言及せず、跡地利用政策のみに焦点を当てている[33]。沖縄県も普天間基地跡地に関して、「地下に流れる水の道」をコンセプトにした公園計画があり[34]、チュンナガーの所在地は都市公園を整備することで決定しているが、返還跡地の汚染対策としての本格的な取り組みはない。

普天間基地の枯れ葉剤埋設、除去に関する証言、米軍のトモダチ作戦の放射能問題、普天間基地内の漏出事故通報の調査報道[35]など、跡地の汚染問題が深刻であることを踏まえ、PFOS/PFOA問題も跡地汚染問題の1つとして認識すべき状況であるといえる。

4) 当事者意識はあるか

PFAS汚染は、蓄積性があり、永遠に残る化学物質と呼ばれるような処理の困難な有害物質であるにも関わらず、このようにPFOS/PFOAが含まれる湧水が放出されている状態に対して、沖縄県も宜野湾市もその深刻さの認識がない状態といえる。

一番高い値でPFOS/PFOAの合計値が検出されているチュンナガーについて、2017年宜野湾市議会12月定例会では簡易水道としての今後の利用について質問がでているが、汚染に関しての認識は議員側も答弁者の教育部長側にも示されていない[36]。その後、2018年の6月議会では、6月3日に宜野湾市ぎのわんセミナーハウスで実地された「名桜大学公開講座 沖縄の米軍基地による生活環境問題」[37]での講演を受け、複数の市議の質問がでたので問題理解の周知がされえていないこともある。2018年8月8日にIPPが行った宜野湾市選出で喜友名区出身の沖縄県議会議員新垣清涼氏への聞き取りでも、高濃度のPFOS/PFOAを含む水を簡易水道として用いることへの議論の必要性の問題は認識されていなかったようだった。

概して沖縄県、宜野湾市は生活・生産圏において蓄積性のある有害物質が発生していることに関して対策をとるべきであるという、当事者意識が低いという感触である。

 


4. 沖縄県の調査報告の問題

この当事者意識の薄さの原因として1つ挙げられるのが、沖縄県が「何が起きているかわからない」調査報告をしているからではないか、と考えられる。

沖縄県環境部の調査結果の報告は、調査目的や調査地点の必然性について明確に記述されておらず、報告の方法に問題がある。それについては、再度、評価することにするが、ここでは、沖縄県の調査評価に関して指摘しておく。沖縄県は、調査の結果に対して、以下のような評価をしている。

「また、平成28年度冬季調査同様、普天間飛行場周辺の主な表流水の測定を行っており、飛行場への流入側ではPFOS等の濃度は低いことが確認された」(下線、引用者)

(平成29年度PFOS・PFOA調査結果について(冬季結果)平成30年4月6日沖縄県環境部環境保全課)

この書き方では、汚染がどこに発生しているのか、その原因は何であるかの分析評価がわからない。

この検出結果は、普天間飛行場と汚染が検出された地点の位置関係と、普天間飛行場の周囲の水の流れを考慮に入れなければ、意味が理解できないからである。

高濃度のPFOS等が検出されているのは、飛行場からの流出側であるチュンナガー、ヒヤカーガー、メンダカリヒージャーガー、森の川、青小堀川、伊佐ウフガー、フルチンガーである【図3参照】。

なぜこの地点に高濃度の汚染が発生しているのか、普天間飛行場の周囲の水の流れから推測できる。宜野湾市基地政策部が作成した【図4】[38]が理解しやすい。

ここでは、「宜野湾市の地形は海側が低く、陸側の国道330号方面が高くなっています。そのため、宜野湾市に降った雨は排水路や地下を通って高い所から低い所(国号330号側から海の方)に向かって流れています。また、普天間飛行場周辺には、水を通しやすい琉球石灰岩大地が広がっており、地下にたくわえられた水は、湧水となって多くの場所から湧き出しています。大山の田いも畑では、この湧水がつかわれており、田いも畑を守るといったことからも湧水は大きな役割を果たしています。」という説明がされている。【図5】は沖縄県の普天間基地跡地計画に関する動画からのスクリーンショットで、同様のことが説明されている。

以上のデータを合わせれば、普天間飛行場周囲の地形や地質から、湧水や地下水から検出されている高濃度のPFOS/PFOAは、普天間基地からの汚染物質が湧水から検出されている可能性が高いということが沖縄県や宜野湾市の資料から理解することができる。

このような説明を、検出結果に加え、なぜPFOS/PFOAの検出値の高低が生じるのかを理解するような材料を提示し、実際に何が起きているのか、その理解を促すことが必要であろう。

【図4】みんなで考えよう普天間飛行場跡地のまちづくり-宜野湾市(平成20年)

【図4】みんなで考えよう普天間飛行場跡地のまちづくり-宜野湾市(平成20年) より

【図5】沖縄県公式チャンネル「普天間未来予想図VR編vol.3」(平成29年3月制作)

【図5】沖縄県公式チャンネル「普天間未来予想図VR編vol.3」(平成29年3月制作)

専門家による見解を加えれば、名桜大学の田代豊教授は、沖縄県の測定結果(2017年度夏季調査)を、宜野湾市自然環境調査の地下水流向図に貼り付け、【図6】を作成し、以下の分析を導きだしている。

  • 普天間飛行場の下流側(北西側)の地下水のうち70ng/Lを超えたことがないのは③のフンシンガーだけで、それも60ng/Lを超えている。これに対し、上流側(南東側)はどの地点も70ng/Lを超えたことがない(⑦ウブガー、⑯クマイーアブ、⑰ヌールガー)。
  • 普天間飛行場周辺から流出してくる地下水(⑫喜友名A⑬喜友名B)だけが、高濃度になっている。
  • 河川水(⑮⑱)などは低濃度なので、土壌および地下水汚染が生じていると見るべきである。
  • 普天間飛行場は、降水の大部分(蒸発分を除く)が地下水になるような地質にあり、主要な排水経路として地下水が重要である。
  • 表層土と河川水の汚染に比べて浄化が難しい土壌と地下水の汚染が発生している。
  • 普天間飛行場内にPFOS/PFOAの汚染源がある可能性が高いと見るのが自然である。

【図6】

【図6】田代豊氏(名桜大学)作成:沖縄県の測定結果(2017年度夏季調査)を、宜野湾市自然環境調査の地下水流向図に貼り付け)

沖縄県は、検出地と値、地形、水の流れの要素を提示し、普天間基地と汚染源の関係についての評価をするべきである。

このような事実を踏まえ、県は「飛行場への流入側ではPFOS等の濃度は低いことが確認された」という記述の仕方ではなく、「飛行場からの流出側の地点で高濃度のPFOS/PFOAが検出されたことが確認された」と評価し、その理由についての分析を説明していく必要がある。汚染が確認されている部分を起点としてその原因を記していくことが記述としては妥当な記述である。高濃度の地点について記さず、比較地点の低さを起点として結果を書くことは、情報の本質が伝わらず、結果の矮小化と解釈される可能性もある。調査結果を提示し、解釈・評価については沖縄県として科学的に適切である評価を市民にわかるように書くことが必要である。

宜野湾市は、普天間基地周辺のPFOS/PFOA汚染で何が実際に起きているか、について認識を深め、県の調査のあり方、評価の仕方、市民への報告の仕方についても能動的に読み、理解し、市民と共有していく姿勢が必要であると考える。

 

さらに結果を踏まえ、PFOS/PFOAの問題について、宜野湾市は、普天間基地内で生じている汚染が市民の生活空間に染み出している事案として対処する必要がある。

沖縄県は「PFOS等については国内では基準等がなく、直接飲料に用いない限りは人の健康に問題はないので、昨年度に引き続き宜野湾市及び自治会を通して地域住民に周知をお願いしているところ」と案内しているが、湧水地点で看板もないことを筆者は確認しており(喜友名泉の道路沿いの地点、メンダカリヒージャーガー、ヒヤカーガー)周知が徹底しているとはいえない。

