「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」

第3分科会(第33回日本環境会議沖縄大会

「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」
Don’t let the fences stop you 

2016年10月23日(日)09:00-12:00
沖縄国際大学  3号館 303教室

報告1「基地汚染問題の新たなアプローチを探る」13346936_1241243575915817_1850526046387151590_n-1

河村雅美:調査団体 The Informed-Public Project 代表

博士(社会学)。元沖縄・生物多様性市民ネットワーク代表。The Informed-Public Projectの活動は http://ipp.okinawa/を参照。

報告2「基地内の微量有害物質汚染に対する調査研究の試み」img_1053-1

田代豊:名桜大学国際学群教授

三重大学大学院生物資源学研究科修了(博士(学術)) 環境計量士(濃度関係) ’12年より現職。

報告3「沖縄の米軍基地をめぐる音環境」img_1079

渡嘉敷健:琉球大学准教授

1960年沖縄県出身。専門は環境工学、環境騒音、音響工学。沖縄県公害審査会委員、沖縄県建築士審査会会長。辺野古埋め立て承認取り消しを巡る代執行訴訟の証人陳述書提出

 

コメンテーター:國吉信義さん 元米国カリフォルニア州マーチ空軍基地環境保全官) については、旧沖縄BDブログ記事 2015年04月17日2015年05月09日を参照下さい。


分科会3のねらい

沖縄の米軍基地被害の問題に関しては、日米地位協定による壁が大きくたちはだかり、日米関係の政治的状況に左右される部分が大きい。基地関係の事故・汚染発覚時でも、現場や情報へのアクセスが制限される状況が続いている。

この分科会では、その限界の中で、フェンスの外で/から得た情報、科学的データを用いて、どのような問題解決が可能であるか、沖縄での最新の事例をもとに議論する。

沖縄で専門家として継続的に調査・測定を行っている研究者からは、データを用いての辺野古、高江、普天間基地の騒音・低周波の問題、牧港のキャンプ・キンザー等の汚染問題からのアプローチを報告する。調査団体からは、嘉手納基地をめぐる、行政による調査の監視・分析からのアプローチを報告する。

報告者には、市民側に立った調査を誰が担い、いかに継続して実施できるか、および、得たデータをいかに効果的に用いるかという共通の課題がある。それらを実現するシステムやリソースについての問題提起・提言を行い、全体として議論する。

各報告をふまえて、元米国空軍マーチ基地環境保全官で基地汚染問題に従事し、嘉手納基地でも勤務経験のある國吉信義氏が、日米政府を動かすために何をすべきか、コメントする。

当日は、2013年に深刻なダイオキシン汚染が発覚した嘉手納基地跡地沖縄市サッカー場の様子を動画で紹介する。また、音環境の発表ではCH46とMV-22オスプレイの低周波音を体感する時間を設ける。

司会:吉川秀樹
コーディネーター:河村雅美

 
 
※ 本分科会におけるIPPの報告は、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの2016年度助成を受けています。

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河村 雅美

”Don’t let the fences stop you(フェンスがあるからといって、立ちどまってはだめ)”

 これは10月21日から沖縄で開催される第33回日本環境会議沖縄大会の第3分科会「米軍基地の騒音・汚染問題~フェンスの外からのアプローチ」の英語タイトルであり、この分科会のねらいを適確に表しているといえる。以下、この分科会の報告者兼コーディネーターとしての立場から分科会を紹介してみたい。

 沖縄の環境問題には、米軍基地という、フェンスに囲まれて容易にアクセスできない場所に由来する大きな問題がある。この問題は日米地位協定という制度の壁、そして米国に追従する日本政府、日本政府を媒介として米軍に向き合う沖縄県や自治体のポリティクス=「政治」に左右されるところが大きい。

