嘉手納基地のPFAS汚染:ホスト国日本の調査は幕引きに使われたのか

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はじめに

2016年に沖縄県企業局から報告された嘉手納基地が汚染源と考えられるPFAS汚染。報告から8年がすぎて、汚染を示すデータや調査報道があっても、日米政府は認めようとしない。

この間、日米間で密かにこの件は幕引きされたのではないかということが米側と日本政府の文書によって浮かび上がってきた。

今回のThe Informed-Public Project(IPP)の調査は、沖縄タイムス特約通信員ジョン・ミッチェル氏が米国情報公開法(FOIA)で入手した文書と、The Informed-Public Project(IPP)が情報開示請求で入手した日本政府側の文書を突き合わせるという手法で行った。 
文書のピースをつなぎ合わせ、日米政府間で何が行われていたのか、その基地汚染をめぐる政治について、以下、報告する。

調査結果は沖縄タイムスのトップ記事となった。
「嘉手納基地周辺の河川からPFAS検出 米軍、水質調査させず『基地とは別の原因と日本政府が結論」』2018年、米上院議員へ責任回避する回答」(沖縄タイムス2024.4.3)
「不十分な調査強いた米軍、事実ゆがめ議員に報告 嘉手納基地の周辺河川からPFAS検出 回答にデータ未記載 原文と英訳で異なる意味」(沖縄タイムス2024.4.3)

概要

沖縄タイムスはジョン・ミッチェル氏のFOIA(Freedom of Information Act, 情報自由法)による入手資料により、国防総省が米国連邦議会上院議員ジーン・シャヒーン議員(軍事委員会)に、沖縄県民の飲水の水源である比謝川のPFAS汚染の原因は、嘉手納基地以外の「別の原因」があると不誠実な回答をしていることを明らかにした。(沖縄タイムス 2021.12.6記事 「PFAS汚染矮小化 米軍、議員に不誠実回答」

The Informed-Public Project(IPP)はこの報道とIPPが情報開示請求で入手していた文書により、さらなる以下の調査を行った。

1) シャヒーン議員と国防総省のやりとりのメールを検証
2) 国防総省がシャヒーン議員への回答に用いた沖縄防衛局の調査を特定
3) 国防総省がどのようにその調査を用いて嘉手納基地以外に汚染源があると報告したかを分析

その結果、沖縄防衛局の「提供施設区域内における現況調査等業務」(2018年3月 沖縄防衛局 いであ株式会社、以下「現況調査」)(IPPが開示請求で入手)を用いて国防総省がシャヒーン議員に嘉手納基地のPFAS汚染について説明していたことがわかった。

沖縄防衛局はこの「現況調査」で2種類の調査を実施した。 

①「河川基本情報調査」
河川の流量の寄与率、具体的には嘉手納基地内から比謝川に流入する大工廻川から水源である比謝川への流量の寄与率を調査。
②「河川の水質調査」
基地外でのPFOS/PFOAの水質分析。嘉手納基地が汚染源でないことを証明するには、基地内の大工廻川の水を採取してPFOS/PFOA分析を行うことが必要であるが、その調査はされていない。
立ち入りも①の水量の調査のみの許可を米軍は与えている。

この結果をもとにして、国防総省は①「河川基本情報調査」の調査を根拠とし、比謝川の高度なPFOS濃度は(嘉手納基地でない)別の原因があると、日本政府の結論として、議員に伝えている。他のメールでも、国防総省は、「物理的なパラメーター(例えば流量、PFOS/PFOAの分析ではない)の結果では、大工廻川は北谷浄水場の水量の寄与率は少ない(minor contributor)」と書いている。
しかし、大工廻川の比謝川への流量の寄与率では、嘉手納基地が汚染源でないということは証明できない。

また、②「河川の水質調査」では基地内での調査(大工廻川の基地内でのサンプリングと水質分析)は米軍は許可していないが、基地外での河川での水質検査(PFAS分析)で、嘉手納基地が汚染源である可能性を示唆する結果がでている。この件は、米軍は議員に報告していない。