また、汚染に関する情報収集が不十分である。1300pptのPFOS/PFOAが検出されたこともあるチュンナガーの湧水は、ポンプアップし、喜友名区において150世帯が簡易水道として家庭菜園等に使用されている[39]

汚染の全体像を把握するための調査もまだ方針が定まっていない。大山の湧水と農作物についても、2016年の中間報告で農作物の調査を1度実施しているが、検体数等の具体的なデータは公になっていない。この後のモニタリングに関する方針や土壌調査を含む包括的な調査方針も議論されているか不明である。

県は中間報告で「【PFOS・PFOAの農作物への影響について】ドイツヘッセン州立研究所で、PFOS・PFOAで汚染した土壌から農作物への移行について実験を行った研究があり、その中ではトウモロコシ、ジャガイモ、小麦などの可食部への移行はほとんど無かったとの報告となっているため、農作物への影響は無いと考えられる。”」と安全性を依拠する研究を紹介しているが、出典も記さず、筆者が調査し、環境保全部に論文名を確認しなければならなかった(”Carryover of Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctane Sulfonate (PFOS) from Soil to Plants”Stahl T1, Heyn J, Thiele H, Hüther J, Failing K, Georgii S, Brunn H. Archives of Environmental Contamination and Toxicology 57(2):289-98 · August 2009, であることを確認した)。依拠した論文の選択の妥当性や引用の正確性・妥当性についても議論する必要があると考える。

ちなみに、家庭菜園に関してもバーモント州健康局では、市民への案内で、5種のPFASが20pptを超える水は、庭の散水にも使用しないように呼びかけており、PFASが野菜に吸収される可能性についても述べている[40]。現在、調査研究で解明されていることと、されていないことを整理し、現地の状況と照らし合わせ、何が必要な作業であるかを議論し、政策を策定していくことが必要である。この点については、専門家の意見や米国ミシガン州の例も引き議論の材料を提示していきたい。

 


5. 米軍との交渉状況:防衛局の「仲介」とずさんな回答

普天間基地周辺のPFOS/PFOA汚染問題において、抜本的な解決策のためには日本政府と沖縄県、関係市町村、米軍との交渉が重要である。

環境保全課の調査結果を踏まえ、県環境部環境政策課基地環境特別対策室が沖縄防衛局に米軍との面会等を要求し、沖縄県から沖縄防衛局への要請文書(2017年1月27日)、沖縄防衛局から沖縄県への回答(2017年2月27日)の文書のやりとり[41]をしているが、その交渉の実はとれていなかった。

沖縄防衛局と米軍がどのようなやりとりをしているのか、沖縄防衛局に情報開示請求をすると、米軍がずさんな回答をしており、沖縄防衛局がその回答を丁寧な内容に「翻訳」して、沖縄県に伝えていることがIPPの調べでわかった。

米軍からの沖縄防衛局への回答

米軍は、「PFOSを含む泡消火剤は規制された物質ではないので」をすべての理由にし、履歴を残す必要も、県と会合を持つ必要もないという雑な回答を沖縄防衛局にメールの添付文書で送付していた。この回答は上述の「基地汚染問題としてのPFOS/PFOA問題」で説明したとおり、国防総省の方針を反映しているものではない。

この調査は県内紙2紙で大きく報道され[42]、SNSで英語で拡散したところ、PFASの米国の活動家のグループで大きな反響があった。

米軍が緊張感のない、いい加減な対応をしているのは、日本政府、沖縄県の情報収集能力や交渉力をみくびっていることに大きく起因していると考えられる。

沖縄県の調査結果も英訳して沖縄防衛局を通じて送付していたが、それは普天間基地との関係を曖昧にした上述の「飛行場への流入側ではPFOS等の濃度は低いことが確認された」という評価をそのまま英訳したものであった。そのような文書を送っても、交渉のスタート地点にも立てないのは当然であろう。米軍に通用する文書、交渉についての課題についても後日、嘉手納基地の汚染への対応も含め論じることとしたい。

 


6.  提言

上記の事実を踏まえ、宜野湾市には以下の提言をする。

  1. 宜野湾市の水道水が北谷浄水場から供給されているものであることを踏まえ、PFAS汚染についての情報収集を行い、EPAの生涯勧告値の基準の見直しについて、沖縄県や他の市町村とともに議論を始めること。
  2. 普天間飛行場が汚染源と推測される汚染が生活・生産圏で検出されていることを踏まえ、汚染範囲の確定も含めた包括的な実態調査の実施について、専門家や市民が参加する議論を始めること。
  3. 返還合意がされている普天間飛行場の返還跡地汚染の問題としての枠組みで有機フッ素化合物汚染の問題をとらえ、長期的・包括的な普天間飛行場跡地汚染問題に取り組むこと。

以上。

この件に関する問い合わせ先:
The Informed-Public Project代表
河村 雅美 博士(社会学) director@ipp.okinawa 
ウェブサイト:http://ipp.okinawa/

意見書のPDFはこちら
宜野湾市PFAS問題意見書暫定版PDF

【脚注】

[1]沖縄県企業局HP「企業局における有機フッ素化合物の検出状況について」 https://www.eb.pref.okinawa.jp/opeb/309/619  (2018年9月22日アクセス)。

[2]沖縄県環境保全部HPで公表されている。最新版は「平成29年度有機フッ素化合物環境中実態調査の冬季結果報告について」http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/hozen/mizu_tsuchi/water/pfos-pfoa_h29-winter-result.html (2018年7月5日アクセス)。

[3]沖縄県環境衛生研究所HPで公表されている。塩川敦司・玉城不二美「沖縄島の河川及び海域における有機フッ素化合物の環境汚染調査」『沖縄県衛生環境研究所所報』第51号(2017)http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/hoken/eiken/syoho/documents/51-p33-48.pdf (2018年7月5日アクセス)。

[4] EPA Activities on Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS), EPA Briefing for House Committee on Energy & Commerce(June 6, 2018) https://docs.house.gov/meetings/IF/IF18/20180906/108649/HHRG-115-IF18-20180906-SD012.pdf     (2018年9 月22 日アクセス)。

[5] 井田徹治『有害化学物質の話:農薬からプラスチックまで』(PHPサイエンスワールド新書、2013年)pp187-199.

[6] Heather Mongilio, ”Hidden studies from decades ago could have curbed PFAS problem: Scientist ”Environmental Health News, Jul 31, 2018. https://www.ehn.org/hidden-studies-from-decades-ago-could-have-curbed-pfas-problem-2591289696.html (2018年9 月22 日アクセス)。安間武(化学物質問題市民研究会)による翻訳がある。 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_180731_Hidden_studies_from_decades_ago_could_have_curbed_PFAS_problem.html(掲載日:2018年9月5日)

[7]血液調査や健康調査については、元ピーズ空軍基地の泡消火剤で飲料水が汚染されたニューハンプシャーの調査が参考になる。Agency for Toxic Substances and Disease Registry, “Feasibility Assessment for Epidemiological Studies at Pease International Tradeport, Portsmouth, New Hampshire, November 2017. https://www.atsdr.cdc.gov/sites/pease/documents/Pease_Feasibility_Assessment_November-2017_508.pdf (2018年7月3日アクセス); State of New Hampshire, Department of Health and Human Services Division of Public Health Services, “Pease PFC Blood Testing Program: April 2015-October 2015”, June 16, 2016,  https://www.dhhs.nh.gov/dphs/documents/pease-pfc-blood-testing.pdf ( 2018年7月3日アクセス)。

