論文「『宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定』に対する検証」(『科学』2021.7 )

論文「『宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定」に対する検証」

2021年3月25日の宮古毎日新聞で、宮古島市長の公約である全市民検査が専門家の助言を経て、断念されたことが報じられていた(「限定的実施で検討/全市民PCR検査」宮古毎日新聞 2021年3月25日

徳田安春医師(群星沖縄臨床研修センター長)とThe Imformed-Public Project(IPP)は、計画断念に至る過程、特に専門家の助言が適切な科学的知見をもってなされたのかどうかを、公文書により検証した。IPPが宮古島市に情報開示請求をし、徳田医師が内容を検証した。

この検証の結果、助言に用いられた専門家の提供資料「宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定」は誤った根拠と推定に基づいていたことがわかった。
専門家は沖縄県立中部病院感染症内科と国立感染症研究所の所属であるが、氏名は非開示とされている。

その結果と考察が、『科学』(2021年7月号、岩波書店)に論文「『宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定」に対する検証」 として掲載された。(掲載1か月後に内容はIPPのサイトに転載予定) 

論文掲載後、SNSで、この専門家の助言により、宮古島が感染爆発したかどうかの議論が起きているようであるが、本論文の問題設定はそこにはない。論文の目的は、助言をした専門家の科学的知見の妥当性の検証であることをここで改めて確認しておきたい。
また、本論文は、公的記録としての公文書をベースに、科学的論拠を示しながら、論文という形式で議論を展開していることにも意味があると考える。SNSは情報交換や情報共有には力を発揮する場であるが、科学的主張や議論には適当ではない。議論の材料、議論を展開する場についても考える機会となれば幸いである。

宮古島から見える日本のコロナ対策

以下、政策決定経緯や、開示資料を公開するが、その前に、この検証の位置づけについて、論文内では触れられなかったことを記しておく。

この検証は、沖縄県の宮古島市という離島の一事例を扱ったものではある。しかし、これは、日本の新型コロナウイルス政策の特徴を示す象徴的なものであると考えられる。
日本はPCR検査に関する誤った議論、検査を拡充すると医療崩壊するという認識が感染症対策に関する政策をミスリードした。国際的にもこのような現象が起きた国はない。
そのような誤った議論が2021年1月末に至っても、国や県の機関に所属する専門家の疫学的推定の理論に用いられ、実際、市町村の政策決定に影響を及ぼしたということを示している。

政策決定の経緯

以下、開示文書により経緯を示す。
2021年1月26日に調整の上、1月28日に宮古島市と関係機関で勉強会と意見交換会が行われる。
専門家である沖縄県立中部病院感染症内科から専門家(氏名非公開)と沖縄県からはコロナ対策本部から1名が出席し、宮古島の関係者と会議を行った。

開示された説明資料

当日に用いられたと考えられる資料は以下の2つである。
1)「宮古島市におけるスクリーニングPCRの 疫学的推定」
(論文で検証対象となった資料)

2) 「新型コロナウイルスの特性と宮古島市の対策:感染拡大を阻止し、医療崩壊を防ぐ」
(スライド資料 20枚)

2021年2月8日には、国立感染症研究所から以下のようなメールが送付されている。

関係自治体、専門家所属機関等へ論文と提言書簡送付

この論文掲載を受け、宮古島市、沖縄県知事等へ、2021年6月22日付けで、徳田医師とIPPから論文と書簡「宮古島市新型コロナウイルス政策検証と提言について」を送付した。以下に掲載する。

宮古島市長宛
沖縄県知事宛
国立感染症研究所宛
沖縄県立中部病院宛

誤った根拠の理由等については、論文に述べられているが、この書簡の中でも、徳田医師が日本の新型コロナウイルス背景とともに説明されているので、参照されたい。
IPPからは、適切な科学的知見をもって政策決定が行われるためには、第三者の目も入る透明性のあるシステム下で情報提供、助言がなされるように政策提言をしている。

 「【解説】新型コロナウイルス感染源対策としての無症状者スクリーニング検査について」を論文の解説として添付した。

これは、徳田 安春(群星沖縄臨床研修センター)、青木 眞(感染症コンサルタント)、近藤 太郎(近藤医院)、渋谷 健司 (キングズカレッジロンドン人口衛生研究所)、谷口清州(国立病院機構三重病院)による「COVID-19無症状感染者の戦略的スクリーニングによる感染源の削減」のダイジェスト版である。より詳細な情報はこちらを参照してほしい。

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