嘉手納基地が汚染源であるかないかは、大工廻川の基地内でのサンプリングと水質調査が必要であるが、それをさせないような調査を米軍は沖縄防衛局に実施させ、ホスト国日本の結論として、嘉手納基地以外の汚染源があるように議員に報告した。

結果的に、沖縄防衛局は、嘉手納基地以外の汚染源があるという、事実と反することを伝える調査を実施し、米軍は日本政府の結論としてそれを連邦議員に伝え、嘉手納基地PFAS汚染問題の矮小化、あるいは幕引きにつながったといえる。

以下、詳細を記す。

経緯
1. 発端:シャヒーン議員から米国国防総省に沖縄のPFAS汚染についての問い合わせメール発出

問い合わせは以下の3点であった。

シャヒーン議員と国防総省とのやりとりでは、普天間基地と嘉手納基地の件についてのやりとりがあるが、本調査では嘉手納基地に焦点をあてた。

 1)  沖縄のPFAS汚染を特定しているか。
2) もしそうなら、DODは汚染の軽減や浄化のために何をしているか。
3)  国防総省は周囲のコミュニティの汚染から個人を守るために地元の自治体と協働してどんな取り組 みをしているか。【メール資料①】

シャヒーン議員と国防総省とのやりとりでは、普天間基地と嘉手納基地の件についてのやりとりがあるが、本調査では嘉手納基地に焦点をあてた。

メール資料①シャヒーン議員から国防総省(DOD)への問い合わせメール (ジョン・ミッチェル氏より提供) 

2.国防総省の回答:沖縄防衛局の河川流量調査結果を用い、汚染源は嘉手納基地以外の他の汚染源であることを議員に伝える

1)国防総省は、議員へのメール(2018.10.3)【メール資料②】で日本政府が実施した大工廻川(嘉手納基地内から比謝川に流入する川)の河川流量の調査(a survey of river flow)の結果を基に、飲料水の水源の一つである比謝川の高度なPFOS濃度は、嘉手納基地でない他の汚染源によるものだと結論を伝えている。

 (引用)
“In January 2018, The Government of Japan completed a survey of river flow in the Dakujaku River on Kadena AB concluding that there are other causes for elevated PFOS levels in the Hija River (one source of drinking water). ”

(2018年1月、日本政府は嘉手納基地の大工廻川の河川流量の調査を完了し、比謝川(飲料水の水源の一つ)におけるPFOSレベルの上昇には他の(複数の)汚染源があることを結論とした。)(英日とも下線は引用者による)

メール資料②国防総省からシャヒーン議員への回答メール (ジョン・ミッチェル氏より提供)

2)別のDODのメール(ジョン・ミッチェル、氏がFOIAにより入手。シャヒーン議員とは関係のないもの)【メール資料③】でも、大工廻川が北谷浄水場への寄与率が少ないことを主張し、より寄与率が多いものがあることを示唆して、暗に嘉手納基地以外の汚染源があるような書きぶりをしている。(2018年11月26日)

(引用)
” The results(reported to the ESC in Mar 2018) showed the Dakujaku River
is a minor contributor of water volume to the Chatan Water Plant.”
”(2018年3月にESC[環境分科委員会]に報告された)この結果は、大工廻川が北谷浄水場への水量の寄与は少ないことを示している。” (英日とも下線は引用者による)

【メール資料②】での”a survey of river flow”、【メール資料③】での”minor contributor of water volume”という記述から、流量の調査結果をもって、嘉手納基地は水源への汚染源ではないような結論を導いていることがわかる。

【メール資料③】国防総省のメール。ジョン・ミッチェル氏より提供。

3. 国防総省が用いた日本政府の調査とは

調査時期、調査内容から、国防総省が用いている日本政府の調査は、沖縄防衛局の「提供施設区域内における現況調査等業務」(2018年3月 沖縄防衛局 いであ株式会社)【図①】であると考えられる(IPPが情報開示請求により入手。)。

【図1】沖縄防衛局・いであ株式会社「提供施設区域内における現況調査等業務報告書(平成30年3月)」

この調査は報告書によると、「嘉手納飛行場内の大工廻川等の地形環境、河川流況、水質の現況を博し、その結果を踏まえ、今後の水質浄化対策の必要性や手法について考察すること」を目的としたものであった。ただし、嘉手納飛行場「内」での調査は河川流況のみであり、水質の調査は許可されない限定された調査となった(詳細は後述)。