[8]Secretariat of the Basel, Rotterdam and Stockholm Conventions, ”Two more toxic chemicals recommended to be eliminated as UN scientific committee paves way for ban on widely-used PFOA September 21, 2018 (2018年9月25日アクセス)。 http://www.brsmeas.org/Implementation/MediaResources/PressReleases/POPRC14PressReleases/tabid/7685/language/en-US/Default.aspx 経済産業省「ストックホルム条約残留性有機汚染物質検討委員会第14回会合(POPRC14)が開催されました」http://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180926002/20180926002.html?from=mj(2018年9月26日) (2018年9 月26 日アクセス)。
The Earth Negotiations Bulletin, “14th Meeting of the Persistent Organic Pollutants Review Committee (POPRC-14) to the Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants (POPs”) http://enb.iisd.org/chemical/pops/poprc14/http://enb.iisd.org/chemical/pops/poprc14/  (2018年9月25日アクセス)。

[9] EPAのPFOS/PFOAを含むペルフルオロアルキル化合物(PFAS)についての政策については”Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)”を参照。https://www.epa.gov/pfas (2018年7月5日アクセス)。環境省は以下のファクトシートを参照。「国内等の動向について(PFOS)」 https://www.env.go.jp/council/09water/y095-13/mat07_2.pdf 「[18]ペルフルオロオクタン酸及びその塩」(PFOA)。 https://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/pdf/chpt1/1-2-2-18.pdf(2018年7月5日アクセス)。

[10] 例えば、バーモント州はPFOA、PFOSを含む5種類のペルフルオロアルキル化合物(PFAS)の合計値が20pptを超えないことを推奨している。Vermont Department of Health, “Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Drinking Water.” http://www.healthvermont.gov/environment/drinking-water/perfluoroalkyl-and-polyfluoroalkyl-substances-pfas-drinking-water(2018年7月5日アクセス)。ニュージャージー州は最大許容濃度(Maximum Contaminant Level, MCL)としてPFOAを14ppt、PFNAを13ppt に設定する案を策定。State of New Jersey, Department of Environmental Protection, News Release,” Christie Administration Takes Action to Enhance Protection of New Jersey’s Drinking Water”, November 1, 2017, https://www.nj.gov/dep/newsrel/2017/17_0104.htm (2018年7月5日アクセス)。ニューハンプシャーはPFOS、PFOAの地下水の基準を設定している。New Hampshire Department of Environmental Services Release, “NHDES Establishes Ambient Groundwater Quality Standard for Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctane Sulfonate(PFOS)”, May 31, 2016, https://www.des.nh.gov/media/pr/2016/20160531-pfoa-standard.htm (2018年7月5日アクセス)。
米国のNGO、National Resources Defense Council (NRDC)は、複数の汚染地域を抱えるニューヨーク州の健康部委員会への要望書(”Re: Setting a Maximum Contaminant Level for Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctanesulfonic Acid (PFOS)”)を提出し、PFOSとPFOAの合計値を4-10pptに設定することを推奨している。NRDC Releases Report on PFOA, Urging Prompt Regulation, February 27, 2018, https://www.nrdc.org/experts/kimberly-ong/nrdc-releases-report-pfoa-urging-prompt-regulation(2018年7月5日アクセス)。

[11] Xindi C. Hu et al., *Detection of Poly- and Perfluoroalkyl Substances (PFASs) in U.S. Drinking Water Linked to Industrial Sites, Military Fire Training Areas, and Wastewater Treatment Plants”  Environ. Sci. Technol. Lett., 3, 10, 344-350, (2016), https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.estlett.6b00260  (2018年7月5日アクセス) 。有機フッ素化合物の問題に取り組む環境団体Environment Working Groupによる米国の飲料水汚染の状態を示したインタラクティブマップ等の記事も参照されたい。”Mapping a Contamination Crisis: PFCs Pollute Tap Water for 15 Million People, Dozens of Industrial Sites”, June 8, 2017, https://www.ewg.org/research/mapping-contamination-crisis#.WzGcMqf7SUk  (2018年7月5日アクセス) 。

[12] 米軍基地由来のPFOS/PFOA汚染に関しては別途情報をまとめる予定である。ここでは参考としてTara Copp, ”DoD: At least 126 bases report water contaminants linked to cancer, birth defects”, Military Times, April 26, 2018, https://www.militarytimes.com/news/your-military/2018/04/26/dod-126-bases-report-water-contaminants-harmful-to-infant-development-tied-to-cancers/  (2018年7月5日アクセス)。

[13] 例えばPFOA汚染被害を起こしたデュポンへの70000人の集団訴訟に勝訴したRob Billot 弁護士の記事を参照。Nathaniel Rich, ”The Lawyer Who Became DuPont’s Worst Nightmare”, The New York Times, January 6, 2016, https://www.nytimes.com/2016/01/10/magazine/the-lawyer-who-became-duponts-worst-nightmare.html  (2018年7月5日アクセス)。

[14] Agency for Toxic Substances and Disease Registry ”Toxicological Profile for Perfluoroalkyls
Draft for Public Comment”. https://www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp.asp?id=1117&tid=237 (2018年7月5日アクセス)。

[15]ATSDR ”PFAs Toxicological Profile Key messages June, 2018”  https://www.atsdr.cdc.gov/docs/PFAS_Public_KeyMessages_June20_Final-508.pdf (2018年7月6日アクセス)。

[16] この事実はPoliticoの調査報道により明らかになった。Annie Snider, “White House, EPA headed off chemical pollution study”, Politico, May 14, 2018, (https://www.politico.com/story/2018/05/14/emails-white-house-interfered-with-science-study-536950). (2018年7月5日アクセス)。

[17] PFOS・PFOAの他に、PFHxS、PFNAのMRLsが挙げられている。

[18] Ellen Knickmeyer, “Report finds industrial chemicals more toxic than thought”, AP News, Jun. 20, 2018, https://apnews.com/54e8af9f5bb04c3084eff98f674cf6f5 (2018年7月5日アクセス), Stephanie Ebbs and DR. Karine Tawagi, “Threshold for harmful chemicals in drinking water lower than thought: Study”, ABC News, June 21, 2018, https://abcnews.go.com/Politics/threshold-harmful-chemicals-drinking-water-lower-thought-study/story?id=56029597 (2018年7月5日アクセス)。

[19] ATSDR”PFAs Toxicological Profile Key messages June 2018”, https://www.atsdr.cdc.gov/docs/PFAS_Public_KeyMessages_June20_Final-508.pdf (2018年7月6日アクセス)

[20] Silent Spring Instituteの研究者Laurel Schaiderにより算出。Dr.Schaiderは注8のXindi C.Hu論文の共著者である。Cheryl Hogue, “U.S. report proposes lower safe level for perfluorochemical exposure: ATSDR daily dose numbers for PFOS and PFOA are one-tenth those of EPA”, Chemical & Engineering News, June 22, 2018 | Vol.96, Issue 26, https://cen.acs.org/environment/persistent-pollutants/US-report-proposes-lower-safe/96/i26, (2018年7月6日アクセス); Garret Ellison, “Blocked report drops PFAS safety level into single digits”, Mlive, June 21, https://www.mlive.com/news/index.ssf/2018/06/atsdr_pfas_toxprofiles_study.html (2018年7月5日アクセス); Evan Bevins, “Brooks: PFAS advisory levels must drop: Doctor from C8 study pleased with release of federal report”, News and Sentinel, June 22, 2018. http://www.newsandsentinel.com/news/local-news/2018/06/brooks-pfas-advisory-levels-must-drop/(2018年7月5日アクセス)。

[21]「有機フッ素化合物の米国毒物・疾病登録局(ATSDR)のレポートに関する要請・提言」 http://ipp.okinawa/2018/07/15/requests-and-recommendations-on-reports-of-atsdr/

[22] PFAS問題に取り組むグループのネットワークNational PFAS Contamination Coalitionのウェブサイト参照。 https://pfasproject.net//(2018年7月5日アクセス)。

[23] The Committee on Energy and Commerce, HEARING ”Perfluorinated Chemicals in the Environment: An Update on the Response to Contamination and Challenges Presented”,  https://energycommerce.house.gov/hearings/perfluorinated-chemicals-in-the-environment-an-update-on-the-response-to-contamination-and-challenges-presented/ (2018年9月19日アクセス)。

