NGOからIUCNへの書簡:沖縄島北部の世界自然遺産登録に関する問題と提言

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界遺産一覧表への記載に係る国際自然保護連合(IUCN)による現地調査が10月5日から始まっています。

 IUCNから現地調査に派遣される委員に、環境省がユネスコに提出した推薦書やその後の対処についてのNGOからの評価と提言書を、この問題に取り組んできたOkinawa Environmental Justice Projectの吉川秀樹さんとIPPで提出しました。

この文書は、推薦地中の沖縄島北部における問題、特に北部訓練場と返還跡地に関する米軍問題に焦点を置いたものとなっています。
北部訓練場や返還地の存在をないものと扱った最初の環境省の推薦書からは、進歩が見られる再挑戦の推薦書ですが、米軍の管理統合計画の文書を読み、推薦書を読み解いて環境省を追及し、返還地の対処の不備をウォッチしてきた市民やNGOから見ると、未だ多くの問題があります。その問題を指摘し、環境省への提言を示した書簡をIUCNに送りました。

これまで宮城秋乃さんが調査してきた北部訓練場跡地の廃棄物等を視覚化したもの(下記)や米軍の飛行訓練ルートのマップを資料としてつけています。

文書は以下のような構成になっています(和訳はなし。作成予定なし)。
・前回の勧告からの改善点の評価
1)日米政府の「世界自然遺産の推薦についての合意文書」を掲載した。
2)北部訓練場の自然環境についての米軍資料を記載した。

・未だ残る問題点 (7項目の要点
1)返還跡地の状態に関する情報が正確でなく誤解を与える。
2)北部訓練場の訓練・施設の推薦地への影響の情報がない。
3)米軍との連携に関する文書の提示が不適切である。
4)必要な米軍との連携体制をIUCN勧告後にいかに発展させたのかが示されていない。
5)空域の境界がない。
6)保全状態を示す主要指標である生物が少なすぎる
7)高江の生活の質が悪化していることへの議論がない
・提言 (9項目)の要点
1)環境省は返還跡地の短・長期浄化計画を防衛省、米軍と連携して計画し実現すること
2)環境省は防衛省、米軍と連携して北部訓練場の推薦地への影響についての問題に取り組むこと
3)環境省は問題点で指摘されている米軍との文書をIUCNとUNESCOに提供し、公開すること
4)環境省は防衛省、米軍と連携し、北部訓練場の影響評価調査を策定・実施し、影響がある場合は解決策を実施させるようにすること
5)環境省は防衛省、米軍と連携し、森林火災、有害物質の漏出、航空機墜落等の不測の事態に備えた計画を策定すること
6)環境省は防衛省、米軍と連携し、軍事訓練が対象地に侵入しないよう、空域、陸域での明確な境界をつくること
7)環境省は生物多様性の保全の状態を示す指標となる種を増やすこと
8)環境省は防衛省、米軍と連携し、高江や近隣の共同体の生活の質の悪化を軽減すること。環境省は沖縄北部を世界自然遺産登録の過程で、地域の人々の、安全で健全な生活を侵害するべきではないことを認識するべきである。
9)防衛省と米軍を「管理当局の連絡先」の項目に記載すること。

文書はこちらから読むことができます。

北部訓練場返還跡地の「支障除去」成功アピール映像:情報開示請求で入手

The Informed-Public Project(IPP)は、米軍基地の返還跡地の問題も調査しています。

2016年12月に「過半」の4010haが返還された北部訓練場の返還跡地の問題も、限定的な「支障除去」の調査案の文書を入手し、杜撰で短い調査計画の問題を早くから指摘してきました。
また、北部訓練場と隣接する地域での世界自然遺産登録の問題についても、米軍基地ゆえの情報の不透明性や、環境省等が北部訓練場の問題に触れずに登録手続きを進めていこうとする欺瞞についても問題化してきました。

北部訓練場の返還跡地の支障除去は、その後、実質8ヶ月で実施され、そのまま2017年12月に跡地は引き渡されました。
しかし、支障除去の問題は、宮城秋乃さんが現地で調査をし、杜撰な状態を明らかにしていきます。
現在も多くの不発弾、空砲等が続けて発見されています。

また、土壌汚染についても名桜大学の田代豊教授が宮城さんの発見した廃棄物の土壌を分析し、DDTPCBなどの汚染の存在を指摘しています。行政ではなく市民や専門家が事実を明らかにしています。
一方、やんばるを含む世界自然遺産の推薦も、2018年5月にユネスコから登録延期の勧告を受け登録はなりませんでした。
現在、再挑戦をしていますが、上述の支障除去問題はまだ解決されていません。

IPPは、沖縄防衛局への開示請求文書でこの問題を追及していたところ、廃棄物調査の実施計画書で不思議な記述を見つけました。
調査の実施計画書ーつまりまだ調査がされていない段階ーの中に「引き渡し式典」の映像制作が実施される作業の中に入っていたのです。

そもそも調査自体にこのような作業が入りこんでいることも問題であるし、調査もしていないのに問題ない前提で映像制作が予定されているのもおかしな話です。
理由を沖縄防衛局に問い合わせると「仕上げの作業」という説明にもならない説明で答えていました。

ではどんな映像なのかと、映像の開示請求をかけてみました。
下に貼り付けてあるyoutube映像が入手した映像です。
この映像は北部訓練場の引き渡し式典で上映された映像で、「支障除去」がいかにうまくいったかをアピールする内容になっています。映像の中では沖縄防衛局の支障除去調査を監修した東京農工大学大学院細見正明教授が、防衛局に依頼されて専門家としてコメントし、支障除去措置についてのお墨付きを与えています。

映像が示した未来の森と、宮城さんや田代先生が示してきた現実は違いすぎます。

支障除去措置をとった防衛省、その問題には触れないようにしている環境省、そして日本政府が依拠してきた専門家の責任は、どう問われるのでしょうか。 

なお、この動画が情報開示請求の対象であることは、沖縄防衛局から細見教授に文書で伝えてあることも入手文書で確認しています。