調査実施時期の2017年3月24日〜2018年3月30日は、【メール資料②】の「2018年1月に日本政府が終了した調査」の時期と一致している。

調査報告は、本体と概要資料によって構成されている【図2】。

【図2】 沖縄防衛局の調査目次。本編と概要資料で構成されている。 概要資料は、河川基本情報調査結果、河川の水質調査結果の日英版がある。

概要資料は以下のとおり、①河川基本情報調査結果(結果速報)(日・英)(以下、【調査結果①】)と②河川の水質調査結果(結果速報)(日・英)(以下、調査結果②)(2018.2.19付)から構成されている【図3-①、②】【図4-①、②】。

概要資料構成
・河川基本情報調査結果(日本語版)・・・【調査結果①】
・河川基本情報調査結果(英語版)


・河川の水質調査結果(日本語版)・・・【調査結果②】
・河川の水質調査結果(英語版)

【調査結果①】は主に流量について、【調査結果②】は主に河川の水質、PFOS、PFOAの分析を調査している。流量の調査があること、日英資料が作られていることからも、この調査報告が、米軍への報告資料となったことが推測される。

 

【メール資料②】【メール資料③】の国防総省が説明のために用いている調査結果は、河川の流量を調査した【調査結果①】に依拠したものと考えられる【図3−①、図3−②】

【図3-①】河川基本情報調査結果 比謝川への寄与程度の説明(日本語)

 

【図3-②】河川基本情報調査結果 比謝川への寄与程度の説明(英語)

国防総省が依拠した調査結果は、以下の部分であると考えられる。

(引用).(日)
“3) 比謝川への寄与程度
・大工廻川と比謝川の流量及び水質特性(表1-2-5)から、平水時における大工廻川の流量は比謝川の数十分の一程度であり、一方でPFOS+PFOAの濃度は数倍程度である。
・これらのことから、大工廻川のPFOAPFOS濃度は比較的高い値を示しているものの、流量規模は小さいため、大工廻川の他にも、周辺河川や地下水(湧水)に含まれるPFOAPFOSが比謝川に流入している可能性が考えられる。

(英)
“3)Contribution ratio to Hija Riverより)
The flow rate and chemical concentration (PFOS + PFOA) of Dakujaku River and Hija-River were shown in Table.5.  The flow rate of the Dakujaku River is a full order of magnitude lower than the flow rate of Hija River.  On the other hand, the chemical concentration was a several times in a level. 
The chemical concentration (PFOS + PFOA) in Dakujaku-River water tended to be relatively high in the normal time. However, because of the flow rate have small scale, it seems likely that there are other causes to regard the high chemical concentration in Hija-River water (For example, surronding rivers, underground water, and so on.)” 
(日英とも下線は引用者による)

ここで注目されるのは、日本語(和文原文)には「大工廻川の他にも」という文言が入っているが、英語の方(英訳)は“other causes”と記されているのみで、「大工廻川」に対応する英語(英訳)がなく、日英で齟齬が生じている。It seems likely that, besides the Dakujuku-River, there are also other causes to regard the high chemical concentration in Hija-River water”がより日本語原文に近い意味を表す訳になるのではないかと考えられる。
この原文と英訳の齟齬が利用され、嘉手納基地が汚染源でないとの国防総省の主張に繋がっているとも考えられる。

4. 日本政府の調査は嘉手納基地が汚染源の可能性が高いことも示していた

一方、沖縄防衛局は嘉手納基地外の5地点(知花橋、内喜納橋、久得橋、大工廻川下流)【図4】、PFOSとPFOA分析を含む水質調査を実施している。

 

【図4】水質調査の調査地点

 


調査結果から、比謝川上流部の内喜納橋や知花橋ではPFOS、PFOAの値が低いが、大工廻川の下流、および大工廻川の比謝川合流後の地点は値が高いことが明らかになった【調査結果②】【図5】

 

 

位置関係と値の関係がわかる簡略化した地図をIPPで作図した【図6】

【図6】嘉手納基地外の水質調査の分析で嘉手納基地が汚染源であることがわかる図。IPP作成。

 