[24]Kyle Bagenstose, “State effort to develop PFOA standard stalled”, The Intelligencer, Aug 25, 2018 http://www.theintell.com/news/20180825/state-effort-to-develop-pfoa-standard-stalled, (2018年9月19日アクセス)。

[25]Department of Defense Instruction, Number 4715.18(June 11, 2009) http://www.esd.whs.mil/Portals/54/Documents/DD/issuances/dodi/471518p.pdf (2018年9月22日アクセス)。

[26] Maureen Sullivan, Deputy Assistant Secretary of Defense(Environment, Safety & Occupational Health) “Addressing Perfluorooctane Sulfonate (PFOS)and Perfluorooctanoic Acid (PFOA)” EPA PFAS Summit, May 2018. https://www.epa.gov/sites/production/files/201805/documents/dod_presentation_epa_summit_pfos_pfoa_may2018_final.pptxx_.pdf   (2018年9月22日アクセス)。

[27]Maureen Sullivan, Deputy Assistant Secretary of Defense(Environment, Safety & Occupational Health) “のWitness Statement. https://docs.house.gov/meetings/IF/IF18/20180906/108649/HHRG-115-IF18-WstateSullivanM-0180906.pdf (2018年9月22日アクセス)。

[28]宜野湾市水道局「宜野湾市の水はどこから-」http://www.city.ginowan.okinawa.jp/pageRedirect.php?url=/2556/2561/2728/28222/28224/29088.html (2018年9月22日アクセス)。

[29]沖縄県環境部環境保全課「沖縄県内における有機フッ素化合物環境中実態調査結果について(中間報告)」(平成28年12月28日) http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/hozen/mizu_tsuchi/water/documents/tyuukannhoukoku.pdf

[30] 沖縄県環境保全課「平成29年度有機フッ素化合物環境中実態調査の冬季結果報告について」http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/hozen/mizu_tsuchi/water/pfos-pfoa_h29-winter-result.html (2018年9月22日アクセス)。

[31] 沖縄県議会議員新垣清涼氏への聞き取りによる。

[32] United States Government Accountability Office, “Military Base Realignments and Closures: DOD Has Improved Environmental Cleanup Reporting but Should Obtain and Share More Information”, GAO-17-151, published: Jan 19, 2017. publicly Released: Jan 19, 2017.https://www.gao.gov/products/GAO-17-151. (2018年9月23日アクセス)。

[33] 宜野湾市「普天間飛行場跡地未来予想図」http://www.pref.okinawa.jp/futenma-mirai/index.html (2018年9月22日アクセス)。

[34] 沖縄県公式チャンネル「普天間未来予想図VR編vol.3」(平成29年3月制作)  https://www.youtube.com/watch?v=yiilzLbAO3A&t=195s (2018年7月5日アクセス)。

[35] ジョン・ミッチェル(阿部 小涼 翻訳)『追跡・沖縄の枯れ葉剤』(高文研、 2014年)、ジョン・ミッチェル(阿部 小涼 翻訳)『追跡 日米地位協定と基地公害:「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて』(岩波書店、2018年)等を参照。

[36] 「喜友名にあるチュンナーガーの簡易水道としての今後の利用について」知念秀明議員)(『ぎのわん市議会だより』第106号、p8、平成30年3月8日)。

[37] The Informed-Public Project「6月3日 公開講座 市民が主体となる沖縄の環境調査『沖縄の米軍基地による生活環境問題』」http://ipp.okinawa/2018/05/13/open-lecture20180603/

[38] 宜野湾市『「みんなで考えよう」普天間飛行場跡地のまちづくり~普天間飛行場跡地利用に関わる学習テキスト』(平成20年3月), p16 http://www.city.ginowan.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/tekisuto3.pdf (2018年9月22日アクセス) 。

[39] 沖縄県議会議員新垣清涼氏への聞き取りによる。

[40] 注10に同じ。

[41]日本政府とのやりとりの文書は環境政策課のHPで公表されている。「宜野湾市湧水において検出された有機フッ素化合物の対策等についての沖縄防衛局からの回答」http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/kichikankyo/ginowan.html (2018年7月5日アクセス)。

[42] 「防衛局、PFOS検出で 米軍回答弱め県に伝達」(2018年8月25日、琉球新報)、「県面会要請、米軍が拒否、17年1月普天間周辺汚染物質で」(2018年8月26日、沖縄タイムス)。

 

Report 004 検証:2013年HH60墜落〜日本政府は米軍飛行再開に「理解」

 2013年HH60墜落時の日本政府の文書についての調査をアップします。沖縄では2017年10月11日、CH53E大型ヘリが沖縄島北部、東村高江に墜落、炎上しました。その後、米軍は、具体的な事故原因、再発防止策を明らかにしないまま、地元の意思に反し、18日に飛行を再開することを17日に発表しました。

在沖海兵隊第3海兵遠征軍リリース
Media Release: 17-022 CH-53E resuming normal flight operations
October 17, 2017

 米軍機事故の後に、沖縄側からは、必ず「原因究明がなされるまで同機種の飛行を中止する」という要請がされ、それを無視する形で飛行が再開されるというパターンが続きます。今回のCH53Eでも同様に強行的に飛行が再開されました。

 しかし、その裏で何が行われていたのか、IPPの調査では過去の事故の1つの文書に着目しました。これは過去の1例の1文書に過ぎないかもしれませんが、このパターンが繰り返されていた可能性についても否定できません。

 この調査は大きく報道されましたが、その後に沖縄県などが何か行動を起こしたかどうかは確認していません。この状態を放任している可能性も大きいでしょう。

 この調査については、情報公開法を駆使した調査報道を展開する毎日新聞の日下部聡記者が、ロイタージャーナリズム研究所でのフェローとして書かれたリサーチペーパーの中で情報公開法を用いた調査の一例として挙げてくださいました。 

Reuters Institute Fellowship Paper University of Oxford
”Freedom of Information Legislation and Application: Japan and the UK”
By Satoshi Kusakabe

以下、レポートです。

 


Report 004 検証:2013年HH60墜落〜日本政府は米軍飛行再開に「理解」

2017年10月23日
The Informed-Public Project 代表 河村雅美 

 2016年9月22日、アメリカ海兵隊のAV8Bハリアー攻撃機が嘉手納基地を飛び立った後、辺戸岬の東約150キロの太平洋上に墜落した。

 米軍事故が発生すると、抗議決議、意見書などの沖縄側からの怒りの意思表明があり、それにも関わらず、原因究明なき米軍機の一方的な飛行再開が強行される、という悪しきパターンがある。またもやこのパターンが繰り返されるのか、という思いがよぎった。

 それは、2013年8月のHH60のキャンプ・ハンセン墜落の事例を検証していたからだ。

 今回、IPPは、ハリアー墜落を受け、県民の頭越しに行われる飛行再開を避けたいという考えから、HH60の調査で明らかになった文書の流れについての警告的な調査発表をした。

 米軍のHH60の飛行再開リリース時、沖縄防衛局が沖縄県の要請を鑑みず、飛行再開を理解できるという文書を米軍に送り、原因究明をしないまま、再開のゴーサインを実質的に出していたという事実があったことを文書が明らかにした。

 これが何を意味するか。沖縄と米軍の「仲介」「調整」役と考えられている沖縄防衛局は「何もしていない」という批判をされてきていたが、そうではなく、「余計なことをしていた」ということではないか。そして、これは、この1回限りのことかといえば、そうではなく、おそらくこのパターンが繰り返されていたのではないかという推察ができる。

 沖縄の米軍問題は、米韓、米独、米伊と単純に比較できない問題を孕んでいるが、それは、沖縄の頭越しにこの「調整」が米日間で行われてしまうという、問題であろう。しかし、これに対して、沖縄が強い姿勢を示しているか、というさらに根深い問題がある。

