<嘉手納>PFAS汚染マップ〜IPPはなぜこのようなマップを作成しているのか?

嘉手納基地周りのPFAS汚染マップを更新しました。

2019年度の沖縄県企業局が実施しているモニタリング、沖縄県環境部環境保全課が実施している「有機フッ素化合物環境中実態調査結果」、The Informed-Public Project (IPP)が情報開示請求で入手したデータを集約しています。 

IPPはなぜこのようなマップを作成しているのか?

IPPがこのマップを作成している目的を改めて述べておきます。

1)PFAS汚染の状況を把握してもらうため

現在、沖縄県では調査の目的別に水源に関する調査は企業局が、環境中の調査は環境部が実施する体制になっており、各部署がそれぞれ結果を公表しているため、PFAS汚染の全体像が把握しにくい状況になっています。
IPPのマップは嘉手納基地が汚染源と考えられるPFAS汚染が、私たちの生活圏のどこで、どの程度、発生しているかを把握してもらうことを目的としています。
また、企業局が着手し、その後環境部が実施している環境中の水の実態調査では湧水(ガー)や地下水の調査結果により、汚染範囲の広がりがわかります。
(例えば、IPPによる嘉手納基地の周囲のガーの調査が報道された時には、名桜大学の田代豊教授(環境科学)は「地下水はその土地に含まれる成分や環境状況を反映するデータ」だと指摘し、「今回の調査では初めて嘉手納基地の北から北西にかかる地域の状況が読み取れたとし「これまで分かっていた以上に基地の広い範囲で地下水の汚染があり、それが基地外へ流出している可能性がある」とコメントしています(琉球新報「『飲まないで』 嘉手納基地近くの湧水汚染 沖縄県調査 高濃度PFOS検出」2019年4月24日 )

2)汚染原因が嘉手納基地であることを示すため

沖縄県は水源の汚染源は嘉手納基地が汚染源である可能性を主張していますが、その根拠として積み重ねたデータを視覚的に明確に示す必要があるとIPPは考えます。

その根拠は地図により明確に示されます。

  • 嘉手納基地内から比謝川に流入する大工廻川において、PFOS、PFOA、PFHxSの高い値が検出されています。大工廻川と比謝川合流部より上流にある白川橋のデータ(IPPが開示請求で入手)と比較すると、汚染が嘉手納基地由来であることが明確に示されます。 
  • 企業局はモニタリング調査で「嘉手納井戸群」という名称を用いていますが、嘉手井戸群は基地内に位置している井戸も多く、そこでもPFASが高く検出されています。これは嘉手納基地内で汚染が発生していることを証明するデータの1つとなるでしょう。

  • 汚染マップの下にある嘉手納帯水層の地図は、米軍の地下水脈地図や開示請求で入手した沖縄防衛局の報告書等を基にして作ったものです。このようなデータも根拠の1つです。 
3)汚染の性質を把握するため

普天間基地と同じく、嘉手納基地周囲の環境中のPFAS汚染は、基地内で使用された泡消火剤に使用されているPFASが土壌、地下水に蓄積し、滲出している汚染です。
PFASは”Forever Chemical”と呼ばれる、蓄積性があり、分解が困難な有害物質であることを再度考える必要があります。
訓練中の事故・事件で「漏出」しているだけの汚染ととらえると、行政に求める対応や、問題の本質を見誤ることになります。ミスリードしている報道も見受けられますので、留意する必要があります。 

この地図はPFASが高濃度に検出されていることに重点を置いて作成していますので、最新のPFAS値はそれぞれのデータを参照してください。どのような数字をビジュアルエイドに採用するかは非常に難しく、IPPも悩みながら地図を作っていることをご理解ください。

また、今回から、従来用いていたEPAの生涯健康勧告値70ng/Lではなく、2019年に発表された、環境中の水に関するEPA(米国環境保護庁)の指標値40ng/Lを採用しました(これはEPAのPFASアクションプラン(2019.2発表)下の政策ですがEPAの施策は遅れに遅れています)。
(報道では、IPPが情報提供した記事「地下水汚染 米が新指標 PFOS/PFOA40ナノグラム、米軍要求根拠に」(琉球新報 2019年12月29日)、「米、水汚染に新指標/専門家「在沖基地も該当」(沖縄タイムス、2019年12月30日)を参照)

※なお、ジョン・ミッチェルさんの調査報道によって明らかになった嘉手納基地内のPFASの調査の結果の値(沖縄タイムス「嘉手納基地のPFOS汚染、米基準の最大1億倍 水源へ流出 高い可能性」、2019年1月11日は、スプリンクラーの数値が泡消火剤そのものの製品の数値であることから「汚染」という表現が適当でないこと、およびため池の数値が蓄積された汚染の滲出の結果と考えられるかが確認できないため、データの性質が異なると考えIPPのマップには掲載していません。これらのデータに関しては、上記記事リンクを参照してください。

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