つまり、上流に基地のある大工廻川の下流では、比謝川上流部よりもPFOSとPFOAの値が高いので、嘉手納基地が汚染源の可能性が高いことが、わかる。

しかしこの部分についての結果は、沖縄防衛局は以下のように和文原文で記述してあり、位置的な関係から大工廻川がPFOS、PFOAの値が高いことと、嘉手納基地との関係については触れていない。また英訳においては、大工廻川においてPFOS 、PFOAの値が高いことがわからないような記述になっている。

“1.1.3 結果 
(1)PFOA・PFOS
・平水時の大工廻川下流は、PFOA+PFOSの合計値が比較的高い(200〜300ng/L)状況にあった。
・降雨中の増水時(11/14)は、平常時の濃度が比較的高い大工廻川下流や久得橋では希釈効果によりPFOA+PFOS濃度が下がったものと考えられる。
比謝川水系の上流側地点である内喜納橋や知花橋ではPFOA+PFOSの合計値が低く、上流側からPFOAやPFOSが流下している状況は確認されなかった。”  
“1.1.3 Detection results
(1) PFOA・PFOS
・Chemical concentration(PFOA+PFOS) were 200〜300ng/L in normal times.  The value is relatively high in the whole country.
・When the water was increased by rainfall, chemical concentration(PFOA+PFOS) in Kudoku-Bashi and Downstream of Dakujaku-River decreased.  The cause was thought to be dilution.
Tibana-Bashi and Uchikina-Hashi were sites at upstream in Hija-River.  Detected chemical concentration (PFOA+PFOS) were relatively low.  It is considered that it is a lowly possible for a generation source in this area.  ” 
(日英とも下線は引用者)

“[引用者注 比謝川]上流側からPFOAやPFOSが流下している状況は確認されなかった”という記述は、あくまで、内喜納橋や知花橋での調査結果のことであり、比謝川全体について言えることではない。比謝川との合流前の大工廻川下流において値は高く、嘉手納基地内の大工廻川の上流に汚染源があることが推測できるが、その点についての言及はない。

また、和文原文では「平水時の大工廻川下流は、PFOA+PFOSの合計値が比較的高い」と記載されているが、英訳では「Chemical concentration(PFOA+PFOS) were 200〜300ng/L in normal times.  The value is relatively high in the whole country.」となっている。大工廻川という言葉が消されており、”the value is relatively high in the whole country”の部分が何を示しているのか明確ではない。

これらの和文原文の記述の不明確さや原文と英訳の齟齬が利用され、嘉手納基地が汚染源でないとの国防総省の主張に繋がっているとも考えられる。

実は、問題発生当時から、沖縄県企業局は、「大工廻川は嘉手納飛行場内を流域とする比謝川の支流であり、大工廻川と比謝川合流部より上流では、下流ほど高くない(ゆえに嘉手納基地が汚染源の可能性が高い)」ということを、調査結果を示しながら主張してきた。2016年10月13日の嘉手納基地との「PFOS等に関する情報交換会」では、沖縄県企業局が実施した調査結果を、【図7】の地図を用いて示している(IPPの企業局への情報開示請求により入手)。ここでは、大工廻川と比謝川合流部より上流では、白川橋を調査地点としている。また、2018年10月10日の沖縄県企業局と防衛省との「打ち合わせ」における資料でも同様の主張がされている(IPPの企業局への情報開示請求により入手)。防衛省は、同省の地方協力局である沖縄防衛局が実施している調査で同様の結果を把握しているはずであるが、嘉手納基地が汚染源である可能性のある企業局の調査結果については尊重されていない。

 

【図7】沖縄県企業局が嘉手納基地に示した図(2016年10月13日)

 

 

5. 日米合同委員会で調査結果が言及されていた

この沖縄防衛局の調査に関しては、2017年8月27日の日米合同委員会で言及されていることがメールに記されている。これは上述したようにシャヒーン議員とは関係のない国防総省のメールである【メール資料③】。