 このレポートは沖縄タイムスのトップニュースとして報じられた。

沖縄タイムス「2013年米軍機墜落事故調査中に政府が飛行容認」(2016年9月28日)

以下、その詳細である。

 

2013年8月HH60ハンセン墜落 沖縄県からの文書要請

 2013年8月5日、米軍機HH60はキャンプ・ハンセンに墜落した。それに対し、8月6日、沖縄県知事仲井眞弘多(当時)は日米関係機関に要請書を送付している。

 沖縄県ウェブサイトにアップされているのは、内閣官房長官菅義偉、外務大臣岸田文雄、防衛大臣小野寺五典、の3者である。

沖縄県の以下のサイトで公表されている。
http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/chijihatugen/documents/20130806-hh60herituiraku.pdf) 

 沖縄県への情報開示請求により開示された要請書は、沖縄防衛局長武田博史、在沖米空軍第18航空団司令官ジェイムズ B.ヘカー准将(日英)、在日米軍沖縄地域調整官ジョン・ウィスラー中将(日英)宛へのものであった(この3通に関しては、ウェブサイトに公開されていない。理由は不明である)。

どの書簡も、

“原因究明がなされるまで同機種の飛行を中止するとともに、事故原因の徹底的な究明と早急な公表、再発防止措置やなお一層の安全管理の徹底等に万全を期すことを、米軍に対し強く働きかけていただくよう要請します。”

という要請がされている。

 

嘉手納基地からの飛行再開リリース

 しかし、事故から10日も経たない8月14日、嘉手納空軍から同機種飛行を8月16日に再開するリリースが発表された。

 HH60の整備点検や訓練手続きの再確認・再教育が行われたこと等は記されているが、事故原因については調査中であると結ばれている。

「原因究明がなされるまで同機種の飛行を中止する」という県の要請は果たされていない。

 

沖縄防衛局による飛行再開理解を示す文書

 この米軍側の飛行再開を「理解できる」と追認した文書が、米軍リリースの同日、沖縄防衛局から発せられていたことが、筆者の調査で発覚した。

沖縄防衛局から米軍に対して発せられた文書

 これは、「原因究明がなされるまで同機種の飛行を中止する」という沖縄県側の意思を無視し、米側の飛行再開を追認する、ということを意味している。

 この文書が同日の14日付でリリース後、即座に送付されていることも、着目すべきであろう。

 このようなことが、事故の度に繰り返され、恒常化されているのではないか、という疑念が生じる文書である。

 

8月15日には日米合同委員会で議題に

 HH60墜落についてIPPが開示請求していた外務省不開示文書のリストから、8月14日に上述のようなやりとりがあった次の日に、HH60墜落についての地元からの要請についての議題が8月15の日米合同委員会で話し合われていたことがわかる。

 その後、米軍の8月14日のリリースでの予告どおり、8月16日にHH60は飛行を再開している。

 

防衛局文書はその後の交渉のベースに

 この沖縄防衛局の文書が、その後の日米間の交渉でベースになっているということがわかる文書がある。飛行再開後の8月20日付沖縄防衛局から18航空団へのメールである。

 これは中部市町村会の沖縄防衛局からの要請時にあった、嘉手納町からの申し入れを米軍に伝える沖縄防衛局のメールである。嘉手納町の申し入れ内容は、HH60の住民居住地域上空での飛行と訓練の禁止であった。

 沖縄防衛局の文書では、8月14日の防衛局から米軍への文書を引用し、嘉手納町の申し入れを防衛局に以下のとおり、伝えている。

“I’d like to reiterate my request that “the United States Government pay due consideration to the public safety more than ever in operating military aircraft including HH-60 helicopter, and take every possible measure to ensure safety.”
“先日、貴職に対して文書で申し入れさせて頂いた「HH-60 ヘリコプターを含む軍用機の飛行運用に際しては、これまで以上に公共の安全に妥当な考慮を払うこと」及び「安全対策に万全を期すこと」を改めて申し入れさせて頂きます。”

 つまり、日米間の交渉等のコミュニケーションにおいて、沖縄防衛局の文書が、日本側の意思を主張する時の依拠する文書となり、それが沖縄の申し入れを米側に伝える時に用いられるということである。飛行再開時に日本側はそれを理解した、という文書が最終的な意思となり、日米合同委員会でもそれが確認されていることも予想される。

 

文書で積み重ねられる意思

 コミュニケーションにより、関係は構築され、更新されていく。沖縄が知らぬ間に出されている日本政府の文書が、沖縄を含む、日本側の最終的な意思表示として米側に認識され、積み重ねられているのである。

 沖縄県の基地対策課は、筆者との電話のやりとりで「沖縄防衛局の文書全てをチェックするわけにはいかない」と話した。果たしてそうなのだろうか。

 沖縄県の文書が、日本政府の文書で上塗られ、それが意思として米側に伝わり続けている—それが沖縄の現状なのではないか。日米合同委員会の前日にわざわざ防衛局が「理解する」文書を送付する時系列的な意味も考える必要がある。

 この調査により、文書の意義、それが積み重ねられることにより発せられるメッセージは何かについて、行政も市民も再考する必要があるのではないかと考える。

 

ハリアーの飛行再開

 ハリアーの飛行再開は、結局、事故原因を究明しないまま、10月5日、米軍ニコルソン四軍調整官が7日から全面的に再開すると会見で発表し、再開した。

 沖縄防衛局は今回も「理解した」という意思を伝えたのだろうか。

 私たちから問題が提起された今、それを確かめるのは、もはや関係する自治体や議員の仕事ではないかと考えるが、それをしないというのも沖縄の一つの意思であり、それは沖縄のメッセージとして日米に受けとめられるということである。

 

❐HH60墜落時の文書時系列表 
—————————-
2013年8月5日 HH60キャンプ・ハンセンに墜落
    8月6日   沖縄県知事、米軍、防衛局等に要請文書を送付
    8月14日 嘉手納空軍 飛行再開を発表
           沖縄防衛局 同日に飛行再開に理解を示す文書送付
    8月15日 日米合同委員会でHH60の議題がとりあげられる
    8月16日 飛行再開
    8月20日 嘉手納町の要請を受け、沖縄防衛局から米軍へ要請メール
——————————–

Report 006 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

防衛省提出資料 北部訓練場返還実施計画案(2016年10月18日)について
Report No.6 北部訓練場過半の返還実施案調査で非公開資料入手

The Informed-Public Project 代表 河村雅美 

 The Informed-Public Projectは、北部訓練場過半の返還の実施計画案についての調査を聞き取りと文書で行った。

 調査により、返還予定地の所有の8割が林野庁であること、実施計画案は沖縄防衛局が沖縄県、東村、国頭村に送付したもの以外の文書が存在していることが明らかになり、重要な事実があるためにリリースした。

 このリリースは、発表後、以下の記事になった

 沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310

 沖縄タイムス「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482
  

 以下、リリース時のIPP見解である(2016年 11月14日 )。 

1.  地権者が林野庁であることによる懸念

 北部訓練場過半の返還は跡地利用特措法を根拠法として実施され、「返還実施計画」の手続きが同法の8条に基いて行われる。

 実施計画案に県知事は1ヶ月後、東村長、国頭村長は、2ヶ月後に意見を提出する。 県知事意見は、沖縄県の庁内で関係部署からの意見を集約して提出することになっているとのことであった(2016.10 沖縄県企画調整課)

 市町村は返還予定地の地権者からの意見を集約し、提出する。東村の地権者は林野庁、国頭村の地権者は50人程度であるとのことであった(2016.11.2 東村、国頭村)。国頭村は聞き取りの時点では地権者の意見を聞く方法も模索中であり、意見の決定過程も町議決定となるか、上意決済になるかも未定ということであった。

 農林水産省林野庁への聞き取りによると、東村、国頭村の返還予定地の大半の国有林の所有者は林野庁であるとのことであった(2016.11.10林野庁業務課藤平)。所有者の林野庁と沖縄防衛局の関係については、林野庁は「国」の方に属するため、意見書を東村に出すことはないとの見解を示した。

