環境省も沖縄県も知っていた:北部訓練場返還跡地に残されていたもの

北部訓練場返還跡地の状態と世界自然遺産登録の問題は、これまでに宮城秋乃さんの調査活動で明らかになり、Okinawa Environmental Justice Projectの国際発信で国際社会に届くようになりました。 

The Informed-Public Projectも関係機関がどのように動いてきたのか、何を行い、何をしなかったのか、何を隠してきたのか等の情報を開示請求等をとおして入手し、調査してきました。

世界自然遺産登録は再挑戦でやっと叶いましたが、米軍の廃棄物問題等の返還跡地のいわゆる「支障除去」の問題は、いまだ解決していません。 
その責任を追及することを市民が続けています。 

(宮城秋乃氏提供。返還跡地内のヘリパッド跡地のプレート)

 

ここでは、世界自然遺産登録の管轄省庁である環境省も、当事者の沖縄県も米軍が残していったものを沖縄防衛局から知らされながら、結局は世界自然遺産登録のためそのまま見過ごした事実を記録しておきたいと思います。 
以下の年表の時期に起こったことです。

2016年12月、北部訓練場の「過半」が返還され、沖縄防衛局は跡地の支障除去を開始します。
2017年2月に環境省は、やんばるに米軍北部訓練場がないものかのように書いた悪評高い推薦書をユネスコに提出しました。

その後、沖縄防衛局から跡地の状況の報告が関係機関にされます。

まずは環境省。
環境省と林野町は、沖縄防衛局に2017年6月16日に沖縄防衛局から説明を受けていることが、沖縄防衛局の「打合せ記録簿」(北部訓練場(28)過半返還に伴う支障除去措置に係る資料等調査)からわかります。

沖縄防衛局「ただし、道路に接していないヘリパッド付近にある廃棄物は除去も難しいので、跡地利用も踏まえて除去する方法を工夫して対応することとした。これも将来にわたる支障除去について林野庁と防衛省とで覚書を結ぶことを検討したい」

沖縄防衛局への開示請求により入手。

ここでは、環境省が返還地について何も把握できていなかったのではないかということもうかがわれる記述もあります。

(ハイライトは引用者)

 


そして沖縄県。

環境省との打合せ記録簿に沖縄県への説明予定が記されていたので、沖縄県へも開示請求をし、防衛省から沖縄県への報告がされていたことの確認をしました(「中間報告概要記録」)。そこでは、米軍の廃棄した鉄板等についての説明もされていたことが記されています。
巨大な鉄板やライナープレートより、テレビや布団等が強調されている廃棄物についての資料を用いて(下の図参照)沖縄防衛局は「廃棄物は県道沿いに多く、県民による廃棄の可能性が高い」と、説明をしていたようです。

沖縄県への情報開示請求により入手。

鉄板やライナープレートについては、以下のように説明をしています。

防衛省施設管理課桝賀「・・米軍がLZ箇所に廃棄した鉄板等については、現時点での撤去は考えていない。当該箇所周辺の跡地利用計画が決まってから、何らか(道路等)の整備の際に併せて撤去し、必要に応じ土壌汚染調査も実施することで考えており、環境省及び林野庁に説明、合意を得ている」

つまり引き渡しまでの撤去は諦めているということを伝えていたということです。

県庁内ではこの件に対しての対応に関する廃棄物取扱に係る意見交換  の会議が開かれ、鉄板とプレートに関しては、沖縄防衛局に情報提供依頼のメール  を県から送っています。しかし、最終的に明確な回答は得られずに、10月にIUCNの現地視察がなされ、12月の引き渡し式典を迎えることになるのでした。

この引き渡し前の、環境省、林野庁、沖縄県、防衛省の記録が、いかに世界自然遺産の登録、運用基準を当事者が理解していなかったか、ということを示す記録にもなっているかということを次の記事で示したいと思います。

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沖縄県が知っていた件については、県内メディアで大きく報じられました。 
沖縄タイムス「世界遺産登録への影響を懸念か 審査と重なった訓練地の返還 残された米軍廃棄物 防衛省、認識しながら『除去作業を終了』」(2024.1.16)
  「沖縄本島北部の米軍訓練場 防衛省、廃棄物を認識しながら「支障除去作業を終えた」 引き渡しの半年前 沖縄県、把握したのに非公表」(2024.1.16)
琉球新報「防衛省、当初撤去考えず 跡地利用時の整備で「環境省、林野庁とも合意」 県は廃棄物残存を“黙認” 北部訓練場、米軍廃棄物問題」(2024.2.6)

RBC「国は廃棄物の存在を知っていた そして沖縄県も…除去せぬまま防衛省が引き渡し『返還スケジュールありきの対応』と批判」(2024.1.16)

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