“Regarding access, on 23 Aug 2017, the Joint Committee agreed to a GOJ survey of the physical parameters (i.e., volumetric flow, but not analysis of PFOS/PFOA) of the Dakujaku River on Kadena AB.  The results (reported to the ESC in Mar 2018) showed the Dakujaku River is a minor contributor of water volume to the Chatan Water Plant. “

“アクセスに関しては、2017年8月23日の日米合同委員会で、日本政府の、嘉手納基地における大工廻川の物理的パラメーター(つまり量的流量のことで、PFOS/PFOAの分析ではない)の調査に合意した。(2018年のESC[環境分科委員会]へ報告された)大工廻川では北谷浄水場への寄与する量が小さいことが結果では示された”

環境分科委員会にも調査計画が報告されているということは、日本側は環境省が参加しているはずであるので、この件は環境省も承知しているのであろう。

合同委員会で立ち入り(access) に合意したのは、流量調査の【調査結果①】のみで、基地内での大工廻川の水質調査(=PFOS、PFOAの分析)【調査結果②】では合意していないことがわかる。基地内の大工廻川でサンプリングをしてPFOS、PFOAが検出されたならば、それは嘉手納基地が汚染源である根拠になるからであろう。

ちなみに沖縄防衛局は、当初の調査設計では、基地内での大工廻川で、河川内の底質、地下水の水質の調査をする予定だったが(「提供区域内における現況調査等業務 業務実施計画書」 平成29年3月 いであ株式会社)、米軍から立ち入りが許可されず、取りやめとなったことがIPPの情報開示請求により示されていた(「特記仕様書 業務名称:提供施設区域内における現況調査等業務 第2回業務変更」平成30年3月 沖縄防衛局)(報道済))。

しかしその裏では、沖縄防衛局は嘉手納基地汚染の幕引きを図るために、流量のみの調査で立ち入りを許可され、汚染源が嘉手納基地であることが明らかになってしまうこととなる水質調査では立ち入りを許可しなかったのである。立ち入りをさせないのでもなく、調査をさせないのでもなく、米軍はホスト国に意味のない立ち入りと基地内調査をさせて幕引きをさせたのではないか、と推測できる。

むすび

2016年の県の汚染発表当初は、沖縄県企業局、嘉手納基地、沖縄防衛局は「情報・意見交換」の場が設定されていた。しかし、嘉手納基地は在日米軍司令部に問題をあげ、沖縄県に対しては日米合同委員会環境分科会にとりあげることの働きかけを提案していた。結局、問題は日米合同委員会というブラックボックスに投げられ、その結果が上述のような状況である。


米国側は、ホスト国の調査ということで結論の正統性を担保する一方、最終的には日本政府に責任を負わせる形で無視し続けようとしているのであろう。日本政府は国会でも「在日米軍の活動との因果関係については確たることを申し上げるというのはなかなか難しい状況」という答弁に終始している。確たることを申し上げられないのは、米軍の幕引きに加担していることを国民には隠蔽しなければならないからである。


米軍基地全体の面から考えると、基地由来のPFASが700以上確認されており、国防総省も調査や浄化に着手している一方、PFASに関する極東最大の空軍基地、嘉手納基地のPFAS汚染が、事実上否定されているという異常事態であることを今一度私たちは認識するべきである。

米軍基地の環境汚染問題は、日米政府では表向き、前進していることになっている。しかし、IPPの調査によって明らかになったように、環境補足協定の合意の1 年前の2014年から環境省の在日米軍施設・区域環境調査は、基地への立ち入りが出来なくなっており、実際は後退している。環境問題には、日本環境管理基準(JEGS)、米国防総省訓令4715.08号の「米国外の環境汚染の改善」が適用されることになっているが、運用状況が公表されず、何が行われているかの情報自体、何もでてこないのである。ジャーナリストがFOIAを用い、日本の一市民団体が開示請求で入手した文書を組み合わせて、初めて何が起きているかの一端がわかるような状態をどうするのか。まずは日本政府に説明を求め、合同委員会の密室性で何が起こるかの実態を米国議員や国際社会に知らせることが必要であろう。


PDF版はこちら『2024 嘉手納基地のPFAS汚染:ホスト国日本の調査は幕引きに使われたのか IPP レポ 』

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