 また、返還後の利用計画は返還後の議論であるとしながらも、林業地として使うよりは、貴重な自然としての森林として利用することを考えているとのことであった。報道によれば東村と国頭村が部分返還の対象地をやんばる国立公園に早期に編入することを求めているということである(琉球新報、2016年10月18日)。

 ここで懸念されることは、米軍基地跡地を自然保護区にして汚染調査がおざなりになることである。以下の理由による。
 (1)国から国の返還であること
 (2)他国で相似の事例があり、問題として指摘されていること。

 例えばプエルト・リコのビエケスの海軍の演習場が18000エーカーの大半が内務省(the U.S. Department Interior)に移管され、野生生物保護区に指定された例がある。年間180日以上実弾訓練を実施していた地域であるにも関わらず、保護区として利用することにより、浄化の要件が表層的なものとなる、政治的な跡地利用の例である(追記:この件は別途問題化する)。

 おざなりになることで、安全・安心の確保ができないことは言うまでもない。米軍の北部訓練場の運用による汚染や環境破壊は当然予測されることである。米軍の責任を今後問う事例としても詳細なデータは必要である。それを把握することは、日米地位協定で免除されている米軍の「原状回復」の義務を今後果たさせる道筋をつけるためにも重要である。

2. 「支障除去措置」の問題

 メディアには公表していない沖縄防衛局の関係自治体への説明文書「北部訓練場の過半の返還について」を国会議員赤嶺政賢事務所から入手した。

 実施計画案にはない情報が入っており、以下のような計画が明らかになっている。

沖縄防衛局説明文書「北部訓練場の過半の返還について」

支障除去措置の進め方
 北部訓練場の返還予定地は「やんばる国立公園(仮称)」に隣接し、貴重な動植物及び天然記念物などが生息 しているため、環境に十分配慮した上で支障除去措置を実施する必要があることから、土壌汚染調査等を実施する際は、関係機関等と相談しながら進める必要がある。

支障除去措置の主な範囲

 支障除去措置の内容については、資料等調査及び概況調査の結果により決定するものであるが、現時点にお いて、支障除去措置を実施する必要があると考える主な範囲は以下のとおり。
①米軍車両の通行があった道路
②既存のヘリパッド及びその周辺
③土壌汚染等の蓋然性が高いと考えられる過去にヘリが墜落した場所

IPPが入手した 北部訓練場の過半の返還についてH28・10月 沖縄防衛局

 

 まず範囲が非常に限定的に考えられている、使用していた道路、ヘリパッドと事故の墜落場所ではこれまでの例からみても、十分ではない。資料等調査や概況調査の実施前に上記のような範囲を必要範囲とする根拠も不明である。

 沖縄防衛局の資料等調査も精度に疑念がある。西普天間の返還跡地でも資料等調査での予測が外れ、ドラム缶や鉛が検出された地域が「土壌汚染が少ないと認められる土地」から「土壌汚染のおそれが比較的多い区画」に変更された前例もある(「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)西普天間住宅地区内報告書2014年12月、沖縄防衛局)。

 米軍から提供される資料が不十分であるに加え、返還される土地は米軍の投棄物が発見される例が沖縄の返還跡地の特徴であるため、汚染の事前の性格づけも困難な状態である。

 範囲を限定した調査をすることは問題であるし、それゆえに40,100,000平方メートルの調査を含む支障除去を1-1年6ヶ月で実施するのは現実的でない。後ろを決めて短期間で調査や除去を実施することは、安全・安心の面で不安が持たれるものである。

 西普天間の51haの2-3年間という予定される支障除去期間よりも短く、貴重な自然環境の残る広大な訓練場の調査の知見や経験がこれまでないにも関わらず、このような短期間で終わらせることがなぜできるのか、説明がないのも併せて問題である。

 世界自然遺産にするための国立公園化ということを考えると、杜撰な調査処理では、国際基準のハードルを越えられないことになることも2村は考える必要がある。

以上。 IPPが入手した 北部訓練場返還実施計画素案(2016年10月18日)PDFデータ20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案01

20161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案0220161018 防衛省 北部訓練場返還実施計画素案03

 

※このレポートは、発表後、以下の記事になった
 
沖縄タイムス「米軍基地の汚染除去、国が範囲限定へ 北部訓練場返還で」(2016.11.16) http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71310
 
「社説[北部訓練場汚染調査]枯れ葉剤を対象とせよ」(2016.11.17)  http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/71482

 

Report 005 琉球・奄美の世界自然遺産に関する情報開示請求について

IPP Report No5 琉球・奄美の世界自然遺産に関する環境省への情報開示請求について

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年11月2日

 The Informed-Public Project は、琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する情報、特に隣接する米軍北部訓練場の問題などがどのように米国側に、および登録に関する国際機関に伝えられているか、情報開示請求制度を使って調査した。

 背景

 2016年9月15日に沖縄本島北部の国頭、東、大宜味3村にまたがる陸域と海域約1万6300ヘクタールが「やんばる国立公園」に指定された。これは世界自然遺産登録の条件である、「法的措置により、価値の保護・保全が十分担保されていること(完全性)」を満たすための日本政府の措置の一つである。

 しかし、世界自然遺産登録の過程におけるハードルはこれでクリアしたわけではない。登録への道筋の中で県民の懸念事項として挙げられている問題の一つは、国立公園に隣接している米軍北部訓練場の問題で生じる環境保全の問題という政治的な問題である。

 日本政府が米軍基地問題という政治的な問題を避けているのではないかという疑念は、市民団体から幾度か指摘されてきた。
 非公式な形では、2012年11月4日に行われた「世界自然遺産シンポジウムin那覇」でのシンポ後におけるIUCN(国際自然保護連合)レスリー・モロイ氏と市民とのやりとりがある。モロイ氏は高江のヘリパッド建設のことは承知していたが、沖縄に存在する米軍基地の全容も北部訓練場の位置や大きさも、その時点まで情報提供されていなかったことを筆者はその場で確認している。
http://okinawabd.ti-da.net/e4154949.html

 また、沖縄・生物多様性市民ネットワーク元共同代表吉川秀樹のやんばるの国立公園計画についての環境省へのパブリック・コメント(2016.3.27)では、同計画で「基本方針において『北部訓練場の問題をどうするのか』(訓練場内の自然環境のデータはどうなっているのか、訓練からの人々の生活環境への影響はどうなっているのか、国立公園設定に向けて米軍との調整はどうなっているのかなど)を明確に示す」ことを提案している[1]。吉川氏によると、具体的には、日本環境管理基準(JEGS)の運用について、バッファーゾーンの設定を想定しているとのことであった。

 一方、この問題は問題提起がされながらも、具体的に日本政府がどのように対応しているかを公けに追及することは、市民からもメディアからもされてこなかった。

 情報公開請求

 この件について、日本政府が現時点でどのように対応しているかについて調査が必要であると考え、3機関に対して、以下の情報開示請求を行った(2015年8月10日付)。いずれも2013年1月1日からの文書を請求した。

1.  環境省

  1. 国際自然保護連合(IUCN)とユネスコと環境省間の文書のやりとり
  2. 琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する会議の文書
  3. 環境省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

2. 防衛省

  1. 防衛省と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て

3. 沖縄防衛局

  1. 沖縄防衛局と米軍間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て
  2. (上記の追加として)沖縄防衛局と環境省那覇自然環境事務所間で交わした琉球・奄美の世界自然遺産登録に関する文書全て(2016年8月31日付)