 それでは、私たちは術なく、フェンスの前にたたずみ「地位協定改定を」とくり返すしかないのだろうか。

汚染、騒音を検証

 この第3分科会は、そこで立ちどまらず、フェンスの外から何ができるかを探るために経験を共有し、議論する場とすることを目的としている。沖縄での騒音・汚染の事例をもとに、制度的に制限された状況でありながら、フェンス外で地元の研究者が継続的に調査すること、市民が行政の調査を監視していくことなどによるフェンスで立ちどまらないアプローチの可能性を語り合う場としたいと考えている。

 筆者は調査団体The Informed-Public Project 代表として、深刻なダイオキシン汚染が発覚した嘉手納基地跡地沖縄市サッカー場の事例や、嘉手納基地が汚染源と考えられるPFOS汚染など、行政調査の監視・分析からのアプローチを報告する。また、日英文書を読み、書く実務者として、言語という大きな壁が立ちはだかる日米沖のコミュニケーションの現実的な困難の面にも触れていく。

 また地元で継続的な調査をする2名の研究者から報告がある。田代豊氏(名桜大学国際学群教授)からは、基地内から外へ移動する媒体を用いて、基地内の汚染の状況を推定する手法を用いた普天間基地、キャンプ・キンザーの調査結果が報告される。浦添市とも協働し、返還が決定されているキャンプ・キンザーの汚染を、水質、底質、マングース等の野生生物から推定した成果は返還跡地問題にも大きな示唆を与えるものである。

 騒音被害の面からは渡嘉敷健氏が(琉球大学工学部准教授)沖縄の米軍基地をめぐる音環境について報告する。辺野古アセス、普天間基地の問題で、騒音調査を実施してきた氏からは、オスプレイの低周波による住民の健康被害、心理的側面まで含んだ住民への影響の実態を、正確に把握し示すことのできる調査の実施や、県条例制定の必要性が、説得力をもって提言される。img_1084-2「場」を作り出す

 これらの報告からわかるように、フェンス外で私たちが得たデータ、情報は基地内では得られないものである。基地が汚染源であることを基地内コミュニティに、米軍機が飛ぶことでどんな影響が住民にあるのかを米軍に、というように、むしろ私たちが基地内に伝えなければならないものではないか。このような情報の非対称性を使って、日米政府がこの問題に取り組む状況や「場」を、フェンスの外から、沖縄側が自ら創りだす可能性がある萌芽がある。この「場」を作り出すことの必要性を共有しなければならないのではないか。

 そのような動きは、日米政府、沖縄県の対応に緊張感を持たせることになる。それを積み重ねることは、沖縄の市民からの一つの意思表示となるだろう。公害問題に取り組んできた宇井純氏の言葉を借りれば、私たちの日米政府への「表現努力」を増やしていくということである。

持続的システムを

 しかし、そのフェンス外からの意思表示のためには、市民側に立った調査を誰が担い、いかに継続して実施できるか、行政への監視活動をどう継続していくかという課題がある。現在は特定の研究者たちの努力に依拠している状況であるが、20161004-p23-%e6%b2%96%e7%b8%84%e3%81%8b%e3%82%89%e5%95%8f%e3%81%86-%e7%92%b0%e5%a2%83-%e5%b9%b3%e5%92%8c-%e8%87%aa%e6%b2%bb-%e4%ba%ba%e6%a8%a9-%e4%b8%ad-%e3%83%95%e3%82%a7%e3%83%b3%e3%82%b9持続的なシステムやリソースの問題についてもともに考えたい。

 各報告をふまえて、元米国空軍マーチ基地環境保全官として基地汚染問題に従事してきた國吉信義氏がコメントする。フェンスの中と外を経験する国吉氏の見解が注目される。

 また沖縄市サッカー場のある場面を切り取った「政治」を感じる短い動画上映、CH46とMV-22オスプレイの低周波音の体感の時間も設けている。

 フェンス際ぎりぎりまで私たちがこれからどう動くのか、会議の参加者とともにオープンに話し合う場としたい。

(2016年10月23日日本環境会議 午前9時~正午 The Informed-Public Project代表 第3分科会報告者)