開示結果

 結果の概要は以下のとおりであった。

1.  環境省

  i. 文書 2016年9月9日付
 開示された文書
(ア)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)
(イ)TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)
 上記以外の環境省と国際自然保護連合及びユネスコ間で交わした文書については、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は交渉上不利益を被るおそれがあり、法第5条第3号に該当するため、不開示。

 ii. 文書1(2))2016年9月9日付
 開示(1)世界遺産条約関係省庁連絡会議(平成25年1月) 

iii. 文書1(3))2016年9月9日付
 文書不開示
 理由:開示請求のあった行政文書に該当する資料は、非公開を前提とし、作成されたものであること。
 従って、法律第5条第3号に掲げる不開示情報(公にすることにより、他国等との信頼関係が損なわれるおそれがある情報)に該当し、不開示とする。

 担当部署:環境省水・大気環境局総務課

2. 防衛省

  i. 文書 2016年9月15日
  文書不存在 

3. 沖縄防衛局

  i. 文書 2016年9月8日
  文書不存在
 ii. 文書 2016年9月30日
  文書不存在 

 防衛省と地方協力局である沖縄防衛局は文書不存在であった。吉川秀樹氏によると、ジュゴン保護キャンペーンセンターの要請で「米軍とのやりとりはしている」という発言が防衛省、沖縄防衛局のいずれかであったということであるが(日時などは未確認)、その発言と矛盾している。

 一方、環境省は文書の存在は認めているが、暫定一覧表以外は不開示、つまり米軍、IUCN,ユネスコとのやりとりは開示しない、という結果であった。加えて、非開示文書のリストも公開しないため、文書の存在を裏付けるものは何も提示されていないこととなる。2013年からの3年間、日本政府が何をしてきたかの確認も推測もできない開示結果であった。ちなみに、筆者の実施している開示請求では、外務省では、非開示でも開示請求対象行政文書一覧として開示・非開示の文書名は挙げ(例「第1018会日米合同委員会議事録」)、非開示の決定理由をそれぞれ明記している。 

 結果の意味すること

  • 市民への情報公開という意味で問題
     環境省が自然遺産のことで、米軍や国際機関とどのようなやりとりをしているのかについては県民の関心も高く、それについての情報へのアクセスを閉ざすことは問題である。存在する文書のリストも提示しないということは、情報公開の観点からも問題といえる。
  • ステークホルダーを無視した世界自然遺産登録
     世界自然遺産登録は地元との協議が重要であるが、米軍基地との関係を懸念するステークホルダーを、環境省は軽視、もしくは無視していることを意味する。このような情報開示の現状では説明責任を果たすことはできない。
  • 環境省の姿勢
     このように環境省が情報を出さない、ということは、これからも出さない、ということを意味する。
  • 地元融和策の現れ
     
    環境省のこのような消極的な姿勢は、世界自然登録遺産とやんばるの国立公園化は高江ヘリパッド建設を条件とした北部訓練場の過半の返還の政策推進のための地元融和策にすぎないことの現れではないかと考えざるを得ない。

 今後に向けて

  • IPPは環境省に行政不服審査法に基づき、環境大臣に対して審査請求を行った。 
  • 日米間の文書のやりとりが開示できないと主張するのであれば、その開示以外の方法で情報開示を求めていく必要が関係自治体(沖縄県、国頭村、東村)や市民の側も必要である。   
  • いずれ米軍に当事者として説明責任を果たさせる必要がある。 

[1]沖縄・生物多様性市民ネットワークブログ
http://okinawabd.ti-da.net/c200363.html(2016.3.29)

以下は開示された文書の一部。

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書)

TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書130212TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2013/02/12 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT(暫定一覧表記載申請書)

環境省開示文書 2014/01/06  TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

環境省開示文書 2014/01/06 TENTATIVE LIST SUBMISSION FORMAT (暫定一覧表記載申請書再提出版)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

日本環境管理基準(JEGS)2016年版リリースについての見解(速報)

The Informed-Public Project 代表 河村 雅美 
2016年9月16日

日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が2016年版に更新されている。

2016-jegs

【案内経緯】

2016年4月21日に日本環境管理基準(Japan Environmental Governing Standards, JEGS)が更新され、在日米軍のHPで発表されていた。
http://www.usfj.mil/Portals/80/Documents/Other/2016%20JEGS.pdf

 日本では、環境省のHPで在日米軍のHPのリンクをつけていたが、2016年版が出されていたことのアナウンス(報道発表)は特にされていなかった。
http://www.env.go.jp/air/info/usfj/index.html

防衛省による和訳は9月17日にHP上で発表された。
http://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/2016_jegs/index.html

【経緯の問題点】

  • 在日米軍から発表されていたのにも関わらず、日本政府が積極的にアナウンスをしていないのは問題である。日本語の仮訳がでなくてもアナウンスは必要である。
  • 漏出事故などでの在日米軍の判断の依拠はJEGSであり、現在どの基準が適用されているかは、私たちは知る必要がある。特に沖縄県民にとっては重要な情報である。それを放置していたのは問題であると考える。
  • このアナウンス方法については、環境省ではルール化はされていないとのことであった(環境省聞き取り 2016.9.16、以下同様)。

【2012年から2014年の変更点】

1.環境省 水・大気環境局総務課によると主な変更点は以下の4点であった。

(1)有害物質・有害廃棄物、化学物質36種を追加した。

英文 Appendix 1 付属資料 p216. Table AP1. T
化審法で反映されていないものが追加された。
*PFOS 追加 p.240 Table AP1.T4.
基準値が書かれていないのは、両国とも規制基準がないため。

2016-jegs-p230

(2)排水基準

これまでは水質汚濁防止法で規制されているものが反映されていたが、自治体の上乗せ部分が反映された。東京都の上乗せ部分が反映された。
英文 p68-70. Table C4.T7-13

(3)アスベスト取扱

詳細な規定を設定した
英文、p.187- Chapter 15 3.6.1~

(4)絶滅危惧種などの追加

英文 Chapter 13 Natural Resources and Endangered Species P168-
絶滅危惧種 29種 (p.168 Table C13.T.1)
特定外来種4種(p.175 Table C13.T3) 

2.変更点については、環境省としては文書の公開等については考えていないということであった。JEGSは米軍のものであるので日本政府として、新旧対照表などのようなものをつくる立場ではないとの見解であった。

3.JEGSは要旨部分(Executive Summary)も更新した部分がわかるような書き方をされていない。今回、環境省は「追加」部分を変更点としてあげているが、過去には騒音項目が削除されたこともあり、さらなる検証の必要がある。

Report 003 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか:沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

 

沖縄市サッカー場を沖縄県道23号沖縄北谷線(通称国体道路)側から望む、高架は沖縄自動車道、奥は嘉手納基地と基地内の小中学校。

 

IPP Report No.3 米軍基地汚染地の「原状回復」はいくらかかるのか
沖縄市サッカー場汚染関係経費中間報告

河村 雅美(Dr. Masami Kawamura / The Informed-Public Project 代表)
2016年7月12日

IPPレポNo-3PDF版

報告の目的

 本報告は、2013年6月にドラム缶が発見され、汚染が発覚した旧嘉手納基地跡地、沖縄市サッカー場の汚染調査や浄化処理関係のこれまでの経費について報告し、その結果から、今後の行政への監視や政策検証に必要な事項について議論する材料を提供することが目的である。

 ドラム缶発見後、サッカー場の汚染は米軍基地由来のものと考えられ、沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県による調査が進められた。調査は、サッカー場全域、隣接した駐車場の調査に発展し、現在も進行中である。これまでに108本のドラム缶が発見され、複合汚染の実態が明らかになっている。

 The Informed-Public Project(IPP)では、国会議員、県議会議員、沖縄市議会議員の協力を得て、各機関の経費のデータを入手し、とりまとめた。調査や浄化作業はいまだ継続中であり、より詳細な調査が必要であるため、本レポートは暫定的な中間報告である。

この報告の意義については以下の3点がある。

1. 経費の全体像把握

 沖縄市サッカー場の汚染調査内容や汚染土壌などの処理については沖縄防衛局の発表時に報道がされてきたが、その経費に関しては、複数の行政機関が(沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県)対応していることもあり、まとまったデータが出されていなかった。本中間報告では、調査及び処理に関わる業務が継続中ではあるが、これまでの経費の全体像を明らかにすることができた。

2. 汚染発覚からの過程検証

 これまでも返還跡地における土壌汚染や汚染除去費用については国会の場や研究で、一部明らかにされてきたが[1]、調査や浄化作業の各過程でどの程度の費用がかかるか、どのような業者がどのような発注形態で業務を受注し、どこまでの業務を行うのか、といった詳細は明らかにされていなかった。本中間報告により、経費の面から汚染発覚後の過程を把握、検証することができる。そこから、行政は具体的にどのような説明責任が伴うかも明らかになった。

3. 各行政機関の政策評価

 沖縄市サッカー場の汚染発覚後、これまでの跡地調査にはない行政の動きがあった。例えば、沖縄市が調査の透明性を確保するために、国に対抗的調査をした調査体制をとったこと、また、サッカー場汚染発覚の翌年に沖縄県が国の一括交付金の3年事業で、環境政策課に基地環境特別対策室を設置したことなどである。本報告ではこの動きについても検証した。これは、今後、汚染発覚後の各行政機関の政策を検証、評価するための材料の提示となる。
 税金の用いられ方を監視する納税者としての立場から、日米地位協定のあり方を改めて検討する一つの材料として用いられることも、本報告の最終的な目的の一つであることを強調しておきたい。

 構成

報告の目的
ポイント
背景
Ⅰ 沖縄市サッカー場調査等経費について
  1.2015年3月までの支出・経費と2016年度日本政府計上予算
  2. 内訳
    ①沖縄防衛局
    ②沖縄市
    ③沖縄県
Ⅱ 沖縄県環境政策課基地特別対策室について:新規の米軍基地跡地政策として
Ⅲ 考察・提言
Ⅳ むすびに
【参考資料】

ポイント

  • 日米地位協定で米国側の原状回復の義務が問われていないために日本が負担する経費はわずか約1万4000㎡の土地で9億円以上に上る。

  • 沖縄市が実施した沖縄防衛局の対抗調査経費(クロスチェック代)は7100万円以上に上り市の財政負担となっている。あるべき調査体制の姿を示した沖縄市には、国や沖縄県の適切な支援措置が必要である。

  • 日本政府、沖縄県、沖縄市は多額の費用を伴う汚染調査や浄化に関する説明責任を認識し、意思決定過程の透明化に努め、同過程の検証が可能な体制を構築することが急務である。また、費用対効果分析についても第三者的立場から実施する必要がある。

  • 議会、市民の積極的な監視、関与が必要である。

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Report 002 “複合投棄”という跡地の現実:沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

yomitan_genbaIPPレポート No.2 【速報版】 “複合投棄”という跡地の現実
沖縄市サッカー場、北谷上勢頭住宅地、読谷村整備農地

河村 雅美(The Informed-Public Project 代表)
Dr. Masami Kawamura
2016年5月8日

IPPレポNo-2PDF版

2016年4月25日の琉球新報が報じたとおり[1]、読谷村補助飛行場跡地で土壌汚染が発覚し、2年間放置されたまま農地整備が進められていたことが筆者の沖縄県への情報公開請求で明らかになった。

沖縄県事業「平成20年県営畑地帯整備事業(読谷補助飛行場跡地)」で、2013年の不発弾調査中に廃棄物が発見され、沖縄県が土壌を調査した結果、調査地点から基準値を越えたダイオキシンと鉛が検出されていた。

今回、問題になったのはこの土壌汚染に対処する責任がどの機関にあるかが明確でないために、「たらい回し」となり対策が遅れ、結果的に2年間汚染土壌が放置されたことである。土地の所有者である読谷村が処理の責任があるとされ、的確な汚染範囲の確定がされずに、農地整備の事業が進められている。

読谷村は「所有者、米軍への提供者であった国の責任で原状回復してほしい」と、管理責任を問う形で防衛省や沖縄防衛局に、対応を求めている。一方、防衛省や沖縄防衛局は「米軍の行為に起因するものでない」と処理を拒否している。報道によれば、沖縄防衛局は「地元業者が廃材や車両置き場として使用し、焼却していた。土壌汚染除去などを防衛省が実施することは困難だ」と主張しているとのことである[2]。聞き取りによると、読谷村も、地元民がゴミを捨てていることは認めている[3]。当時、調査をした沖縄県も、汚染の状況を知りながら土地の所有者が廃棄物処理の責任者であると、読谷村に対処を預けたままである。

なぜこのような問題となるのか。

まず、これまでに返還された土地の汚染調査が不十分であったことがあげられる。2012年に成立した「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」(以下「跡地利用特措法」)以前は、跡地の全面調査は義務化されていない。

また、このような事態に対応する法や制度が不在であることもある。跡地利用特措法は、2012年以前に返還された土地には適用されない。この問題が解決されていないため、2013年の沖縄市サッカー場ドラム缶問題、2015年に公表された北谷町上勢頭第2区の宅地の土壌汚染問題も依拠法はなく、跡地利用特措法に準じる形で沖縄防衛局が対応している。

さらに米軍に起因する汚染であるかどうかで国の責任で処理するかどうかが判断されていることも問題である。沖縄市サッカー場、北谷町上勢頭第2地区は、汚染は米軍に起因するものとして判断され、沖縄防衛局が対応している。読谷村は米軍に起因するものではないと処理を拒否している。

本レポートではこの3つ目の問題に焦点をあてる。米軍基地跡地の汚染の問題は、読谷村のケースで防衛省が主張しているように、米軍起因であるかの「認定」問題として処理することができるのかといえば、そうではなく、より複雑な様相を呈している。

ここでは、沖縄の米軍基地跡地の特徴とは何なのか、関係機関はこれまで、どのように判断し、対処してきたかを示す。これをもとに、沖縄で行われるべく現実的な対応策について考察し、法整備の問題の解決を提言したい。


要約

  • 県内の基地跡地の汚染は米軍や民間(沖縄側)の投棄が混在しているという現実がある。
  • 返還されて時間が経過している土地で発覚した汚染に関する法整備が跡地利用特措法ではされていない。
  • 明らかになってきた沖縄の基地跡地の現実をふまえ、読谷村の問題を「米軍ゴミ認定問題」として扱うことは妥当でない。国はその理由で対応を拒否すべきでない。

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Report 001 日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか

 13838597_1288061401234034_1255818670_o IPPレポート No.1【速報版】日本政府は米軍に沖縄の要求を正しく伝えているか
:PFOS汚染を事例にした沖縄県、沖縄防衛局、米軍間コミュニケーションの検証

2016年3月25日
河村 雅美(Dr. Masami Kawamura  The Informed-Public Project 代表)

IPPレポNo-1PDF版

ポイント

  • 沖縄防衛局は県企業局の要請を稚拙な英訳で米軍に送付している。稚拙な英文書簡は沖縄県が作成した書簡であると米軍に認識されている可能性もある。
  • 沖縄防衛局は沖縄県企業局の意思を正確に反映する文書を米軍に送っていない。沖縄防衛局の米軍への要請内容は、沖縄県企業局の米軍への要請よりも弱い要請になっていた。
  • 沖縄の自治体の意思を米軍に届ける日本政府の文書の位置づけが不明
  • 沖縄防衛局はこのような事態の経緯を説明すべきである。
  • 沖縄側から米軍への要請や抗議の方法は検討を要する。

 

本稿の目的

  本レポートでは、米軍基地被害に関する自治体、日本政府、米国間の文書がどのように交換されているかについて、2016年に県民に報告された嘉手納基地周辺の水源の有機フッ素化合物(PFOS)汚染の事例を用いて検証する。基地被害の問題において、このような文書の交換やコミュニケーションへの検証はこれまでほとんどなく、それゆえいわゆる「基地問題」において見落とされてきた部分の認識や、より具体的な対応策につながるものと考える。 続きを読む